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ベルガモントは滅ぼさない

ベルガモント様の1日は、おれの手によって始まります。


もうすっかり日が登りきってしまった空。

その陽射しを一身に浴びても目が覚めないベルガモント様の耳元までそーっと飛んでいってあげるのです。



「おはようございまーーす!! ベルガモント様!!」


「デビル、うるさいのだ!!」

「ぼへし!」



寝起きの悪いベルガモント様。

ご機嫌ななめな拳の制裁をくらいながら、壁に叩きつけられる。



これも、魔王様の眷属の大事な仕事なのです。



ベルガモント様は、魔王ベルガンデフ様の娘に当たります。

見た目は幼いですが、魔族の中の最高位。


ベルガンデフ様の後には次期魔王を次ぐことがもう決定しています。



「全くもう……そんなんですと、次期魔王の名が廃りますぞ」


「こんなくらいで廃る称号なら、ベルは無くなってしまってもいいのだ」


「またそんなムチャクチャな」



ベルガモント様は、お母様のベルガンデフ様に似て自由奔放。

そして、俺に対してはなかなか暴力的。


まだお母様程の力を持っていないから殴られても何とか原型を保っているものの、この力がいずれ大きくなると考えると……いえ、やめておきましょう。



「全く、こんな自由に振舞っているのによく聖女の仕事に紛れ込んでいられますね」


「みんな僕の可愛さに魅了されてしまっているのだ」


「またまた、ご冗談を」


「嘘じゃないのだ! デコピンするぞ?」



軽いデコピンを1発。

俺はまた壁にたたきつけられます。


最近また威力が強くなってきました。



それにしても、魔王様の娘であるベルガモント様が、その正反対に位置する聖女たちに紛れ込んでいられるのが不思議でありません。


そもそも、魔王の娘を敵である人間側にスパイで潜り込ませた魔王様がぶっ飛んでいるのですが。



『人間側で聖女を募集しているらしいわ』


『聖女……ですか?』


『ええ、私に歯向かおうとしてる勇者に加護を与える目的みたい』


『へえ、人間側も小賢しい真似をしますね……で、それがどうしたんですか?』


『その聖女にね、ベルちゃんを潜り込ませることにしたわ』


『ふーん…………え?』



ちょっと買い物行ってくるから、みたいなノリでベルガモント様を送り出した魔王様。


そんなものすぐに門前払い食らうだろうと思っていたのですが、ベルガモント様いわく、


『なんかいけた』


らしいです。

人間側も案外目が腐っているのかもしれません。



そんなこんなで始まってしまった人間側でのスパイ生活。


ベルガモント様の目的は、創造神エルドアに祈りを捧げる聖女たちの邪魔をすること。

自由奔放で場を荒らすことが得意なベルガモント様にはうってつけの仕事です。


俺としては、身の危険が怖いので早いところ切り上げてしまいたい所なのですが。



「本当によくバレていませんよね。聖女らしいことなんて何か出来る訳でもないのに」


「ふっふっふ、そうでもないのだ! デビルが見てないところで色々できるようになったこともあるのだ!」


「ほう、一体何ができるようになったと?」



自信たっぷりに話すベルガモント様ですが、所詮は子供のまやかしでしょう。

魔族と聖女なんて正反対の存在。


できることが増えたと言うなら、せめて聖女たちご使役する精霊位は召喚してもらいたいところです。



「ほら、精霊を召喚したのだ」


「ふん! そんなものなんでもな…………って精霊!?」


「うん。精霊さん」


「なんでそんなもの召喚出来たんですか!!」


「なんか出してみたらいけた」



なんかいけたとか、平然と語るベルガモント様ですが、そんな簡単に行ける話のはずは無いのですが……

精霊とは、本来聖女を守る光の存在。

つまり、私たち魔族と対極に位置する存在のはず。


それを召喚出来るわけ……


しかし、ベルガモント様の方に止まっているのは、緑色の姿をした小さな精霊。

間違いなくシルフです。



「そ、そんなの召喚して大丈夫なんですか? 危害とか与えられませんか?」


「最初は驚いた顔してたけど、すぐに状況を飲み込んでくれたのだ」



楽しそうにシルフの頭を撫でるベルガモント様。

シルフは抵抗の余地すら見せません。


それどころか身を委ねているようにすら見えてしまいます。


いや、しかし。



「ね、シルフ? あなたの目的はなんなのだ?」


「人間を滅ぼすことです。ベルガモント様」


「なんで、精霊が闇落ちしてるんですか!!」


「なんか教えこんだらいけた」



その後も何やらブツブツ呟いているシルフ。

これは完全に闇落ちしています。


魔族でもここまで深い闇を見ることはありません。

敵ながら同情すらしてしまいます。



「ね、すごいでしょ?」


「すごいとか、そういう次元越えてきてますよ」


「あとね、この間はエルドアとも話してきたのだ!」

ブハッ!!



あまりの衝撃発言の連続に、俺も飲んでいた生き血を吐き出してしまいます。

お仕置のビンタが飛んできます。



「汚いものを吐き出すんじゃないのだ」


「す、すみません。でも、エルドアと話したってどういうことですか?」


「エルサ達が祈ってたから一緒にやってみたら、なんか向こうから話しかけてきたのだ」


「そんな友達みたいな感覚で」



創造神エルドアと言えば、魔王様と力を張るほどの力を持つ神。

魔族を嫌い、人間の繁栄を願う神のはずなのですが。



「それ、大丈夫だったんですか! なんか裁きを与えるとか言われませんでしたか!」


「大丈夫だったのだ。『ぐへへ、ベルちゃんは今日もかわいいね〜』とだけ言って帰って行ったのだ」



どうやら創造神エルドアも目が腐ってるみたいです。

ベルガモント様がかわいいのは、まあ分かりますが。


いや、ていうか大丈夫なのか人間たち?

魔族の私が言うのもあれだけど相当ガバガバよ?


勇者帰ってくる前に人間界滅びるんじゃね?



「というか、それならもう人間達を滅ぼしてしまいましょうよ! 今のベルガモント様なら余裕でできますよ!」


「えーー、」


「何を迷う必要があるんですか! 人間界に未練でもあるんですか?」


「……」



寂しそうな顔を浮かべるベルガモント様。

こんな顔を見るのは初めてです。



「エルサは僕のこと可愛いって抱きしめてくれるし、アンナは美味しいお肉食べさせてくれるし、ドリアントは僕があげたものなんでも喜んでもらってくれる……」


「そ、それがどうしたんですか! 所詮は聖女でしょ!」


「僕、魔界に友達居なかったから、エルサ達が仲良くしてくれるの嬉しいのだ」


「ベルガモント様……」



生まれながらにして魔王の娘。

その圧倒的な力のゆえに、ベルガモント様はたしかにいつも1人でした。


それなら……



「たしかに、人間を滅ぼすにはもう少し内部を崩さた方がやりやすいかもしれないですね」


「デビル!! 嬉しいのだ!」


「あ、ちょっと抱きつかないでください!!」


「大好きのギュー」


「それは嬉しいけど! ベルガモント様の魔力で抱きつかれたら私の身がーーー!!!」



ボンッ!

ベルガモント様の魔力で俺の体は爆発しちゃいました。

これは復活するのに当分時間がかかりそうです。



「あ、やばい。また遅刻なのだ!!」



そんなこんなで、ベルガモント様の一日は始まるのでした。



【続く!!】

お読みいただきありがとうございます!


ベルちゃんは可愛い。


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