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PILOTS  作者: YUTAN_401
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第一章「宣戦布告」

〔2024 7/21 Sun. 6:13〕



 格子窓から差し込む日光で目が覚める。肺いっぱいに淀んだ空気を吸い込み、臭いを感じる前に吐き出す。ダグラス軍刑務所に収監されている元パイロット、フリーは、ここで1年もの間変わらない日々を過ごしてきた。刑期はまだ2年も残っている。そんなどうでもいいことを思い出し、はぁ と短い溜息を吐く。正確な時刻はわからないが、もうすぐ看守が監房棟にやってくるだろう。そう考えた直ぐ後に、起床時間を知らせる電子音が鳴り響く。他の囚人の唸り声が聞こえる。看守が独房の前に立ち、扉の鍵を開ける。指示に従って外に出て、階段を降りる。他の受刑者と共に通路を歩き、食堂に着く。朝食を摂り、それぞれの作業場に行く。昼になると、作業中断のチャイムが鳴る。受刑者は一斉に作業を中断し、食堂へと向かう。それがこの刑務所で何十年も続いてきた日常だった。それは一度も崩れる事が無かった。


   ただ唯一、今日この日を除いては。


 フリーが監房棟を出た瞬間、今まで一度も流れたことのないサイレンがスピーカーから発せられた。

——空襲警報だ。

 周りの囚人たちがパニックに陥る。看守は懸命に落ち着かせようとするが、一向に収まらない。そうしているうちに、戦闘機のエンジン音が聞こえてくる。おそらく、その後ろには爆撃機が飛んでいるのだろう。まだ囚人の避難は終わっていないが、敵の戦闘機は緩降下で近づいてくる。戦闘機のパイロンからミサイルが放たれるのが見えた。そのミサイルはこちらに向かって飛んでくる・・・のではなく港に着弾した。停泊していた船から火柱が上がる。二機目の戦闘機がミサイルを発射した。燃料タンクが爆発し、他のタンクへ誘爆していく。監房棟の中では、囚人が独房の中へと戻されていた。間も無くオーティクス国営放送の音声が聞こえてきた。どうやら、アトラントとセラファス、水平線の彼方に在る2ヵ国の攻撃らしい。突然の攻撃に看守たちはとても動揺しているように見える。看守から待機指示が出された。

 2時間ほど経っただろうか。看守がやってきて、俺は独房から引っ張り出された。俺の他にも何人かが連れられている。看守棟へはすぐに到着した。そこで、これから移動する場所について説明を受けた。アスター島中央部にあるアウターフライヤー基地らしい。基地なんて名ばかりで、元軍人の犯罪者を陸空で囮部隊として使っている所だ。ん、俺か?ああ、俺は大歓迎だ。この退屈な日常から抜け出すことができるならどんな場所でもいい。もちろん行くことに決めた。他の奴等も同じ事を考えていたらしい。此処にいる者全員で向かうことになった。

 基地へ向かう船の中で、また国営放送の音が聞こえてきた。

『・・・午前六時十五分、セラファス共和国、アトラント連邦共和国がアストランド=アストズシア連合に対し宣戦布告を行いました。我が国は同盟国自衛権を発動、セラファス、アトラント両国に対し宣戦を布告しました。直後、オーティクス東海岸の港湾施設がアトラント連邦軍による攻撃を受けました。国民の皆さん、我が国は戦争状態に入りました。繰り返します。我が国は・・・』

 これからの毎日は退屈しなさそうだ。

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