紫の花の話
紫の花。
散りゆく。
花びら散りゆき、もう元には戻らない。
紫の花の咲く木が屋敷の中庭にある。
下側を向き、うなだれるように紫の花は咲いている。
失望のように紫の花は散る。
花びらは地面に水たまりが紫色に染まるようにたまる。
それを見つめるのはソラ。
彼女は散りゆく紫の花の下にいた。
この屋敷は。
今は誰もいなく、荒野にポツリとある。
浮いた犬の姿のルーの頭に紫の花びらがぴとりと乗った。
ソラは花びらを取る。
それはユラユラと落ちていき、紫の水たまりの一部となる。
ソラはそこで静かにしていた。
うるさくしてはいけないという心の本能が働いているのかもしれない。
まるで、ソラ以外にもこの場所の散りゆく紫を見つめてるものがいるように。
ソラとルーの隣には誰もいない。
いないはずなのに。
そこには、淡い紫の着物姿の女性がいる。
そんな気がする。
ポタリと、失望の涙が紫の水たまりに落ちた夢を見る。
ソラは、隣を見ると、それは現実で。
紫の花を上向いて見つめる女性がいる。
彼女が誰かは聞けなかった。
隣の女性は涙をこぼす。
悲しげに。
彼女は、ふとソラと目が合う。
ソラに対しては笑顔を作る。
悲しげなのに、笑う。
美しき女性は消えていった。
ソラもルーも何もいわない。
静かに見つめるは幼き少女。
ソラ。
彼女と共にあるもの。
ルー。
散りゆく。
散りゆく。
紫の涙は流れ、流れていく。




