そろそろ年が明けるらしい話
年が明けるらしい。
荒野にいると年が明けることが分からない。
荒野ではそういうことが分からない。
ソラとルーはいつものように歩くと、何か走ってくる。
着物姿の綿棒がやってくる。
ん?綿棒?
「さあさあ!荒野のみなさん!何とこの場所の年が明けるよ!楽しみにしててね!ほらほら!そこの子たち!ほらほら!」
ソラとルーへ渡されたのはオレンジの丸いもの。
石?餅?手鏡?はないとして。
ソラとルーは顔を見合わせる。
「何かもらったよ。ルー」
「何だろうな」
綿棒はソラたちしか荒野にいないので話しはじめる。
「いやー。荒野にいると年が明けるの分からないよね。私もなんだよ。分からないよね。だからこうやって教えてるんだ!あ、他のとこも行かないと!夜が来たらそれは何かなるからね!食べ物じゃないからね!」
着物を着た綿棒は走って行ってしまった。
ソラとルーは荒野で今日は夜を過ごす。
「暗いね。ルー。」
「暗いというか夜だな」
「あんまり寒くないね」
「寒くないな」
「ルーと一緒にいて長いね」
「長いな」
「ルーの嘘つくときとか分かるよ。あと、何か冷たいこといいつつ、私を心配してるとかね。本当に長くいるね!」
「確かに長いな…………まさかこんなにも長く共にあるとは思わなかったな」
「ねー。」
ソラとルーは確かにとても長い時間一緒にいる。長さにより、いるのが当たり前になっている。
相当に長い時間いた。
「年が明けるって」
「明けるらしいな」
「ここにいると分かんないね」
「確かにどことも属してないから時間の過ぎが早いな」
「早いねー」
「いつの間にか時間が経っている。そして早い」
「早いねー」
ソラとルーは時間の過ぎの早さを感じつつゆっくり話す。
「来年か……………」
「ルー来年が来るんだね!」
そこへ二人の持つオレンジの丸いものは急に動き始め、空へと飛んでいく。
空へと他の光りも飛んでいく。
何かオレンジのオシャレな文字が描かれていく。
ソラはその文字が詠めない。
「ルー。あれなんて読むの?」
「年が明けたようだな」
そこへオレンジのフワリとしたものが降りてくる。
「わあ………これが年が明けたことなんだね」
「年明けが見られたとは……良いことだな」
「そうだね!」
ソラは笑顔になる。
「よーし!ルー行こう!」
「そうだな」
年が明けたらしい。
きっと他の誰かも年明けを見ているのであろう。
ルーは上を向く。
「今年か………」
「今年だね!」
「また一年過ぎたようだな」
「過ぎたね!」
「元気だな」
ソラは元気だ。
ルーは肩を落とすが上を向くことにする。




