いいこの話
いい子。
いい子のルール。
返事をすること
お礼いえること
謝ること
そして、何でも「はい」といえること
僕はいえるよ
いい子だから。
いい子だもん
悪いことは少しはあるけど、でも
いい子だもん
僕はいい子いい子いい子いい子
そうだよね?
僕はルールを守ってる
困ってる人には優しく………。
ルールは守らないと
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「あ、ねえ君!困ってない?」
小さな少女。ソラは声をかけられた。
少年は話しかけてきた。
「ねえ君。この町の出口まで案内するよ」
ソラは「あ、ありがとうございます」と笑う。
少年はソラの手を握る。
「手をつないで行こう」
「はい!あの、ここ…この町誰もいなくて……」
少年は答える。
「みんないい子だからね。出てこないんだ」
「いいこ?ですか?」
「悪い子じゃないんだ。いい子なら、何でも許されるからね」
「いい子ですか…あなたもですか?」
「俺?俺は………いいこ、かな」
「いい子なんですね!いい子はいいことなんですか?」
「うん、いいことだよ。でも、俺は嫌かな。いい子じゃないとだめなんて」
「そうなんですか?」
「うん。俺はやだな」
何ごともなく出口につく。
ソラは手をつながれてる。
少年はいう。
「俺はいい子じゃないから」
ソラは少年を見る。
「?何でですか?」
「ここのいい子は……君みたいに迷いこんだ子どもをいい子にしようとするから」
「いい子に?」
「でも君は大丈夫。謝ることはしてないから」
カチリと音がした。
_________
「いい子じゃないね。君は。僕はいい子だよ。ちゃんとその子を迷わせるために町中の花壇とか、あかりとか、カーテンとか似てるもので飾ったのに」
ソラは手をつなぐ彼を見つめる。
「あーあー。みんないい子なのにね。人が来ると外へは出ない。子どもが来れば話しかける。なのに、僕はいい子なのに。邪魔される」
ソラは手をつながれてる。
「お願いがあるんだ。君。ここで、いい子になってくれない?僕はいい子にしてないとしてないと、なんだ」
ソラは少年の目を見る。
「ごめんなさい……私は旅へ行きます」
ソラの言葉にギュウと手に力を入れる。
「返事をすること
お礼いえること
謝ることは
何でも「はい」といえること
全部いい子の条件にピッタリ」
ソラの目を見て、少年は笑う。
「君はいい子だ。ここの仲間に………」
うつむくと
少年は急に変わる。
「いらない。仲間なんて。俺はいらない。君は仲間にいらない。君はいらない」
少年は、ソラから手を離す。
「ここでのいい子は、都合がいいんだ。だから、君は俺みたいになるな。俺みたいになったらだめだ。楽だけど……君は……」
少年は、笑顔だ。
どうして笑顔なのか。
「いい子になんかなるな」
ソラはその顔を見た。
手を伸ばしてしまう。
「あ、あの………!」
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僕はいい子。
僕はいい子
いい子なんだ
いい子なのに
あいつのせいで
僕は地面に座り込む。
「僕は、いい子なんです………あいつは、僕じゃなくて……それで………それで、いい子なのに!!!」
建物の扉が開く。
「いい子じゃない」
「いい子じゃない」
「いい子じゃない」
言葉を告げられる。
「僕は、いい子でいい子で……いい子なのに!!」
カチリと。
彼は笑う。
「俺は、いい子じゃない」
_“この場所で”いい子じゃ、俺もあいつもだめなんだ_
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ソラは荒野に一人でいた。
「………あの人!ねえルーあの人!」
ルーは隣に現れる。
「旅をするといっただろう。なら行くぞ」
「で、でも!あれ?さっきの町は!?あれ?」
「安心するんだ。おぬし。あの者をおぬしが助けた。助けたんだ」
「たすけ、たの?」
「ああ。だから行こう」
「…………助けたなら……私も行く!」
「ああ。行こう」
ソラとルーは行く。
どこまでも広い空と広い荒野が続く。




