ある町の図書館の話
ある町の図書館
「自分の人生。自分で作れてる?」
本を棚に入れながら長い黒髪の女性は俺へという。
俺も棚に本を入れていく。
「人生…ですか?」
俺は、人生っていわれてもピンとこない。
人生?
んー?
自分で、か
「俺は…作れてますか?」
俺は聞いてしまう。
黒髪の女性は嫌な顔をする。
「自分のことでしょ」
そうだけど!自分で作れてるかって、いわれてもー……作れてるかなー………
俺
「わかんないです」
黒髪の女性はスッと俺の方へと来る。
俺の前で指をさしてくると思いきや、上へと人差し指を向ける。
「自分のことは自分でわからないとだめよー。すぐに悪い人に騙されるわ」
……………あの。
きれいです
きれいです
黒い長い髪
タイプ。
そして、キリッとした目。
ああ、そっちの方が気になる!
俺、俺、うう!
きれいだな!ほんと
黒髪の女性は。
「聞いてる?」
「聞いてません!きれいなのでもう!テンションというものが上がってます」
「?どうして?」
うう。
うう!
なんか、その、じっと見つめてくる表情!うおお!
俺まずい!
どきどき、してる!
「まあいいわ。自分の人生は自分しか作れないから…………難しいわよね」
「自分の人生…………」
俺はピンとこない。
黒髪の女性は目をふせる。
「あなたがここに来て、半年。半年で聞くものじゃなかったわね」
「いえ…………俺、自分の人生、自分で作っていきたいです。でも、作るって?」
俺は聞く。
「日々を過ごす…自分で前に進む。そんな感じー…かしら」
………………んー
な、なるほど!
「なるほど!日々を過ごすって、当たり前になってくると何も考えなくなります」
「それでいいの。でも、たまに思わない?自分はちゃんと自分の人生を自分で作れてるかなって」
「すみません。そういうこと考えて生きたことないです」
「私の考えすぎなの。私は変なのよー」
「いえ!そうは思いません!すてきです!」
黒髪の女性は小さく笑う。
うわあ!きれい!
きれいだなあ、笑顔すてきだなあ
黒髪の女性はいう。
「……少し、行ってくるわね」
俺は「はい」と答える。
どうしたんだろ。
______
「あなたは?」
外に出ると小さな少女がいる。
「何か用かしら?」
「あの、この本………渡してほしいっていわれたんです」
少女は黒髪の女性へ本を渡す。
「ありがとう。誰から?」
「?わかんないです」
「そう」
小さな少女は行ってしまうと、本を持ち、建物の中へ黒髪の女性は戻る。
____
俺は戻ってきたから聞く。
「どうしたんですか?」
「本」
本といわれても。
俺は渡されるとバチッとする。
「な!何ですか!これ!」
本から映像が上へと出現する。
緑の鳥が円になってクルクルと回る。
そして、中央に王冠が輝く。
俺はびっくりする。
「これ、何ですか?」
黒髪の女性は笑う。
「…あっちに任せようかしら」
「…あっちって………」
「そう。あっち」
俺はつぶやく。
「めんどくさいんですね」
黒髪の女性はにこにこする。
「違うわー。めんどうじゃないのー。丁寧なのーあっちの方が」
俺は「そうですか」とだけいう。
黒髪の女性はやはりにこりとする。
「この本はいいとして、あなたはあなたの人生を作っていくのよ」
きれいだけどよく分かんない人なんだよな
でも!きれいだ!
うん!きれいだ!
俺は返事する。
「はい!」
とりあえず、俺は本を箱の中へと入れた。




