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空の存在  作者: 進道勇気
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花束の話

荒野に多くの花束があふれている。

花束の荒野と呼ばれている。

空からゆっくりとふわふわと、降りてきて地面に花束が吸い込まれる。

そこをソラとルーは歩いている。


「わー。花束が飛んでるよ!」


ソラの明るい声にルーは静かな声で答える。


「そうだな」


「ルーももっと明るくいこう!花束だよ!?」


「花束だな」


ソラぐううとなる。


「もっと元気に!元気にだよ!」


そこを銀色の短い髪の少女が花束を持つ。

彼女は白のウェディングドレスを着ている。

ドレスは動きやすいようにスカート部分は長くない。


「シン!ねえすごいよ!シン!」


「え、あ、うん。すごいな。ユウさん」


そこにいたのは。

ルーのもう一人の主でもあるシンだ。


「おぬし。何をしている?」


「あ!ソラとルー。花束の荒野に来てたんだな。きれいだよな」


ソラは隣の人が気になる。


「そちらの方はどなたですか?」


ウエディング姿の少女は桜の花びらを一つ髪につけている。

可愛らしい笑顔で答える。


「ボクはユウだよ。えーと、ソラさんとルーさんだね!昔から知ってるよ!会うのは初めてだね」


「ユウさんですね!よろしくお願いします」


ルーは静かにいう。


「ようやく自分の気持ちに気づいたんだな。おぬし」


シンは顔を赤くする。


「一緒にここに来たくて、というかユウさんのウエディングドレスが見たくてみたくて………」


ユウはシンに抱きつく。


「十年は長かったね!ゆ………あ、シン!」


シンは顔を覆う。


「うわあ、超かわいい!ユウさん………かわいい…………本当にかわいい……ソラにもウエディングドレスきてもらいたい……」


ソラは歩きだす。


「ウエディングドレスですか?」


「かわいいから、着てほしいなって」


ルーはシンへ冷たい目をする。


「ルーやめろ!その顔やめて!?」


ユウはソラとルーの手を握る。


「今までもシンを支えてくれてありがとう!これからもよろしくね!」


「は…はい!」


ルーはユウの目を真っ直ぐに見る。


「…支えてきたのはあなただろう。ユウさん」


「いやいや、ボク一人じゃ無理だったよ!みんながいたからだよ」


シンはユウの姿に後ろを向いて顔を覆う。


「………………やっぱユウさんのこと今も変わらず好きだ」


ユウがシンの方へ来る。


「シンもこっち来てきて!」


「あ、うん……」


ルーはソラへという。


「おぬし。少し下がろう。何か伝えるために来たんだろう」


「ん?そうなの?」


ルーは少し遠くにソラを連れて行く。

ユウはあわてる。


「待ってまって、二人も近くにいてよ!?」


ソラとルーは近くへと行く。


花束とソラとルーに見守られるように。

シンはユウに手を繋がれていた。


「…ボクとユ……じゃなかった。ボクとシンは十年以上一緒にいたね。ボクのこといつでも捨ててよかったんだよ?」


シンは顔を振る。

その目には強さがある。

繋がれた手にシンは笑顔を作る。


_あなたがいたから、恋を知って、愛を知ったんだ


_あなたがいて、他にも誰かがいたから俺はここにいるんだ


_俺はあなたを


シンは真っ直ぐにユウへと伝える。


花束の中、伝える。


「ずっと一緒にいてくれてありがとう。ユウさん。大好きだ。ううん、愛してる」


シンはその言葉を伝える。


「ユウさん。愛しています。俺が死んでも愛し続けます」


ユウはその言葉に涙は流さない。

意地悪くいう。


「信じないよ。でも…ボクもあなたを愛してる。あまりいい言葉ではないけど、一緒に生きてもいいし、心中だって選ぶよ」


シンはその言葉に一度うつむいたがユウの手を握る。

ユウにそんな言葉をいわせないといけない自分に苛立ちもある。

けれど本当にシンはユウを愛しているのだ。

だから、笑顔を作る。


「…あなたにそんな言葉をいわせたとしても…俺はあなたが好きだ。愛しています」


ユウがシンを抱きしめる。


「ユ……シン!ボクたちはこれからも一緒だ。みんなだってそうだよ!シン!これからもよろしくね!」


ユウはシンから離れると、ソラとルーの元へ行く。


「やーっと話せる!ソラさんとルーさんと話してくるね!」


「うん」


ユウはソラを抱きしめている。

ルーは素早くシンの隣へ来る。

花束がゆっくりと降りてくる荒野だ。


「おぬし。ようやく気づいたな」


「ああ、十年以上たって、やっとユウさんのこと本当に好きだって気づいたんだ。昔から好きだったけど昔はよく分からなくて」


ルーは珍しくシンの頭に手を乗せる。


「…おぬしの側にユウさんがいてよかった…」


「ルーが何か珍しいことしてる!?」


「頭に手を置いているだけだが」


シンはウエディングドレス姿のユウと楽しそうに話すソラを見つめる。


「俺はユウさんのウエディングドレス姿が見たかったんだ………あ、もうかわいい……ソラも着ないかな………かわいいよな……ああ、本当に………かわいい。ソラにも着てほしい………」


「おぬし。好きだな本当に」


ソラと楽しく話すユウの姿を見つめる。

シンは目を細める。

ルーはユウに呼ばれる。

ルーは戻ってくると俺へと花束を渡す。


「ユウさんからだ」


シンは花束を見つめる。

薔薇の花と、その周りを囲むアイビーに似た小さな植物を見つめる。


シンは少し、花束に恐怖を感じた。

ルーはいう。


「おぬし以上に思っているようだな」


シンは花束を抱きしめる。

美しい光景を見つめる。

花束はゆっくりと空から降りてくる。

そんな光景。


そこへユウがシンの側へ来る。


「ねえシン」


「え…………」


ユウはニッコリとしている。

ソラとルーは遠くから見つめる。


「ボク以外絶対思ったら許さないよ」


シンはビクッとする。

ユウは笑顔だ。

優しい笑みだ。

更に恐怖を感じる。


シンはコクコクとうなずく。


「俺は生涯ユウさんを愛します!」


ユウは満面の笑みだ。


「うんっ!絶対…ね?」


ソラとルーは静かに顔を合わせる。

ユウは、そのソラとルーの元へ戻る。


「ごめんね。ソラさん、ルーさん。シンにね、ちゃんと伝えないといけなかったの」


ユウは怒らせてはいけない。

ソラとルーはそれが分かる。


シンは恐れつつ、けれど、笑んで花束のあふれる光景を見つめる。


花束は風に流れ、飛んでいく。

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