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僕の可愛い奥さんは……  作者: 麻沙綺
第1章 疫病と言う名の夫婦喧嘩
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コンコンコン。


慌ただしく奥さんが去った後、思考に渦に埋もれていたが扉のノックの音に中断させた。


「ユリウスです。父様、入ってもいいですか?」

子ども独特の高い声。

扉の向こう側に居るのは、愛息子。

息子は敏感に感じたにだろう。奥さんの魔力に、だから僕の所に赴いたのだろう。

「あぁ、いいよ。入っておいで。」

僕は、優しい声で息子を招き入れる。

息子がガチャと音を発てながら扉を開く。

観音開きの扉が全開になると、そこに居たには息子だけではなく下の子たちも一緒だった。

七歳の嫡男のユリウスの右側には、手を繋いで兄を放さないぞとばかりにギュッと握る三歳になる娘のアンジェらが居て、繋いで無い方の手の人差し指を口に加えてキョトンとして居て、僕と息子を交互に見ている。息子の左側には、乳母のエレナが一歳の次男キースを抱えていた。


夕食後、僕は子ども達が寝仕度に入り奥さんは、自室に戻って行ったので僕は、この執務室に籠った。で、先程の出来事だ。

三人は、お風呂から差程経ってないのだろう、顔を赤くさせている。

ユリウスが奥さんの魔力に反応して慌てて魔力に出所を探りここに来たんだろう。娘は、兄大好きっ子だから離れたくなくて引っ付いて来て、エレナは、子ども達だけの移動は危ないと思い下の子を抱いて付いて来たに過ぎないだろう。


「父様。先程、母様の魔力がこの部屋からしたのですが、母様は?」

息子はそう言いながら室内をキョロキョロとし、奥さんを探し始めた。

そんな息子に残念な言葉を僕は伝えなければならない。何て損な役割なんだ。

僕は、子ども達の傍に行き。

「母様は出て行った。と言うか、何時もの衝動ですね。」

息子には、これで通じるのだ。

嫡男のユリウスにとっては、何度も経験していることで、落ち着いて状況判断しているが、娘は。

「かあたま……。」

と口にし、瞳一杯に涙を溜めている。

母親が居ないと知って、今にも泣き出しそうだ。

下の息子は、キョトンとした顔で現状を分かっていないようだが……。

そんな最中。

「今回は、大丈夫だと思ったんですが……。」

と息子が口にした。

その言葉に、何故君が知っているのかと疑問に思うところではありますが、今はそれどころではないので見逃しますが、そのうち聞かねばなりませんね。

「僕もね、そう思っていたんだよ。もう少しで終息する処なのに、何処から聞き付けてきたのやら……。」

僕が困った様に口にすれば、息子も何やら考え込みだし。

「今日は、オーディアス侯爵家のアリア様の所で、お茶会だった筈です。そこでお耳に入れたのでは?」

って息子が奥さんの予定を把握してるなんて、我息子ながら恐ろしいです。

「アリア様か……。」

あの方は情報に長けているとは言え、少々遅れているんですよね。

「取り敢えず、この事はお爺様に連絡して、仕事が片付き次第僕は行くから、ユリウス達は大人しくお留守番しててくださいね。」

子供達だけ残して行くのは気掛かりだが、今回ばかりは連れて行くわけにも行かない。

病が終息しだしているとはいえ、流行していた場所になど連れて行きたくない。

「父様。僕は行きますよ。父様の事が心配ですから」

息子が真顔で言ってくるが、そこは "父様" ではなく "母様" ではと思いつつも。

「ユリウス。勉強と剣術の稽古はどうするのです? 特に剣術は僕よりも強くなりたいと思ってるんじゃないのかな? 稽古の一日の遅れは直ぐに取り戻す事は出来ないんだぞ。」

僕は息子を脅すように言う。

「クッ……、分かりました。僕も留守番してます。」

悔しそうな顔をし、渋々引き下がる。

息子の目標になっているのは嬉しいのだが、僕を負かしたがっているのは頂けませんね。

まぁ、何はともあれ、大人しく引き下がってくれたので褒美を上げないとですね。

「アーク兄さんを僕が留守の間、家に招いてあげますね。」

子ども達だけを置いていけないので、兄を家に呼ぶことにした。

まぁ、兄は独り身だし、喜んで受けてくれるだろう。

「本当ですか?」

半信半疑で僕に聞き返してきたが、とても嬉しそうな顔をして居て心無しか、声も弾んでいる様ですが、僕の気のせいでしょうかね。

「えぇ、兄さんもユリウスに会いたがっていましたからね。」

偶然、王宮で兄さんに会った時の事を思い出して言えば。

「やったー!! 僕、嬉しいです。」

子どもらしい仕草を見せてくれるユリウス。

ユリウスのコンな顔は久し振りに見た気がする。

普段、兄としてしっかりしないとと思ってるのか、大人びた顔ばかりしているから、余計に彼が愛しく思う。

七歳の子どもらしくしていてくれたらいいんだけどね。

まぁ、家には子どもより子どもっぽい奥さんが居るから仕方無いのかもね。

僕は、ズボンから懐中時計を取り出して時間を見れば、二十時前だった。

「ほら、三人とも寝る時間ですよ。部屋に戻りなさいね。」

僕が告げるとユリウスが背伸びをして僕の手中に有る懐中時計に目を向ける。

「本当だ。父様、お休みなさい。」

と口にし、それに続くように。

「とうたま、おやつみなたい。」

と先程まで泣きそうな顔で息子を見ていた娘のアンが言う。

「あぁ、お休み。いい夢が見れます様に。」

僕はそう言って、順番に三人の頬に軽く口付けを施すが、流石にユリウスは嫌そうな顔をしたが、下の二人が居る為に態度には出なかった。



子ども達三人が、部屋を出て行くのを見届けてから、手紙を認めた。

一通は義父である宰相閣下にもう一通は実兄にだ。


書き終え、封蝋をし執事のマルコを呼び出す。


「旦那様、お呼びでしょうか?」

恭しく頭を下げるマルコに。

「この手紙を早急にファシーラ公爵家とライラック伯爵家に出してください。」

二通の手紙を渡す。

僕が "早急" と口にした事で、優秀な執事は気付いたようで。

「賜りました。直ちに手配いたします。」

マルコはその手紙を手に足早に部屋を出て行った。

まだこの時間帯なら、手紙を受け取ってくれるだろう。


そして、机の上に山となる書類を見て減なりする。

「さて、この山の書類を片付けねば……。」

僕は溜め息一つ吐き、目の前の山を一つずつ片付け始めた。



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