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PILOTS  作者: YUTAN_401
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第二章「救援要請」

〔2024 7/26 Fri. 11:47〕



 あれから五日経った。俺は、アウターフライヤー基地飛行隊、「デコイ隊」に配属された。「デコイ」の名の通り、正規軍の為の囮部隊として活動している。今日も召集が掛かった。周りの“仲間”と作戦室へ向かう。

「全員集まったか?…静粛に!」

 狭い部屋に基地司令の声が響く。

「よろしい。作戦を説明する。本部から直接の指令だ。アスター島東部に敵軍の大規模基地がある。この基地に対し、2時から正規軍部隊による攻撃が行われる。しかし、基地の対空機関砲、SAM(地対空ミサイル)が作戦遂行の障害となっている。諸君には、これらの対空戦力を正規軍部隊に先行して破壊してもらう。」

 部屋の壁に掛けられているモニターに、敵基地と周辺の地形が立体的に表示される。敵車両と敵機を示す赤いマークも表示されている。

「正規軍部隊が戦闘空域に到達したら、正規軍部隊が撤退するまで敵戦闘機のミサイルが向かないように囮となって飛び続けるんだ。」

 今までの囮作戦では、武装せずに“出撃”していた。つまり、この作戦がデコイ隊で初の攻撃になる。

「ブリーフィングは以上だ。解散!」

 作戦室から出ると、俺たちは真っすぐ格納庫へ向かった。この基地の格納庫には型落ちの戦闘機しかないが、整備は意外にもきちんと行われている。機種はオーティクスのものが多いが、他国の機種も少数だが配備されている。俺が軍人時代から乗っていたSu-27Sがあったのはここに来て初めて嬉しいと感じたことだった。パイロットスーツを着て、機体のすぐ横に置かれた梯子を上る。コックピットに座り、体を固定する。補助電源装置を起動する。無線のスイッチが入っていることを確認し、チャンネルを合わせる。すぐに、地上管制官の声が聞こえてきた。

「準備が整った機体から誘導路上まで牽引する。そのまま待機せよ。」

 整備員の合図でキャノピーを閉める。デコイ隊は18機で構成されていて、その機数を収めるために格納庫や誘導路、滑走路が他基地より多く設置されている。その長い誘導路のちょうど中間付近に俺の格納庫がある。格納庫の外に出ると、空に分厚い雲がかかっているのが見えた。牽引が終わった直後、管制官から二度目の無線が入った。

「デコイ隊全機、タキシングを許可する。」

 エンジン起動ボタンを押す。それと同時に他の機も一斉にエンジンを始動する。デジタル化された計器やHUDが点灯していく。一番機から順に滑走路に向かって進む。5分ほどで一つ前の機が動いた。スロットルレバーを少しだけ倒し、エンジンの出力を上げる。機体はすぐに動き始めた。路面の凹凸が機体から伝わってくる。

 やっと滑走路の端に着いた。滑走路の中心に機首の向きを合わせ、スロットルレバーを限界まで倒す。その瞬間、俺はシートに強く押し付けられた。後ろからは、ジェットエンジンの轟音が聞こえる。十数秒で、機体は浮き上がった。さらに加速し、高度を上げる。高度500メートル付近でランディングギアを畳み、スロットルを70%まで絞った。そのまま、前の機体に続いて飛ぶ。ここからは長距離移動だ。

 途中で一度空中給油をして、やっと目的地に到着した。敵基地はそこまで大きくはないが、戦闘機が沢山駐機されているのを見ると、この基地の重要性を感じた。

≪こちらAWACSウォードッグ。改めて作戦を説明する。≫

≪敵の対空砲、SAMを破壊せよ。≫

 指揮官の声がヘルメットに流れる。 敵がこちらに気づいたのか、対空砲の掃射が飛んでくる。

『何だここは?まるで地獄だ。』

『そうか?前の作戦に比べたら天国だと思うが。』

≪無線での私語は禁止する。作戦開始。≫





 それから15分経った。俺たちは目標をほとんど破壊し終え、あとは正規軍の到着を待つだけになった。

『それにしても、正規軍部隊とやらはいつ来るんだ?ちょっと遅すぎないか?もう安全だぞ。』

『そもそも本当に正規軍なんかが来るのかすら怪しいな。』

≪黙れ。私語は禁止。≫

『なあジェイラー。俺たちはいつまで・・・』

≪レーダーに反応!高速で接近する飛翔体を確認!敵の新手だ!≫

『今更来たってもう遅ぇよ』

『…見えた!機数四!機体は…Su-57!変な塗装がしてある!』

≪塗装はどんな色だ?≫

『機体はグレー、左翼端は赤、右翼端は黒だ!』

≪何だと!…少し待て≫

≪司令部からの通達だ。そいつらは前々から追っていた国籍不明の部隊らしい。≫

≪作戦変更。国籍不明機を撃墜せよ。≫





——強烈なGにさらされ、操縦桿を持つ手が震える。





『ジェイラー!このままじゃ全滅だぞ!』

≪駄目だ。作戦空域を離れた者は撃ち落とす。任務を完遂せよ。≫

『こんなやつらと戦えってんのか!』

『やるしかねぇのかよ…!』





——機関砲のトリガーを引く。発射された弾丸が敵機に命中し、火花を散らす。





 無理だ。こいつらは強すぎる。機体性能も、技量も負けているデコイ隊に勝ち目はない。仲間も弱すぎる。

…仲間か。やはり、仲間なんて持つものじゃない。そんなのは、俺の足を引っ張るだけだ。軍人時代に死んだ昔の同じ隊の奴らだって、結局は何の役にも立たなかった。まだミサイルは残っている。戦闘機一小隊くらいなら俺一人でも墜とせる。他の奴等は俺を守るための囮でしかない。デコイ11は救援要請をしたようだが、そんなものは必要ない。

 ——そう考えたのが間違いだった。周りの機はあっという間に墜とされて、俺が最後の一機になった。AWACSからの通信もない。恐らくもうとっくに撤退しているのだろう。最後の望みは、デコイ11が出した救援要請だ。俺はミサイルを避けるのに必死で、敵機の撃墜なんてできる状態ではない。ミサイルアラートが9G旋回中の朦朧とした意識の奥で聞こえる。俺もこのまま死ぬのか・・・そう思った刹那、大きな爆発音が聞こえた。





 しかし、被弾したのは俺のSu-27ではなく、すぐ後ろにいた敵機だった。突如としてミサイル攻撃を受けた敵小隊は散開し、編隊を組んで高速で飛び去って行った。何が起きたのかさっぱり判らない。慌てて周囲を確認すると、いつの間にか晴れていた青空の中を、オーティクス空軍の機体が飛んでいるのが見えた。機数は・・・六機。

≪こちらAWACSスカイキーパー。そこにいる味方機、我々の基地まで同行願いたい。詳細はそこで説明する。≫

 救援要請を受けて来たのだろうか。何にせよ、返答はもう決まっている。

「了解。」

タキシングとかそこら辺の描写が現実と違ってるかもしれません。

そのような箇所が他にあったら教えてくださると嬉しいです。

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