遠くから助けられた話
遠く。
遠く。
私は助けてもらった。
私はそう思っている
遠くからの助けは私を助けてくれた。
私は草原で太陽の方へ手を向ける。
「私は遠くからずっと助けてもらった」
だから、私は遠くだから何もできない。
でも
でも
「お願い!遠くからのこの声!届いて!私を助けてくれたあの人達へ!」
私は叫ぶ。
遠くから
遠くから
遠くから
私は遠い
私は
遠くでいい
遠くから、叫ぶ。
そこへ小さな少女が来る。
少女は私へ話しかける。
「何してるんですか?」
よく声かけようと思ったなと思いながら、私は答える。
「私、遠くなの!ずっと!遠くから助けてもらったの!だから今!叫ばないと!きっと!もう二度といえない」
少女は両手を胸元で拳を作る。
「わかりました!私も!おっきい声出せばいいですか?」
私はキョトンとするが。
うなずく。
「うん!」
私は叫ぶ。
「私!遠くからずっとずーっと!助けられてきたの!だから!遠くのあなたへ!えーと!ありがとう!」
少女も続ける。
「とうく?えと!あなた!ありがとうございます!………?あれ?遠くから助け!……?んんん?」
私は少女が必死になってくれていて笑顔になる。
「私ね、遠くから助けてもらったの。遠くのその人達がいなかったら、私ここにいなかったの」
「遠く?ですか」
遠く
遠くからじゃ助けられない。
でも、私は助けてもらった。
私はそう思っている
遠くのあの人達がいたから私は。
少女は叫ぶ。
「遠くに!とどいてー!!」
私は太陽へ手を向ける。
静かに手を下げていく。
「いいの。遠くのあの人達に届かなくても」
「え?でも……」
「いいの。私が叫びたかっただけだから」
少女は泣きそうな目をする。
なんで?
少女は下を向いて話す。
「前も、手紙あって、風に飛んでって、届けられなかったんです」
「手紙?」
「きっと、誰かに届けたかったと思うんです」
私は少女の頭をなでる。
良いこだな。
この子。
人のことなんて気にしなければいいのに。
私は少女へいう。
「あなたがそう思ってくれることがうれしい。だから、届かなくてもその手紙の誰かははいいと思ってたと思うの」
「そう………ですか?悲しく……ないですか?」
「私は遠くから助けてもらった方だからその人達は私を知らなくていい。私は忘れないから」
私はそう思っている。
きっと、助けてくれた人たちは。
助けてる人がいたともあまり思ってないかもだけど、私は助けられた。
「私は助けられたって思ってるから」
「……そうなんですか?」
少女は泣きそうな目をしてる。
本当に優しいこ……。
「私はありがとうって思えればいいの」
私は笑う。
少女は悲しそうにしてたけど、顔をふくと、笑った顔をする。
「…はい!」
少女と私は別れた。
良いこだったな…。
遠くからじゃ誰も助けられない。
けど、遠くからだったからこそ助かった私もいる。
忘れない。
死ぬまで。
ううん、
死んでも
忘れない。




