第1章 登場人物紹介(2)
・グレイ(グレイール=ヴァルハラ)
糸目で真ん中分けの金髪の青年。26歳。
主にエルデナードを中心とした大陸西部を回っていた行商人。
行商で資金を貯め、いつかは大陸一の大商人になる事を夢見ていた。
しかしその正体は、三代前のヴァルハラ国王ロイシャンが王弟ドーヴィルの子孫。
ロイシャンは母であるノルディア王国出身の王妃エルメシアが輿入れ前に宿した子であったため、本来であれば次男のドーヴィルが正当な後継者であるが、どのような場合でも長男が王に成るという慣習があった為、王家の血を受け継がないロイシャンが王となった。結果的に継承権争いに敗れた形となったドーヴィルは追放されたが、その血は受け継がれており、グレイは正式なヴァルハラ王家直系の子にあたる。
『キミツグ』のエピローグの一つにおいて、大商人となったグレイが王国の未来に絶望し、同じく苦しむ民衆たちを蜂起させて王国を滅ぼすというのがあるが、今回はリサとの出会いによってその目は無くなったとみて良いだろう。
今の彼の夢は大陸一の大商人でも、苦しむ民衆の救済でもなく、リサ=アルカディアという人物の歩む覇道を傍で見届ける事である。
「さあ、リサ様!私がいかほどでも資金を調達して参ります!リサ様はお気になさる事無く軍備をお整えください!馬が必要であれば馬を、人が必要であれば人を、どのような方法を用いても揃えてごらんにいれます!
方法ですか?それは企業秘密ですし、リサ様は知らない体でいた方が良いです!」
・シモーネ(アルカディア領管理官)
王都より派遣された税収などを担当する管理官。
茶髪の頭髪がやや寂しくなりはじめたややぽっちゃりな53歳。
男爵家の三男として産まれたが、生来の立ち回りの上手さを生かして役人として出世街道を進んだ。
アルカディア領の管理官に抜擢されてからは、ロジェスト領主ネルソンの指示の下、税の中抜きを行い私服を肥やしていた。
小物でモブでありながら結構な悪事を働いていたが、全てが明るみとなって捕らえられてからは、すっかりと牢の中で大人しくしているらしい。
ややぽっちゃりだったお腹もすっきりしてきたとか……。
「なるほど……私腹を肥やすとはこういう事だったのか……。
全てを没収されると腹も痩せるんだな……」
・ホレーショ=ネルソン(ロジェスト領元領主ネルソン子爵)
赤髪短髪のイケメン30歳。
ロジェスト領は貴重な魔石鉱山を所有し、その利益によって子爵領とは思えないほどの発展を遂げた。
その立役者となったのが先代より受け継いだホレーショであり、その商売の才覚をダウントンに認められ、ルイスがアルカディアの暫定領主となった際に相談役を頼まれる事になった。
アルカディアで行われていた横領事件の黒幕。
同じ相談役だったセオドア=ウェストミン男爵と共謀し、管理官のシモーネ、商人のスミスを買収する事でアルカディア領の税収を不正に着服していた。
臆病なまでの慎重な性格で、常に二重、三重の保険をかけてから行動を起こす。
しかし、策を巡らせば巡らせるほど痕跡が残るという事に気付いておらず、自らを過信しすぎたことによって全ての悪事は暴かれる事になった。
現在はダウントン侯爵暗殺未遂事件のどさくさに紛れる形で逃亡を果たし、セオドアと共に行方知れずとなっている。
「ふふ……この私が逃亡生活をおくる事になるとはな……。しかし!こんなこともあろうかと幼い頃から屋敷の庭でサバイバル生活をおくっていたのだ!今こそその成果を生かす時!!
まずは夜を明かす場所を作らねばならんな。ええと、テントは……持って来てるはずない、と。
ならばこの寒さを凌ぐための暖を……ん?誰が火種を用意してくれるのだ?
食料を準備してくれる従者もおらんし……。
こんなものキャンプとは言えんではないか!!(違います)」
・セオドア=ウェストミン(ジェリエストン領元男爵)
新緑のような緑の髪。普段から言葉少なめの寡黙な43歳。
代々ダウントン侯爵家に仕えており、セオドアはその真面目で慎重な性格を見込まれてルイスがアルカディア領主となった時に相談役として同行する事になった。
しかし真面目に見えていたのは普段から口数が少なかったからであり、本来は少しでも贅沢な暮らしをしたいと思い続けていた。
かねてより親交のあったホレーショの誘いを二つ返事で引き受け、主にダウントンへの報告を誤魔化す役割を担っていた。
結果的にホレーショ共々その悪事は暴かれる事になったのだが、ダウントン侯爵暗殺未遂事件のどさくさに紛れてホレーショと共に逃走。
現在もその行方は分かっていない。
「ああ……どこで間違ったのだろうか……。私の計画は完璧だったはず……それなのにどうしてこんな目に……」
「おい!セオドア!寒いぞ!火を起こせ!テントを持ってこい!」
「ああ……本当にどうしてこんな馬鹿を信じてしまったのか……」
・ロバート=ダウントン(ジェリエストン領領主ダウントン侯爵)
アルカディア前領主であったルイス=ダウントンの父であり、ヴァルハラ王国の在り方に対して常に改革を求める革新派の筆頭家当主でもある。ジェリエストン、アルカディア、ロジェスト等の王国西部エルデナード地方一帯を統括している大貴族。
大きなぎょろ目に立派な鼻髭を蓄え、どこか達磨を連想させる風貌で、 少し白髪の混じり出した茶髪をダンディにオールバックに固めている47歳。
かつてリサの父であるマイヤー=フィッツジェラルド公爵とは旧知の仲であり、その娘であるリサには好印象を抱いている。しかし、マイヤーから度重なる娘自慢を聞かされ続けた事で、その影響を受けたロバートもルイスを溺愛して育てるようになる。
親馬鹿2号。
「何故だ……どうして同じように愛情を注いで育てたというのに、うちの息子はああなってしまったのだ……」
「父上!街で迷子になっている子供を保護してきました!」
「おお……こういう優しい面は素晴らしいのだがな……」
「きちんと最後まで面倒を見るので飼っても良いでしょうか!」
「……親御さんのところに返してきなさい。多分お前より長生きするだろうしな……」




