【遠い憧憬】
天井から床まで煌びやかな輝きに包まれた王城の大広間で行われている、王太子殿下十七歳の誕生日を祝したパーティー。その中でも一際輝いて見えるのは、我が国唯一の王子であり王太子であるアルバン殿下でした。
光を受けてキラキラと輝く金糸の髪に、澄んだ青空のような水色の瞳。その容姿はどんな彫像よりも美しく整い、スラリと長い手足の優雅な一挙手一投足に目を惹かれ、暖かい陽だまりのような穏やかな微笑みには老若男女誰もが見惚れてしまう。
少しゆったりとした口調で語りかける声は優しく、紡ぐ言葉には彼の知性と国民を想う気持ちが溢れていて、聞いているだけで心が満たされるようでした。
我が国が誇る、美しく立派で完璧なアルバン王太子殿下。
一言だけでもお言葉を交わしたいという気持ちはあるけれど、私の“体質”を考えれば、私が殿下のお傍に行くことを私自身が一番許すことができません。
ぐっと気持ちを抑え、広間の一番遠くからあの方のお姿を僅かばかり眺めてから、私は煌びやかな空間を後にしました。
憧れは、憧れのままで。
私と殿下がお会いすることなど決してないのだから。
――そう、思っていたのです。