階段の話
叶えたい、叶えたい
叶えたいことがある。
叶える何かはないの?
叶えられないの?
ないの?
どうして?
どうしてそういうものがここにはないの?
_のぼれば、叶う場所_
少女はそんな場所の話を聞く。
少女は、一人階段にいた。
階段に座る。
階段はとても高く、長く空まで続いてる。
ここをのぼれば、叶うと聞いた。
だから彼女は来た。
階段は他にもいくつも荒野にある。
この階段をのぼれば。
きっと。
「叶えたい、叶えたい、叶えたい」
でももうのぼりたくない。
でも。
のぼれば、きっと。
叶う。
私の願いが叶う。
叶う。
下を見ると、結構高い。
地面が遠くに見える。
「叶えたい、叶えたい」
またのぼる。
ソラは、いくつかの空まで続く階段を見上げる。
「わあ、たかーい」
ルーも見上げる。
たしかに高い。
「階段!だ!」
ソラはのぼろうとした、が。
やめる。
なぜか。
階段をのぼる気持ちになれない。
なぜか?
「どうした?」
ルーは聞く。
「んー。いいや、行こう!ルー」
「ああ」
ソラは階段をのぼらない。
少女はのぼる。
のぼる。のぼる。
少女は、手を伸ばす。
「あなたの所へ行ける、やっと、のぼれば」
叶う
ただ、あなたの所へ
あなたの所へ
あなたの所へ
叶えたい
叶えたい
あなたの所へやっと…行きたい
だから、のぼる。
少女はのぼる。
のぼる。
のぼる。
のぼる。
少女はうれしそうに、うれしそうに笑う。
怖いくらいにうれしそうに。
少女は空を見る。
明るい空を見る。
「あなたの所へ行きたい。叶えたい」
少女は、笑う。
その瞳には涙はない。
「あなたの所へ行くから、行くから、まだ待っていて」
ソラは、一度止まると空を見上げる。
階段は空まで続く。
明るい空を見る。
「いい天気だね」
ルーは。
空を見上げて答える。
「そうだな」
だけどルーには。
明るい空は、明るいからこそ、不気味に見えた。
光は不気味だ。
光が輝くほど、ルーには。
小さくつぶやく。
ソラに聞こえないように。
「気味がわるい空だな」




