結晶の話
そこには、赤と水色の混ざる結晶が多く、生えていた。
その一つの上に少女が浮いていた。
彼女は、ソラを嫌そうな顔で見ていた。
ソラは、結晶が生えていて、さわってみる。
かたい。
「ルー見てみてー!かたーい」
ソラはコンコンと扉をノックするように叩いていた。
「かたいのか?」
「うん!」
ソラはニコニコしてる。
「お花畑みたいなこどもね」
上から声がした。
「え?」
ソラが上を向くと少女はいた。
見下ろしてくる。
「誰ですか?」
聞いた瞬間、結晶が、地面から引き抜かれていく。
三の文字を描くように結晶は動き出し、ソラの首元に結晶のとがる先端が向けられた。
ソラは動かない。
「私、お前みたいなにこにこしている奴は嫌いなの」
ルーは動かない。
ソラは動じず質問する。
「にこにこしてはだめなんですか?」
「だめね。今泣いてる誰かもいるかもしれないのに、笑ってるなんて。そんなの許せないわ。私の前では」
「どうしたらいいですか?」
「まず、笑うのをやめて」
ソラはいわれたとおりにピタリと真顔をする。
少女は、表情なく、いう。
「それがいいわ。それでいて。私の前で笑わないで。不愉快だから」
「笑うのだめですか?」
「ええ」
少女は、見下ろす。
ソラが笑わなくなると、結晶を元へ戻す。
「………………」
静か。
ソラは、いう。
「笑っちゃどうしてだめなんですか?」
少女は表情なくいう。
「逆にどうして笑うの?」
「いつのまにかです」
「おめでたい頭ね」
「はい!」
少女は、ソラが笑ったため、イラッとする。
「早くどこかへ行って」
「………え、は、はい!あの、さようなら」
「…………………」
少女は、結晶の上を浮いて、歩いてく。
「今泣いている誰かがいて、笑う誰かがいて、楽しい誰かがいて、悲しい誰かがいるのに…」
少女は、ソラの後ろ姿を見つめていう。
「お花畑は嫌いだわ」




