第三章「仲間」(後編)
〔2024 7/23 Tue. 8:12〕
この日は、朝から作戦室にホークアイ隊、ガーディアン隊の隊員が集まっていた。指揮官がタッチパネルを操作すると、部屋の全員に向かって話す。
「おはよう。早速だが、作戦を説明する。」
指揮官が端末を操作し、立体化されたアスター島の地図を表示する。
「アスター島北東部のガレラリア港に、敵の主力艦隊が停泊中との情報を得た。恐らく、現在行われているアステリア島攻撃に参加するものと思われる。君達には、この港を攻撃し、停泊中の敵艦を沈めてもらう。港の周辺には対空砲、SAMが多数設置されているため、常に周囲の状況を見ておくんだ。また、今作戦では、新型の遠距離対艦ミサイルを使用する。これにより、敵の防空圏外から攻撃することも可能だ。なお、この港から南に50キロメートルには、敵の航空基地がある。ここからの迎撃機との戦闘を避けるために、迅速に敵艦を破壊してほしい。兵装は、空対空ミサイルと爆弾、対艦ミサイルとする。ブリーフィングは以上だ。解散!」
作戦室を出て、格納庫に向かう。俺には、新しい機が割り当てられるらしい。格納庫の中には、二機の戦闘機が置かれていた。一機は、ステルス制空戦闘機F-22、もう一機は戦闘爆撃機F-15Eだ。F-15Eは、出撃準備が進められている。俺は、パイロットスーツに着替えると、機体に乗り込んだ。Su-27よりもディスプレイが多い。HUDも綺麗に映っている気がする。牽引車両が機体を引っ張って格納庫から出す。その後、滑走路までタキシングして、加速して離陸する。これから、長い一日の始まろうとしている。
〔2024 7/23 Tue. 11:56〕
≪こちらAWACSスカイキーパー。敵艦隊をレーダーで捉えた。間も無く視認できるだろう。作戦開始。≫
『フリー、聞こえるか?俺だ、ブリッジだ。今回の任務は簡単だ。遠くから、ミサイルで一隻ずつ艦を沈める。それだけだ、緊張するな。落ち着いていることが一番大事だ。』
「了解。」
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それから、俺たちは敵艦隊、敵対空兵器を攻撃した。敵艦からの対空攻撃もあったが、ブリッジに言われた通り焦らずに一隻ずつ沈めていった。艦隊の最後の一隻を沈めたその時、スカイキーパーから無線が入った。
≪レーダーで敵の迎撃機をとらえた!方位2A3!速いぞ!10秒後にコンタクト!≫
『来たか。よし、ホークアイ2、レゼット!ホークアイ3とエレメントを組め。フリーは俺とだ。』
『分かった。』
「了解。」
敵機がレーダーに映る前に、ミサイルアラートが鳴った。きっと正面だ。予測通り正面にミサイルが見えた瞬間、操縦桿を限界まで引く。機体は急激に上昇し、俺の体は椅子に押さえつけられる。アラートが消えた直後、ミサイルのロケットの音が聞こえた。機体を平行に戻すと、
後ろを見る。敵機が旋回し、俺の後ろを取ろうとしている。
——そうはさせるか。
敵機と反対の方向に旋回し、回避する。しかし、別の方向から来た敵機に捕捉されてしまう。
「クソッ!」
どれだけ旋回しても付いてくる。
『大丈夫か、フリー!』
「大丈夫だ!」
尚も、敵機は付いてくる。必中の瞬間を狙っているんだ。
『フリー!!』
その時、後ろで爆発音がした。レーダーから敵機の反応が消える。誰かが撃墜したんだ。直後、俺の機体の横をブリッジの機体が通り過ぎる。
『無理はするな。お前には助けてくれる仲間がいる。そのことを忘れるな。』
そう言われて、気づいた。俺には、やはり仲間が必要だということを。思えば、昔の隊の奴等も助け合っていたじゃないか。それなのに、たったあれだけの事で、俺はあいつらを軽蔑し、仲間を信じることを忘れてしまったのか。結局、俺はホークアイ隊もブリッジも、信じていなかった…いや、本当は信じていたんだ。信じていなかったら、そもそも一緒にここまで来る気にはならなかったはずだ。そうだ。俺は最初からホークアイ隊もブリッジも信じていた。救援に来てくれたあの時から。こいつらは強い、だから俺の背中を守ってくれると。それでも、俺の、過去を忘れようとする心が、その事実を見えなくしていたんだ。自分が他のパイロットより強いと思い込み、周りの奴等は弱いと決めつけていた心が。だが、それが今、崩れた。ホークアイ隊もガーディアン隊も強者揃いだが、ブリッジはその中でも大きな活躍を見せている。この作戦で思い知らされた。本当のエースは、俺みたいな普通のパイロットとは意識から違う。常に仲間を気にかけ、自らの危険を顧みず、助けに向かう。そんな奴が、自然にエースと呼ばれる存在になっていく。今の俺には、そんな存在が必要だったんだ。
『・・・リー?フリー?どうした?』
いつの間にか、周りの敵機はいなくなっていた。俺が考えていた間に、撃墜したのだろうか。
『戦闘中にボーっとするな。常に周りに気を配るんだ。それに、もう一度言っておくが、お前には助けてくれる仲間がいるんだ。いいか、俺たちはチームだ。最大のパフォーマンスを発揮できるのは、互いに助け合って戦っているときだ覚えておいてくれ。』
ブリッジの言葉を噛み締めて、俺が言った。
「ああ。忘れないさ。」
遠くに、明るい、よく晴れた空の中を、一筋の白い線を描きながら飛んでいるブリッジの機体が見えた。
<終>
とりあえず、PILOTSとして既に完成している部分はここまでになります。今後、これの続編を投稿するかもしれませんし、新しい小説を投稿するかもしれませんが、恐らくどちらをやるにしてもかなり先になると思います。ですが、投稿された時には、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
最後に、とても短くなってしまいましたが、PILOTSを読んでいただき、本当にありがとうございました!
では、また次の小説で!