話せなかった話
少女は多くの袋を手に持つと棚に置いていく。
「ここは、話せなかった話が集まるのです。話せない。話すことのできない話があつまるのです。あなたはどうですか?」
ソラは椅子に座る。
ルーは隣にいる。
ソラは笑う。
「ないです!」
目の前の少女は黒のワンピース姿。
白の靴下。
黒の靴。
大人っぽい顔立ちの少女。
「ないのですか?珍しいですね。話せないことって誰にでもあるのに」
「私はないです…あ。ありました!」
「何です?何です?」
興味を持っている。
少女は目が輝いている。
「私………私………わたし…………」
ソラは答える。
ルーを見ないようにする。
「ルーが寝てるときに頭をなで続けました」
少女は、ニコッとする。
「そうなんですかー。ソウデスカー」
少女は棚があり、袋を見る。
「この袋は、話せない話が入ってるんです。色んな方々がここに置いていきました。私は……みなさんの顔が悲しかったです。話せない話は」
袋を開けていく。
「開けていかないと、ぜーんぶ潰れてしまうんです」
袋を開けていくと、袋から藍色のフワフワとしたものが出てくる。
フワフワとすると、全部集まっていく。
ソラは見つめる。
「ふわふわですー!」
ソラはさわろうと飛ぶ。
少女は、人差し指でふれる。
そうすると、フワフワしたものは、弾ける。
藍色の光が弾け飛んでいく。
あまり綺麗とは感じなかった。
ソラは手の平を広げたりしない。
本能的に後ろへと下がる。
ソラもどうしてそうしたかわからない。
少女はニコリとする。
「話せない話は………良いものではないんです。綺麗じゃないんです……けれど、私は触り、外へ出して消していかないといけないです」
少女は、手を動かすと弾けた藍色は消えていく。
ルーは後ろへと下がったりはなく。
静かにいう。
「…誰かがしないといけないことをしている。あなたのような誰かがいるから。この世界はそれでもある。深く感謝する」
少女はその言葉にどこか、複雑な表情をしたが、笑う。
「そんなこといっても何も出ませんからねっ!」
ソラとルーは少女と別れる。
少女は袋を閉めていく。
静かにつぶやいた。
「感謝、か」
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ソラは歩きながらいう。
「なんか怖かった…あのふわふわ。やわらかそうなのに」
ルーはいう。
「あれは…良いものでないからな」
「でもねっ。ルーがいってくれたこと。うれしかったと思うの!きっと!」
「別に喜ばせようとしたわけでは」
「きっと、うれしかったと思うの!少し笑ってたもん!」
ルーは小さくつぶやく。
「………そうか」




