落ち着きの話
落ち着きを持つ少女がいる。
落ち着きを与える力を持ち、生まれた少女。
彼女は百合の花の飾りで髪を結う。
落ち着きのある白の服を着て、動き回る人々や人以外の存在を見つめる。
彼女パルミオは落ち着きのある世界へと変える力を持つ。
今いる場所全てが落ち着く。
忙しい全ては落ち着くようにゆっくりと時間が動く。
パルミオは目を伏せる。
「忙しいんだよね………」
パルミオは忙しさの中にある全てをみて思うのはまず、体の不調だけである。人間関係にも亀裂が入るとは思えるが、まずは体の不調。
パルミオは落ち着いた全てを見つめるがこの力を解けばまた戻る。
「………………忙しさ、か」
パルミオは幼い時、自分の力に気づいたがその力を使うことはしなかった。
忙しさとは日々にとってなくてはいけないものだ。
急に時間ができる方が恐怖するだろう。
パルミオは聞いたことがある。
忙しい方がいいと。
何をしていようと忙しい方がいいと、聞いた。
聞いてから子どもだった彼女はこの力を使ってみることにした。
落ち着いた世界は全ての時間が遅い。
動き方が遅くても良い世界。
彼女は戻すことにする。
世界は忙しくなる。
世界は忙しい。
落ち着く世界に彼女はいるわけではない。
力を使ったことで彼女の周りはねじれてしまった。
動き方が彼女の周りではおかしくなる。
パルミオはため息をつく。
一度使うとねじれは広がっていくらしい。
そのため彼女に近付くものは遅くなる。
遅いのだ。
けれど遅くみえるのは彼女のみで世界は変わっていない。
パルミオはうつむく。
他者との世界に歪みが起きてしまった。
パルミオは一人ねじれた世界を歩く。
「……………ねじれてるなあ」
そこへ誰か来る。
パルミオへ近付く。
パルミオはため息をつく。
「ねえ!ルー!」
小さな少女が走ってきて、世界が遅く見えるはずだった。
少女が普通に走る光景が通り過ぎた。
パルミオはいつの間にか声をかける。
「あ………あの!」
パルミオは少女に声をかけた。
少女は不思議そうにする。
「はい!なんですか!?もしかして何か落としましたか!?ありがとうございます」
パルミオは顔を左右に動かすとソラの前で膝をつく。
「わあ、わあ、普通に話せる………わあ、私はパルミオ。少しお話ししてほしいの」
ソラは警戒する。
「話…ですか?」
パルミオは全てを話す。
落ち着きの能力を持つこと。
自分に近付くと遅くなり、うまく話せないことが多いこと。
ソラはその話を聞きつつ、警戒は続ける。
パルミオは肩を落として小さく笑う。
「すみません。信じられないよね………落ち着きの能力なんて」
「いえ………全て遅くなるんですか…?」
「遅くなって、ねじれてるみたいで………。ソラさんはなぜか、何もねじれないの」
「どうしてでしょうか……?」
ルーが隣に現れる。
パルミオを見る。
「我の主は我との契約をしている。それにより影響されないのかもしれない」
ソラは驚く。
「え、それなんかすごい!」
ルーは少し考えてから話す。
「パルミオさん。あなたは能力のある者と会ったことはあるか?」
「ないかな…」
「能力者同士ならねじれないのかもしれない」
「………え」
パルミオは目を開く。
ルーは続ける。
「能力者のみの場所へ行けばねじれはないかもしれない」
パルミオはルーへお礼をいう。
「ありがとう!そんなこと思いつかなかった!ありがとう!ルーさん!」
ソラはルーがほめられ、うれしそうだ。
パルミオはそれから能力者のいる場所へ向かうことにする。場所は分からないが探すとのこと。
パルミオと別れてからソラとルーは話す。
「ルーはこっそり優しいよね」
ルーは“こっそり?”に不思議そうにする。
「こっそり?」
「パルミオさん。とってもうれしそうだったよ」
「だが場所は分からない」
ソラはルーへ笑う。
「でもね!ルーがパルミオさんのことを考えてゆってくれたことが本当にうれしかったと思う!」
「……そうか?逆に余計なことだったかもしれな……」
ソラはそこへいう。
「余計じゃないよ!パルミオさんはうれしいんだから」
「………………」
ルーは何もいわない。
ソラはルーの頭を撫でる。
「余計って思ってもいわないよりはいいと思う!」
「……………そうだといいのだが」
「そうだよ!ルー!行こう」
「ああ。行こう」
ソラとルーは前を向く。




