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酒井太一の悲しき果実【ふたたび一つに】
太一の庭に立つしおれたミカの木。
その幹は穏やかな光を放ち、静かに風に揺れている。
一方、太一の中にある「食べられたミカ」の記憶と感情は、まだ鮮明に息づいていた。
ある夜、不思議な力が彼の身体を満たし、内側から何かが溢れ出す感覚が訪れた。
「これは……ミカの声?」
太一の肛門フルーツから、小さな光の粒が現れ、ゆっくりと庭の木へと舞い降りた。
木の枝や葉が柔らかく輝き、そして光の粒は一本の芽となり、ゆっくりと木の幹に吸い込まれていく。
瞬間、木は鮮やかな生命力を取り戻し、枝が伸び、葉が輝きだした。
そして幹の前に、再び一人のミカが姿を現した。
「ただいま、太一」
彼女は微笑み、太一も涙ながらに答えた。
「戻ってきてくれてありがとう」
こうして、木になったミカと太一の中にいたミカは一つに戻り、新たな未来へ歩み出した。