柱の話
柱が二つ立つ。
その中央にソラはいた。
その柱が同じように二つ立ち、縦にずっと続いている。
柱の色は…灰色。
ソラはただ進んでいく。
変わらない
変わらない景色。
変わらないことはなんだか…
「ルー。進んでも進んでも終わらないよー」
ルーはふよふよして
「そうだな」
の一言。
そこに、前に誰かいる。
男性だ。
後ろ姿で。
男性は後ろを向いた。
「こども…!?何してんだ?」
「いつのまにかいました!」
ソラは元気いい。
男性は横を向く。
「ここは!自分で過去をどうにかしないと出れないって言われたんだよ!」
「誰にですか?」
「知らねー。なんか美人がよ」
「へーそうなんですかー美人さん!」
男性は急に怯える。
「うわっ!なんだよ…」
何かに怯えるようにしりもちをつく。
「どうしたんですか!」
男性に駆け寄る。
男性は恐怖というより…。
指をさす。
「もう…もう、どうにもならない!でも…俺は…」
ソラには何も見えない。
そこへ女性の声がした。
「アイ。久しぶり」
茶色の長い髪の女性だ。
それは。
「お姉ちゃん!」
ソラはすぐに抱きつく。
「お姉ちゃん、何してるの?」
ソラは笑顔だ。
姉はいう。
「アイ、元気だった?」
「うん!ルーと一緒だから」
ソラはにこにことしていて、急に離れる。
ソラはまっすぐに姉を見る。
「お姉ちゃん。私はもうアイじゃないよ。ソラだよ」
「あ…ごめんね。ソラ」
ソラはうつむく。
「お姉ちゃん…」
女性は笑う。
優しく笑う。
「ソラ。あなたはここに来たけど…どうする?お姉ちゃんといる?」
「…お姉ちゃんといたいな…でも…」
ルーを見る。
「お姉ちゃんは過去だから。私は行くよ」
「私は過去か。うん、アイらしい」
「私は…過去を忘れないで行く。だからね、大好きだよ。ずーっと!ずーっと!大好き!」
ソラは続ける。
「お姉ちゃん。大好き!」
ソラは心から心から伝えた。
姉はソラの頭をなでる。
後ろを向くと、柱の向こうへと消えていく。
男性はまだしりもちをついている。
ルーが声をかける。
「お前はどうするんだ?」
「俺…は、無理だ。過去を捨てて、未来には行けない」
ルーはソラへ声をかける。
「お主は行くか?」
「うん!行く」
男性はいう。
「たしかに終わらない…でもよ、行くのか?お前は…俺は終わりたいとも思ってる…でもそれを選べない」
ソラは答えられない。
ルーが答える。
「人それぞれだ。お前はここにいるということは…見てきたんだろう。他のものたちも」
「みんな、過去を捨ててったんだよ…でも俺はできない」
「いいじゃないか。過去を捨てず進めなくても。誰でも強くない。我の主だって強いから選んだんじゃない」
ルーははっきりという。
「それしかなかったから選んだんだ」
男性は目を開く。
「お前も…それしかないんだろう?」
男性は立ち上がると、二人を見る。
「それしかなかった…か。そうかもな。過去を捨てるしかなかった奴もいて、過去にしばられるしかなかった奴とか…色々…いるよな」
男性はまっすぐな目をする。
「じゃあな」
ソラは彼の目のさみしそうな顔になぜか胸が痛んだ。
男性もきっと自分と同じ顔をしているであろうこどもの顔を見て、それでも笑う。
ソラは進み、消えていった。
彼は一人残る。
その後ろには少女がいた。
桃色の花が舞う。
「捨てていいのに。私のことなんて」
少女は笑う。
愛らしく、笑う。
男性は振り向く。
「捨てられるわけねーだろ」
男性は…やはり怯えた目でそういった。
ソラは柱のある場所で目を覚ます。
「わー!ここは!」
ルーはいう。
「戻ってきたな」
ソラは二つの柱を進む。
縦に並ぶ柱を進む。
「よーし!行くよー」
ソラは進む。
ルーも隣にいる。




