勇者の話
全員のためにどうして戦える?
俺はあの人のようになれない。
あの人は勇者であり、この大陸の悪を倒しきった。
金色の剣を持ち。
あの人は勇者だ。
俺にはなれなかった勇者。
もし、もっと、早く生まれてたら俺が勇者だったかもしれない。
俺は……………そんなワガママをいう。
勇者は、長く、苦しく戦い続けていた。
なのに、笑顔を崩さない。
苦しかったはずだ。
結局は誰かのために戦っても誰かが必ず助けてくれることはない。
なのに、あの人は戦い続けた。
勇者として生まれたから。
泣かないあの人が
弱音を吐かないあの人が
俺には…………
俺は勇者に、なり“たかった”。
昔は。
今は、勇者が倒しきり、あの疲れきった顔を見たとき。
俺はおそろしかった。
何かに生まれた責任。
俺は…………兄じゃなくてよかった。
弟だから、自由でいられた。
俺は金色の剣が地面へと突き刺さる場にいた。
「兄さん…………がんばったな………苦しかったよな、最後も何も憎むこともいわないで…………すげえよ………兄さんは」
金色の剣は、太陽に照らされ、輝きを放つ。
兄だから、できたこと。
ある大陸に勇者の金色の剣が地面に突き刺さった場所がある。
小さな少女ソラは、金色の剣を見つめた。
そこにどんな物語が。
苦しみがあったのかは知らない。




