しずくの話
そこは、広い荒野。
だけど、草が一つも生えていないから、ただの広い場所、と、いえばいいのだろうか。
なら何があるというと。
規則的に縦と横に並べられたしずくの形のかたまり。
かたまりは浮遊している。
色は透き通るような青色。
悲しいくらいにきれいな色。
ソラは悲しく感じた。
そのかたまりに近づくと、なぜか泣きそうになる。
いや、涙がぽたりと一滴流れた。
「あれ、なんで…」
ソラは、顔をふく。
涙が流れていく。
どうしてか。
悲しく感じるかたまりにふれようとして。
声をかけられた。
「触ってはいけません」
ソラは、声の方を見ると、女性がいた。
透き通るようなそんな印象?を持つ女性。
「あ…あなた、涙が」
「出てくるんです、なぜか。どうしてなんだろ…」
女性は、ソラの方へ来る。
膝をつくと、ソラの小さな手にふれる。
「あなたは、素直な心をお持ちですね。ここは…悲しみの場所と呼ばれてます。私はここの見守をしています」
「かなしみのばしょ…ですか?」
「はい。悲しみがここへ集まり、この形となったんです」
「そうなんですか?」
女性は、ソラへ親しみのある瞳を細め笑う。
「はい。あなたは悲しいですか?」
「悲しくないです。私」
「悲しくはないのですか?」
ソラは、涙の流れる顔で、笑顔を作る。
「私、ルーがいるから悲しくないです」
「ルー…さん?」
「はい!」
女性は、ソラの手にふれて、そっと離す。
それと同時にソラの涙が止まる。
「あれ…?」
女性は、素直でかわいらしい少女へという。
「あなたはここを離れた方がいいです」
ソラは、素直に答える。
「わかりました!あの、…これにさわってはだめですか?」
女性は即答。
「だめです。絶対に」
ソラはわかりやすく残念がる。
「わかりました。…さよなら、悲しみさんたち」
ソラは、行ってしまう。
近くのしずくのかたまりへと触れる。
「だめですよ。彼女のような素直な子を呼んではいけません。悲しいのは痛いですよね。でも…」
しずくへと話しかける。
「彼女のような子を呼んではいけません」




