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ドリアードさんは追われてる


「お金がないですわ!!!!!!!」



「……どうしたんですか。急に?」


「気にするな、どうせいつもの発作だよ」



すがすがしい朝。

素晴らしい聖女ライフになるはずの一日は、ドリアードさんのいつもの発作によって幕を開きました。


というか、ドリアードさんは大聖殿のなかでこれしか言っていない気がします。

お金がないbotとはよく言ったものです。



「なんで今更、お金がないことなんて気にしているんですか?」


「そんなこと言わないでくださる? これは由々しき事態なんですのよ」


「そうかもしれないですけど……そもそも昨日はお給料日だったじゃないですか? お金なら持っているはずなんじゃないですか?」


「そんなの、カジノで全部溶かしたに決まっているじゃない」


「それのせいですよ!!!」



まったく、これでは心配するだけ損というものです。



「昨日はわたくしのせいではなくってよ?」


「他に誰が悪いっていうんですか?」


「あのディーラーが全部悪いんですのよ! 次はスライムのカードが絶対に来るからそれに賭けたら当たるって!!」


「それでまんまと全額賭けちゃったというわけか! ドリアードは馬鹿だな~」


「うるさいですわアンナ! あなたにだけは馬鹿とは言われたくないですの」


「なんだと!!」


「ま、まあまあ」



何とか二人をなだめますが、確かにドリアードさんのギャンブル狂いは何とかするべきです。

このままでは、大聖殿の中にカジノすら築き上げかねません。



「ドリアードさん、そんなにギャンブルばっかりやっていてもいいことなんてありませんよ?」


「そんなことはないですわよ! こんなに素晴らしい娯楽はないのですのよ! カジノを知ってから、私はこれまで見たことのなに景色をたくさん見ることができるようになりましたの!」


「それ、ただ借金取りから逃げるためにいろんな場所さまよっているだけじゃないですか」


「いいですこと? カジノというのは素晴らしい遊びなんですの。お金を払うことで、それが当たるか失うかわからない究極のハラハラドキドキを味わうことができますよ。それだけの素晴らしい快感を体験しておきながら、当たればなんとお金を増やすことまでできるのですよ! こんな素晴らしい娯楽、ほかのどこを探しても見つからないですわよ!!」


「アンナさん、この人もうおしまいですかね?」


「洗脳でもされてるんじゃね~?」


「なんですの、その目は! 聖女がそんな哀れな視線を浴びせちゃいけないですわ!」



じーーっ。

もう取り返しのないドリアードさんを哀れんだところで、次の対策を考えなくてはいけません。



「ああ、エルドア様! 哀れなこのドリアードに一生分の金貨を与えてくれませんか!!」


「だめですよ。どうせそのお金全部ギャンブルに賭けちゃうんですよね?」


「当たり前ですわ。目の前にある金の山を倍にできるチャンスがあるというのに、おずおず見過ごすのは聖女の恥ですわ」


「何が聖女の恥ですか……そんなんだからいつまでたっても借金取りから追われているんですよ」


「今日も絶賛逃亡中ですわ!!」



今日もって!

いくら、ドリアードさんが多額の借金を抱えているとは言え、ここは王城内の大聖殿。

まさか、借金取りでもここまで追い立てにやってくるなんてことはできない……ですよね?




「おい! ドリアードさんよお! そろそろ借りているお金を返してもらおうかーーー!!!」



ドンドンドンドン!!!

突如鳴り響いた扉をたたく音!


噂をすればなんとやらの借金取りがついにやってきてしまいました!!

借金取りたちはまだ扉の外側から、必死に中のドリアードさんを呼び出しています。



「ちょ、ちょっとドリアードさん、借金取りたちが来ちゃいましたよ! どうするんですか!?」


「ワタクシハ、ナニモ、キコエナイデスワー」


「こんな時に現実逃避しないでください!!」



「おい。ドリアードさん。お前さんがこの中にいることはもうすでにわかっているんだ。早く出てきてもらおうか!!」



大聖殿の外から恐ろしい威勢でドリアードさんを呼びつける借金取りたち。

でも、どういうわけか、扉はあかないみたいです。



「大丈夫ですわ。こんなこともあろうかと、ちゃんと扉には免罪符を張っておきましたの。これであと10分は防げますわよ」


「免罪符にどんな効果が!!」



確かに、借金取りたちが万々扉を蹴飛ばしてもびくともしていません。

本当は不埒なものたちということで罰を与えたいのですが、今回は事情が事情。

一概に彼らが悪いとも言えません。



「どうするんですか、あと10分経ったらあの人たち入ってきてしまいますよ~?」


「そうですわね。大変なことですわね」


「借金取りたちにつかまったらどうなっちゃうんですか?」


「返せるお金もないですものね。最悪、海の藻屑になってしまうかもしれないですわね

……エルサが」


「海の藻屑ってやばいじゃないですか!!!



……って、え? 私?」



ドリアードさんは特に疑いを持つ様子もなくうなずきます。



「ちょ、ちょっと待ってください! 私が海の藻屑になるってどういうことですか!」


「あら、話していませんでしたっけ。エルサは私の借金の連帯保証人になっているんですのよ」


「そんな話、初耳ですよ! ってか、なんで私!」


「お金を借りるときに、信頼できる人間を保証人に立てないといけなくて……ほら、私の周りで社会的に信頼がある人ってエルサしかいなかったので」


「だからって、勝手に私を保証人に立てないでくださいよ!! いやですよ。海の藻屑なんて!」


「あら、わたくしだって嫌に決まっているじゃないですか」


「そういう話じゃないんですよ!!」



なんてことでしょうエルドア様!

私は世界を救う前に、世界に殺されてしまいそうです!


しかも、聖女の手によってだなんて!!



「アンナさん、助けてください~。海の藻屑になんてなりたくありません」


「エルサ……いいこと教えてあげるよ」



珍しくイケボなアンナさん。

こういう時は、きっとこの窮地を救ってくれる天からの啓示が!



「この辺の海にいるクラーケンの子供たちは生で食べても案外イケるらしいぞ!」


「はい?」


「だから、多少海に沈められても食料に困ることはないな!」


「ああ、知ってました。アンナさんは馬鹿でしたね」


「やめろエルサ! 闇落ちするな」



そんなこんなで10分なんてあっという間に立ちそうで。



「ドリアードさん、もう来ちゃいますよ! って紅茶なんて飲んでないで、何とかしないでくださいよ!!」


「はぁ、仕方ないですわね。ここはエルサのピンチのために一肌脱いであげることにしますか」

キリッ


「いや、なんでドリアードさんがお助けキャラっぽくなってるんですか」



もうなんかめちゃくちゃですが、勇み足で借金取りたちが待つ扉のほうへと向かうドリアードさん。

この時だけは、どういうわけか彼女がカッコよく見えました。


いや、まあ借金延滞しているドリアードさんが全部悪いんですけど。




「おい、出てきたぞ!」

「今日という今日は貸してる金全額返してもらうぞ」

「こっちは3年も延滞させられてるんだ。もう我慢の限界だ!」



ありとあらゆるところから飛んでくる罵詈雑言……というより、まっとうな抗議。

それでもドリアードさんはひるみません。



「借金とりの皆様がた!!」



ドリアードさんの一喝により、騒がしかった場が静まり返ります。

すごい、これが聖女の力なのでしょうか。

絶対に使い方を間違っています。



「皆様の言いたいことはわかっています。私が借りているお金をずっと延滞し続けているのは事実ですわ」


「そうだそうだ!」

「わかっているなら、早く金返せ!」


「ですが! まずはこれを見てから考えてはいただけませんでしょうか」




……時間の流れが急にゆっくりになったように感じました。

ドリアードさんの動きに合わせて、徐々に時間の流れが止まっていくような不思議な感覚。


見たことがないけど、はっきりとわかりました。


あれが来る。



ドリアードさんはゆっくりと腰を下ろし、そして、いまだ威厳を保った声で借金取りたちに向き合います。

そして、見せつける渾身の誠意。



ーーダイナミック土下座!!!



「どうか、あともう少しだけ待っていただけませんでしょうか!!!!!」



全く誇らしくなんてないはずなのに、ドリアードさんからは後光が見え始めました。



「す、すごい。これがダイナミック土下座」


「エルサ。私たちは今、歴史的瞬間に立ち会っているのかもしれないぞ」



わかっている。

これが死ぬほどくだらないことなのだということは。


でも、なんでだろう、涙が。



「くっ、こんな土下座見せられたら逆らうことなんてできないじゃねえか!」

「今日はその土下座に免じて許してやるぜ!」

「それにしても、なんて土下座だ! こんなの国宝級じゃないか!」

「これが本当の人間国宝というやつなのか!」



ドリアードさんの圧に押された借金取りたちは、結局よくわからないことを言いながら帰っていきました。



「ふう、一件落着ですわ!」


「いや、そうはならないでしょ!!」



……これがのちに、国宝となる「ダイナミック土下座像」の起源なのであった。



【続く!】




お読みいただきありがとうございます!


これぞ人間国宝!


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