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空の存在  作者: 進道勇気
158/215

いいこの話

いい子。

いい子のルール。


返事をすること


お礼いえること


謝ること


そして、何でも「はい」といえること



僕はいえるよ

いい子だから。

いい子だもん

悪いことは少しはあるけど、でも

いい子だもん


僕はいい子いい子いい子いい子


そうだよね?

僕はルールを守ってる


困ってる人には優しく………。

ルールは守らないと


___________


「あ、ねえ君!困ってない?」


小さな少女。ソラは声をかけられた。

少年は話しかけてきた。


「ねえ君。この町の出口まで案内するよ」


ソラは「あ、ありがとうございます」と笑う。

少年はソラの手を握る。


「手をつないで行こう」


「はい!あの、ここ…この町誰もいなくて……」


少年は答える。


「みんないい子だからね。出てこないんだ」


「いいこ?ですか?」


「悪い子じゃないんだ。いい子なら、何でも許されるからね」


「いい子ですか…あなたもですか?」


「俺?俺は………いいこ、かな」


「いい子なんですね!いい子はいいことなんですか?」


「うん、いいことだよ。でも、俺は嫌かな。いい子じゃないとだめなんて」


「そうなんですか?」


「うん。俺はやだな」


何ごともなく出口につく。

ソラは手をつながれてる。

少年はいう。


「俺はいい子じゃないから」


ソラは少年を見る。


「?何でですか?」


「ここのいい子は……君みたいに迷いこんだ子どもをいい子にしようとするから」


「いい子に?」


「でも君は大丈夫。謝ることはしてないから」


カチリと音がした。


_________


「いい子じゃないね。君は。僕はいい子だよ。ちゃんとその子を迷わせるために町中の花壇とか、あかりとか、カーテンとか似てるもので飾ったのに」


ソラは手をつなぐ彼を見つめる。


「あーあー。みんないい子なのにね。人が来ると外へは出ない。子どもが来れば話しかける。なのに、僕はいい子なのに。邪魔される」


ソラは手をつながれてる。


「お願いがあるんだ。君。ここで、いい子になってくれない?僕はいい子にしてないとしてないと、なんだ」


ソラは少年の目を見る。


「ごめんなさい……私は旅へ行きます」


ソラの言葉にギュウと手に力を入れる。


「返事をすること


お礼いえること


謝ることは


何でも「はい」といえること


全部いい子の条件にピッタリ」



ソラの目を見て、少年は笑う。


「君はいい子だ。ここの仲間に………」


うつむくと

少年は急に変わる。


「いらない。仲間なんて。俺はいらない。君は仲間にいらない。君はいらない」


少年は、ソラから手を離す。


「ここでのいい子は、都合がいいんだ。だから、君は俺みたいになるな。俺みたいになったらだめだ。楽だけど……君は……」


少年は、笑顔だ。

どうして笑顔なのか。


「いい子になんかなるな」


ソラはその顔を見た。

手を伸ばしてしまう。


「あ、あの………!」



___________


僕はいい子。


僕はいい子


いい子なんだ

いい子なのに

あいつのせいで


僕は地面に座り込む。


「僕は、いい子なんです………あいつは、僕じゃなくて……それで………それで、いい子なのに!!!」


建物の扉が開く。


「いい子じゃない」


「いい子じゃない」


「いい子じゃない」


言葉を告げられる。


「僕は、いい子でいい子で……いい子なのに!!」


カチリと。


彼は笑う。


「俺は、いい子じゃない」


_“この場所で”いい子じゃ、俺もあいつもだめなんだ_


_________


ソラは荒野に一人でいた。


「………あの人!ねえルーあの人!」


ルーは隣に現れる。


「旅をするといっただろう。なら行くぞ」


「で、でも!あれ?さっきの町は!?あれ?」


「安心するんだ。おぬし。あの者をおぬしが助けた。助けたんだ」


「たすけ、たの?」


「ああ。だから行こう」


「…………助けたなら……私も行く!」


「ああ。行こう」


ソラとルーは行く。

どこまでも広い空と広い荒野が続く。

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