一歩進んでまた戻る誰かの話
一歩
進んだ。
一歩
進んでみた。
思いきって
結果
………………
俺は地面に膝をつける。
「うあああ、俺一歩進んだ!が…………」
椅子の前で俺は地面に膝をつけ、両手をつけて下を向く。
椅子に俺は掴まる。
「うあああ!進んだ!進んだのに!!うあ!うあーーーー!」
俺は椅子に掴まる。
「あー………一歩進んでも………じゃあ、はい。良いことなんてないんだな。まあそうだよな…」
俺はため息をつく。
「………………まあでも!色々学んだし!よしとしよう!!!」
俺は前を向くことにする。
進んだ。
進んだ。
進むことはできた。
そこへ、小さな犬が来る。
ルーだ。
そして、小さな少女。
ソラが来る。
俺はソラと走り寄る。
「ソラ………!」
ソラは俺を見て目を開く。
「シンさん!?どうしたんですか!?」
ソラは俺をシンと呼ぶ。
あ、それうれしい。
俺は敬語で地面に頭をつける。
「お願いがあります。ソラ。俺を…………能なしとか、あと役立たずとかいってほしいです…」
ソラはブンブンと顔を振る。
「ぜったい!に嫌です!」
ソラは俺の頭をなでる。
「シンさんの頭をなでるです!」
俺は頭をなでられ、あれ?なんか、涙?あれ?汗かな?
目じりが熱い。
ルーは隣でいう。
「おぬしは、何かあったのか?」
「いろいろ!色々だ!ルーでもいい!俺を能なしとか、役立たずとかいってくれ!」
ルーは心底冷え込んだ目をする。
あ、それいい!
「ルー。その目マジでいい………もっとしてくれ!」
ルーは静かにいう。
「おぬしの趣味はどうにかならないのか」
「なるもんか!俺はそういうのが好きなんだ!」
ソラは頭をなで続ける。
あ、やばい
泣けてきた
「うう………ソラありがとう……」
ソラは笑顔。
「いえ!シンさん!うれしいですか?」
「うれしい」
ソラはかわいく笑う。
「シンさんがうれしいと私もうれしいです!」
あ、ソラが本当に本当に天使だ。
これこそ女神だ。
隣のルーは俺を静かに見つめると、言葉を出す。
「何があったのか知らないが。おぬし。一歩進めてよかったか?」
俺はそう聞かれて。
まっすぐに前を向いて答える。
「ああ。進んだ。だから分かったんだ。俺は進んでよかった。進んだことはぜってえに俺はよかった」
俺は満面の笑顔をする。
「ああ。進んで俺はぜってえによかった!ぜってえに!これはこの先!何かの力になる!何の力になるかわかんねーけど…」
俺はそれだけは絶対だ。
ソラは、頭から手を離す。
ルーはそれを見ていう。
「そろそろ我たちは行く」
ソラは俺の右手にふれる。
「シンさん。私行きます!」
俺は、ソラへ笑顔を作る。
「…ありがとうな。二人とも。なんか、俺って助けられてばっかだな」
ルーは俺の言葉へいう。
「成長したな。一ミリだが」
「一ミリ!?え、いちみり!?ふ、ふふ、ルー。俺はもっと成長…………する、からな………多分………み、みて、ろよ」
ルーはいう。
「言葉に自信がなさ過ぎるだろう。おぬしは」
俺はそれでもいい返す。
「ふ、ふふ………た、たぶん、また一ミリは、その、のびるからな」
ソラは目を耀かせる。
「いちみり!シンさん!のびるんですか!?」
ん?のびる?あれ?身長?あれ?
ま、いいか
「の、のばす………?ん?あれ?あ、一ミリは成長するからな!ルー!」
ルーへというと、俺はソラの方へ行き、膝を地面につけてソラと目を合わせる。
「俺が一ミリ進めたのはソラとルーがいたからだ。………ありがとな」
ソラは笑う。
「はい!私もいちみり!のばします!」
「のばす?なのか?あれ??」
それから、ルーとソラは行ってしまう。
俺は見つめる。
ルーは振り向く。
その声は冷たいが強さはある。
「諦めるなよ。おぬし」
俺はその言葉にまだうまく答えられない。
でも、何かしら答える。
「………ああ」
それしか、いえなかった。
でも。
ソラは手を振ってくれてるし。
ルーも何だかんだでその言葉を俺にくれた。
どうやら、まだ俺は。
一歩進まないといけない。
はあ、もう進みたくないなーなんて…………
一歩進んでまた戻った。
そしてまた進んだ。
「諦めるな………か…………難しいな」
俺は椅子には座らず見つめてつぶやいた。




