延ばす話
延ばす(のばす)
少女は、黒く長い髪を伸ばし、ベッドの上にいる。
そこで、多くの四角、三角、二角、ひし形、不思議な形の重なる模様が建物中にたくさん浮かぶ。
「あと少し、でも、最後は」
彼女は、ウサギのぬいぐるみを抱く。
「最後のために、誰か来ないかな」
彼女は体が強くない。
延命の魔法で生きている。
魔法は命を源にした。
「私は…………」
彼女は森の中、隠されるように育った。
けれど、見ていた。
誰かを遠くから。
例えば、窓から見えるのは遠くの町。
「最後のために私は。命をかけてでも何かをする人もいる」
ウサギのぬいぐるみと話す。
「私は命をかけて」
延命の魔法で生き続けた。
その魔法は強すぎて、彼女を離さない。
彼女に生きて欲しい誰かの思いが強すぎた。
「私は、千五年も長く生きた。私は………そうだ!何か書こう!えーと!紙!」
彼女は紙に何か書いていく。
“ごめんなさい。私のために命をかけてくれたのに。私は、この魔法で自分でこわします。ありがとう。私は長く生きすぎました”
延命の魔法は複雑。
魔法の公式は、難しい。
けれど彼女は感覚、直感で生きる。
模様を指で描く。
「私も、命をかけたい」
模様を必死に書く。
書く。
そこへ、声がした。
小さな少女。ソラの声。
「森の中のおうち!」
彼女は少女に少し心苦しくなる。
が、もう一人?いる。
小さな浮かぶ犬。
ルーがいる。
「わー!おうち!だね!ルー!」
彼女は階段を降りると扉を開く。
「ねえ!そこの………」
ソラと彼女は目が合う。
ソラはニコッとする。
「こんにちわです!お姉さん」
「こんにちわ。あの、お願いあるの」
ルーは静かにしてる。
ソラは建物の中へ入る。
彼女は、自分の部屋へ案内する。
ソラは質問する。
「いっぱい浮かんでるのはなんですか?」
「魔法」
「まほう?」
「あなたが来てくれてよかった」
彼女の部屋の中はベッドと棚。地味な部屋。
ベッドにはウサギのぬいぐるみ。
彼女はウサギのぬいぐるみを抱く。
「あなたは?」
「ソラです!」
「私は…………この子はウサちゃんなの」
「ウサちゃんさんですか?」
「…私のことはそうよんで」
「ウサちゃんさん。あの……入ってよかったですか?」
「うん。そういえば、あなた、町の子?」
「違います!旅してます!ルーと!」
ルーを抱く。
「抱くな」
彼女は楽しそうにする。
「動物ってしゃべるんだね」
ルーは静かに。
「話さないものもいる」
「そうなんだ…旅…泊まるところはあるの?」
ソラは自信満々に。
「ないです!」
「ここ、泊まる?私しかいないから」
ソラは彼女へ旅の話をして、楽しく時間はすぎる。
夜が来て、彼女は、もう少し、一階の扉前で魔法の模様を描いていく。
ソラは一言。
「何してるんですか?」
「魔法を書いてるの」
「わあ!いっぱいですね!寝ないんですか?」
「あと、少しなの。そうしたら寝るね」
「ここいていいですか?」
「え、でも」
ソラはウサギのぬいぐるみと待つ。
「ウサちゃんさん」
「ん?」
「ここにずっといるんですか?」
「うん、ずっとね、昔は町にいたけど、ここに来たの」
「そうなんですか。さみしくないですか?」
ソラの抱くウサギのぬいぐるみを見る。
「さみしくないよ。ずっとその子がいてくれたから」
そうして、彼女は書き終わる。
「よし、終わり」
「終わったですか!?寝れますか!?」
「うん!ありがとう待っててくれて」
彼女は、ベッドに誰かいたことはない。
ウサギのぬいぐるみはいたが。
「ソラちゃん。あったかい」
彼女はソラを抱く。
「お姉さんもあったかいです!」
「ありがとう。来てくれて。これで、私」
ソラは寝ている。
彼女はソラの頭をなで寝てしまう。
ルーは一人、一階の扉前にいた。
「………………そうか」
朝が来ると、ソラとルーは行く。
「ウサちゃんさん!行くね!」
「うん、気をつけてね」
「ウサちゃんさん!ありがとう!忘れないです!」
「うん」
ソラとルーは扉を出る。
彼女は笑って、手を振る。
「さようならソラちゃん。ルーさん」
扉を閉める。
彼女はうつむく。
ウサギを抱きしめる。
魔法は発動する。
玄関の魔法から、建物の全てにある魔法の模様へ、流れる輝き。
彼女は、階段を上る。
そして、ベッドにも魔法の模様はあり、輝きはそこまで来る。
「せめて、ベッドで寝たい。ウサちゃん。ありがとう側にいてくれて」
ベッドで倒れるようにする。
ウサギのぬいぐるみを抱いて。
「ソラちゃん。ルーさん。そして、私を生きさせてくれたあなた。ありがとう」
彼女は命をかけた相手に謝ることはせずお礼をいう。
魔法を壊すために彼女は命をかけて、書いた。
はずだった。
_______
そこへ来たのはルーだ。
飛べるし、あと気づいてたから。
ソラには忘れものといって、ここへ来た。
ルーは彼女を見つめる。
「最後は我の主にその魔法の模様を踏ませて…か?」
ルーは彼女の元へと行くと。
ウサギのぬいぐるみは彼女の胸から出てくる。
ウサギのぬいぐるみはベッドの上に座る。
そして、しゃべる。
「まったく。まただ。この魔法を壊そうとする。この魔法の本当の中心は俺なのに」
ルーはウサギのぬいぐるみを見つめる。
ルーは質問する。
「彼女をそこまでして生きさせたいか」
「当たり前だ。体が強くなくてな、俺は彼女の父に頼んだ。俺を使ってくれってな」
「なら、彼女は」
「記憶なく目を覚ます。それが一番いいことだ。自分が命がけで魔法を壊そうとすることも忘れるからな」
「続けるのか?これを」
ウサギのぬいぐるみは強い目つきでいう。
「お前だってあの子どもがこうなれば、同じことをするだろう?」
ルーは何もいえない。
が、後ろを向く。
「側にいたいか?彼女と」
ウサギのぬいぐるみは彼女の頭に手を乗せる。
ルーは続きは聞かず、いう。
「元気で」
______
ソラは戻ってきたルーを抱く。
「ルー!待ってたよ!」
「待たせてすまない」
「いいよ!行こ!」
「我は自分で」
「いっくぞー!ルー!」
ソラは、ルーを抱きしめると進む。
ソラとルーは進む。




