ルーと誰か
「て、ことで、話があるんだ」
椅子と少年のいる空間。
呼ばれたのはルー。
小さな犬の姿が浮いてる。
「我を呼んだのか?」
「うん、話を聞いてほしいんだ!」
俺はシン。
友達も幼なじみも妹も弟もいない。
欲しいものばかり。
「俺の趣味について話をしないか!」
ルーは目を開く。
「そんなことで我は呼ばれたのか?」
「俺にとっては大事なことだよ!?」
「別に、一人で楽しめばいいだろう」
俺はしゃべる。
たくさんしゃべる。
ルーはそれでも黙って聞く。
「そんなこというなって!………最近……かわいい女の子に意地悪をいわれたすぎて…………なんか変な気持ちなんだ!」
ルーは一言。
「知らん」
「あー。かわいい!あー。俺、幼なじみと一緒に学校行ってみたかった!あと、先輩とかいわれてみたかった!うう」
俺は地面に両手と両膝をつく。
「うう…………………あーんとかしてみたかった!」
「…………………」
ルーは静か。
「されるのもいいが、したかった!うらやましい!」
俺にはないものばかりで。
最近外で恋人同士を見ると、なんか胸が痛い。
なぜか。
ルーへ洗いざらいしゃべる。
「うらやましいんだよ……本当に!」
ルーは遠い目。
「そうか」
「まあ、でも俺誰かといられる奴じゃないからいいんだけどさ。」
「そうなのか?」
俺はそういう奴。
じゃあ、人といたいかとなると。
「あんまり人といたくないし…でもうらやましい」
「まあ、寂しいんだな」
「そうかもな、ふう、よし!俺はすっきりだ」
「我は永遠と聞かされ迷惑だったがな」
「あ、ごめん」
ルーは、でも安心した顔をする。
「…………おぬし」
ルーが珍しく俺の頭にポンと手を置く。
「またな」
「お、おう…………」
俺は両手両膝を地面につける。
「ルー。イケメンだな………本当に」
「そうか?」
「自然だからかっこいい………」
「我はおぬしのその素直な所は嫌いじゃないぞ」
うん、今キュンとした。
ルーに心を射られたかも。
「じゃあ、ルー。ありがとな。その、話聞いてくれて」
「……またな。おぬし」
ルーが消える。
俺は椅子に座らず、上を向く。
「幼なじみも友達も妹も弟もいないけど、まあ…………俺は俺なんだよな………………やだなあ、まあ、うん、えーっと受け入れよう、現実を…うん、うん…………」
俺は現実を受け入れることにする。




