妄想の話
「これは、奇跡なんだから!」
活発に見える少女は、静かな黒髪の男性へという。
赤髪をツインテールにした少女。
「ねえ!ずっと一緒にいよう!これは奇跡だよ!」
男性は難しい顔だ。
いや、ひどく絶望した顔だ。
渇く口をゆっくりと男性は開く。
「…………アリア……」
「私はあなたに作られた妄想。でも!一緒にいられる!私はあなたが大好きなの!」
「妄想…だ。都合のいい妄想だ」
男性は絶望の目だ。
ソラは、そこへと来た。
ルーもソラも止まる。
ソラは。
「ルー。なんかしてるよ」
ルーは。
「少し静かにした方がいいかもしれない」
ソラは素直に。
「う、うん」
男性の妄想が本当になった。
都合のいい。相手。そういう妄想。
彼の場合は…自分を見てくれる少女だった。
「アリア…でも……でも……そんな、妄想が本当になるわけ…」
彼は願っていた。
そんな誰かを。
だけど、妄想は叶わない。
はずなのに
「これは奇跡だよ!」
アリアは、男性を抱きしめる。
「一緒にいよう!大好きなの!」
男性は、体を震わせていう。
「だめだ………もし、妄想でも…私といてはいけない。まともで、普通の相手がいいに決まってる…………私は」
アリアは、急に泣きそうな目を男性へ向ける。
「大好きなのに?だめ…なの?」
男性は少女の涙目に困る。
泣き顔は嫌いではないが、悲しませるのは。
「私は…おかしいんだ。だから」
「おかしくていいよ?大好きだから」
男性は。
苦しそうだ。
「…私だって好きだ!大好きだ!鮮やかで強い存在感のある赤く美しい髪!明るく、誰にでも優しく、そして何より強い君のことが!」
アリアは、少し、頬を染める。
「そんなにほめなくても……………」
「その恥ずかしがるのも!すごく好きだ!」
「何がだめなの?あ、私うるさいから…とか?」
「正直、明るさがなんていうか…辛くなるときもある」
「………そ、そうなの」
「………好きなんだ。でも、好きなんだ………でも!妄想が叶って、はい!一緒にいようとなったら、君は私のことを嫌う…私は理屈っぽいし…人としておかしいし」
アリアは、ブチッと何かきれる。
「わかった…うん!わかった…なら私は近づかないで後ろでこっそり一緒にいるから。嫌なところもおかしい所もぜーんぶ見てるから」
「え、え?え?え」
男性は困惑したが、いう。
「え?あのさ………私がこんなこというの本当に失礼なんだが、君は男性を見る目がないと思える」
「うん、なくていいよ。だって好きしかないから」
「だから、それは私が都合よく、私を好きでいてくれる相手という設定というやつなんだよ?」
アリアは、自分の赤いツインテールに手でふれさらりと指を髪に通してなびかせる。
「馬鹿にしないで。私はあなたが好き。でも、もし、あなた以上にいい人がいたら……」
「そっちの方が好きになるかも」
男性は小さくつぶやく。
「その方が……その方がいい……そっちの方が…」
アリアは、ブチッときれる。
「ごちゃごちゃうるさーい!私は勝手にするから!」
男性の腕に抱きつく。
「大好きよ。大好き。作り物でも関係ないから」
アリアは、ソラに気づく。
男性は焦る。
「…………あ……一度も………こんな……したこと………近くにも………いたことも…………なく………て」
アリアは、腕を組み、意地悪く笑う。
男性は顔を手で覆う。
「…………………………………かわいい」
アリアは聞こえていたのにいう。
「え?もう一回いって?」
「………わ、私は何も………………」
アリアと男性は行ってしまう。
ソラは、にこっとする。
「すてきな二人だね!」
ルーは、じっと二人の後ろ姿を見つめる。
「不思議なこともあるんだな」
ソラとルーは進む。




