電話の話
荒野にぽつんと、電話が置かれている。
電話の形は六角形で、受話器が中央に置かれている。
ソラは、電話の前へと来る。
ぽつんと、とはいったが、誰かがいる。
人間や、人以外の存在は、並んでいる。
ソラは、ジッと見つめる。
多くがいる。
電話をする人は、いう。
「元気だよ。俺さ、今まで全然どうにもならなかったけど、少しだけ………本当に少しはどうにかなってきた。がんばるから…だから」
その人が終わると、次はトカゲの姿のものは受話器を持つ。
「兄ちゃん。俺も妹も弟もなんとかみんなでどうにかしてるよ。心配しないでくれ。心配だよな。俺も小さかったし、でも。俺もみんなも負けないから、だから、見守っててくれ」
次は白の羽を持つ少女。
受話器を持つ。
「もしもし。私ね、今新しいことすることになったよ。うん。私は…大丈夫。え?大丈夫と思えない?そんなことないよ。私は強くいたいから。うん」
ソラは見つめていると、羽を持つ少女は、ソラの方に来る。
「小さな子。電話の話勝手に聞いちゃだめよっ。て。みんなも聞こえてるか」
ソラは質問する。
「みんなどうして並んでるんですか?」
「みんな、もう会えない誰かと話してるの」
「会えないんですか?」
「うん。もう会えないの」
ソラは小さくうなずく。
「そう、なんですか…」
白い羽持つ少女は、電話をする誰かを見つめる。
「だから、みんなここで電話するの。あの電話はつながるから。その誰かと。でも、本当にその人かはわからない」
「わからないんですか?」
「そういわれてるの。会えない誰かだから」
「誰にいわれてるんですか?」
白い羽を持つ少女は、電話を見つめる。
「あの電話がいうの。会えない誰かとは話せる。けど、本当にその誰かはわからないって」
ソラは不思議そうにする。
「どういうことですか?」
電話の方を見る。
そこで話してた人が。
「ああ、やっと話せた。うん、うん。え?俺の命?え?うん。俺の命を?うん。わかった。渡す。今渡すから。え?ぐっ………う………」
人が倒れた。
ソラは言葉を失う。
倒れた人は他の誰かに運ばれてしまう。
白い羽の少女は暗い目でいう。
「電話相手が違う時もあるの。あんな風にね。違くても電話中はわからない」
ソラは、並ぶみんなを見る。
「それでも電話をするんですか?」
白い羽を持つ少女は柔らかく笑う。
「するよ。話したいから。たとえ、違うとしても」




