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酒井太一の悲しい果実
酒井太一はモンスターだった。
しかし、彼の特殊能力は他のモンスターと一線を画していた。
なんと、肛門からフルーツを排出するのだ。
しかも、そのフルーツは超美味しい。甘くてジューシーで、食べたら疲れも吹き飛ぶほどだった。
だが──誰も食べてくれなかった。
理由は単純。
「肛門から出てくる」と知った瞬間、皆が顔をしかめて逃げてしまうのだ。
太一は寂しかった。
「美味しいのに、なんで食べてくれないんだよ……」
そんなある日、太一は町の広場で叫んだ。
「誰か、俺のフルーツを食べてくれ!」
そこに現れたのは、不思議な少女だった。
「私、食べてみたい!」
少女は太一の肛門から出てきたキラキラのメロンを一口食べた。
「ん……おいしい!」
太一は初めて心から笑った。
「ありがとう……やっとわかってくれる人がいたんだな」
こうして二人は、不思議な友情を育んでいくのだった。