ある青年の話
ソラは荒野を進むと青年と会う。
青年は荒野で腕を伸ばしていて、何というか手を様々な方向へ動かしている。
何してるのだろ。
ソラは、気になって、近づく。
「あの!何してるんですか?」
青年は声をかけたが反応しない。
ソラは、近くへと来てようやく青年が何をしてるかわかる。
どうやら、絵をかいていたようだ。
「絵?」
不思議なことに青年は空中で指を動かし、何かを描いている。
「え?」
ソラは、男性の正面に立つ。
「わあ…………!」
そこには。
空中に、多くの形の違う四角形の箱がいくつも下の方に重なるように描かれ、上の方には夕方のような赤とオレンジが混ざったものが描かれている。
ソラは不思議な光景にわくわくしている。
「……わあ!わあ!何ですかこれは………すてきすぎで、不思議すぎます……!」
青年はソラには気づかず、箱や夕方の空の上に重ねて何かをかく。
「小さな魚…?」
魚の形のような、模様?を描く。
ソラは、その光景を見つめた。
一つのことに集中する人の目は違う。
本当に一つのみでソラのこともまわりさえ見ない。
青年は描き終わったのか荒野に置いていたカバンからタオルを出し、顔の汗を拭いていく。
ソラは静かに見つめる。
青年はタオルを首に巻き、後ろを向く。
ソラは正面の離れた所にいて、目が合う。
青年。
「……………………………?」
最初は無言。
「……………う」
ソラはじっと見つめる。
「う……うわああああああああああ!!!!!」
青年は叫ぶ。
「え!誰?何え!?何して……え!え?!あ、見ないでくれ!!!」
青年は正面に立つと、絵を隠す。
「あ………はず…………うわあ……」
まっ赤な顔の青年へソラはにこにこする。
「すてきな絵です!」
ソラは自分が思うことを全ていう。
「この絵の色すてきです!えーっと!赤とか緑とか青とか、わあ………わあ!すごい!」
「あ…」
「でも、どうして空中?に絵がかけるんですか」
「…この場所は空中に絵がかける場所だから…だけど」
「私も!かけますか!?」
「え、うん。えーっと、指とか空中において…気持ちを込める、かな」
ソラはやってみた。
指で、一つの横線をかく。
「わー。でも」
相当になんか、体力が?何となく、下がったような。
「あ…空中絵ってなんか…とても体力必要でさ」
ソラはだらんとする。
「はじめてだと、大変かも………」
すでにソラ、地面に座り込む。
「…え、こんなにですか」
ソラは座ると、青年を見る。
「体力…いるんですね…なのに、どうして…あなたはするんですか?」
青年はきょとんとする。
自然に答える。
「え。んー。考えたことなかったな…どうしてしてるんだ?」
青年の答えは。
「…多分したい、からかな?」
青年もよくわからないそうだ。
「あ、あのさ!正直…この絵…………………どう思う?」
ソラは答える。
笑顔だ。
「不思議で、でもどこか強い色で………でも、んーんー。すばらしいとしかいえません!私かけないですから!」
「………………」
青年は恥ずかしいのか、もう後ろを向く。
「…………あ、ありがと………その、忘れてくれ!」
「忘れません!絶対!」
「忘れてくれよ!恥ずかしいんだよ、本当、ここ誰も来ないと思ってたのに!」
「私は忘れませんよー」
「うわあ!もう…恥ずかしいんだって」
「この絵はどうするんですか?」
「あ…空中絵はこの腕時計にいれられるんだ」
よくわからないが、そういうことができる?ようだ。
ソラもう少し、絵を見つめた。
絵と、青年も見る。
青年の描いているときは、あんなにも強い目だったのに、今は不安そうな顔で。
「うわあ、あんまり見るなって……………」
おもしろい。
ソラはニマニマする。
「何ニマニマしてるんだ…」
「いえー。恥ずかしがる顔っていいなと思いました!」
「な…………!」
それから、ソラはじっくりと見つめると、青年と別れる。
青年は恥ずかしそうだが、いう。
「気をつけろよ…あとさ、その…ありがとな」
「はい!さよならです!」
ソラが行ってしまい、青年は気づく。
「名前、聞くの忘れてたな」
青年はポツリというと、また空中へ顔を向けた。
ソラは歩く。
ルーは今日は出てこない。
寝ている。
ソラは、空を見つめる。
「すてきな絵だったなあ」
ソラはにこっとした。




