街に行きましょう
あれから1ヶ月半。フリージアは毎日、農作業に精を出している。
レクトは出かけている事が多いが、急に居たり居なくなったりするので心臓に悪い。
(なぜ少年が1人でこんな場所で暮らしているのでしょう?
呪いとは何なのでしょう?
少年なのにいつも偉そうなのは何故でしょう?
分からない事だらけです。)
作業の手を止める事なく色々考える。
元々作物の育ちを良くする力があった私は、枯れた土地に赴いて農業をしながらその地の神殿で生活する予定だった。そのため農業のイロハは完全に叩き込まれている。
「聖女というより農民みたい」と王都ではよく笑われた。
ただ以前と違って謎に私の力が強くなったため
農作物の育ちが良すぎるのである。
初めは立派な野菜に喜んでいたレクトも、毎日消費しきれないほど収穫される野菜に限界を感じている様子だった。
そんなある日
「市場に野菜を売りに行こう。」とレクトが言い出した。
「街に行けるのですか!?う、嬉しいです!!」
この家から出られないと思っていた私は小躍りして喜んだ。
「フリージアが育てた野菜だし、売ったお金はあんたのお小遣いにしなよ。
そのかわり二束三文で売られないように注意してね。」
(ん…?私が市場に行って交渉するのですか??)
「あの、私街に行くのも市場に行くのも初めてで出来ればついてきて欲しいのですが。」
「あー、そっか。そういえば聖女だったもんね。
毎日逞しく農作業してるから農民かと思ったよ。」
「いちいち嫌味言わないで下さい」
意地悪く笑うレクトに最近は言い返せるようになった。
「でもこの大量の野菜をどうやって運びましょう?森の中を運ぶのも大変そうですよね」
「歩いては行かないよ。転移魔法があるから。」
「転移魔法も使えるんですか!便利で良いですね。」
レクトの魔法は本当に規格外すぎる。
「荷台に野菜を乗せて
ルーは目立つから留守番だよ。」
「キュ!」
留守は任せろと言わんばかりの鳴き方である。
「それじゃ行くよ。フリージア荷台を持って。」
パァーーーと光に包まれて
目を開けると、そこはもう街はずれ。
「す、凄いです!」
「じゃあさっさと行こうか」
「はい!」
2人で荷台を引いて街へ向かう。
並んでいるとほぼ同じくらいの身長なので周りの人からは兄妹に見えるだろう。もちろん私がお姉さんなはず。