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転生コンサルタントの受難 ~転生したら○○をコンサルすることになりました~  作者: 九条聖羅
第一章 転生したら孤児院をコンサルすることになりました
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8.二次元と現実は異なることを実感しました

グガァァァア


 けたたましい獣の唸り声があたりに響き渡る。そこには巨大な猫のような体に熊のような凶暴な頭ついた獣がいた。かなりの距離を走ってきた私とヴィクタルは、肩で息をしながら目の前に広がる光景を見つめる。


「くそっ!魔物か……!」


 悔しそうな顔でそう吐いたヴィクトルの言葉に、私はあれが魔物なのだと知る。


「魔物…あれが……」


 明らかに普通の生き物とは異なる風貌。見るだけでぞっとするものがある。あまりの恐ろしさに私は足がすくんだ。


「いたぞ!シモンだ!」


 ヴィクタルが指さす方に視線を辿ると、そこには魔物を見つめ動けなくなっているシモンの姿があった。勢いよく地面に倒れたのか、彼の背負っていた籠から落ちたのであろうアプルの実が数個散らばっている。魔物はシモンを見つめ、ゆっくりと彼に近づいていた。おそらく、彼を餌だと思っているのだろう。


「まずいぞ。あのままじゃあいつは食われる」


 ギリッと歯ぎしりの音がヴィクタルから聞こえる。私はそれに我に返り、咄嗟に動いた。


「……って、おい!リフィールっ!待てっ!」


 ヴィクタルの止める声を無視して、私は魔物の背後に周り、重いっきり叫んだ。


「私が相手だ!」


火炎弾(ファイヤーボール)!』


 心の中で詠唱し、魔法を発動させ、全力で魔物に向かって火の玉をぶち当てる。魔物はそれに気が付き、シモンから視線を外し、背後にいた私へと方向転換した。よし、とりあえず魔物の注意を逸らすことができた。私はそのまま、次の魔法を魔物に解き放った。




 グオォォォォ!


「リフィール……」


 魔法をくらい、怒った魔物が唸り声をあげる。思わぬ人物の登場に、シモンは驚きながら彼女の名を呼んだ。しかし、彼の声は魔物の唸り声によってかきけされる。状況について行けず放心しているとヴィクタルが近くに駆け寄って来た。


「シモン!怪我はないか?」


 そう言いながら、手を差し伸べてくるヴィクタルに、シモンは彼の手を取りながら大丈夫だと頷いた。そして、やっとの思いで立ち上がる。


「……ボクは大丈夫。でも、リフィールが……」


 そう言いながら、シモンは不安そうに魔物へ立ち向かうリフィールに視線を向けた。ヴィクタルも不安そうに彼女の姿を見つめる。しかし、それもすぐにシモンに視線を戻し、諫めるように静かに首を横に振った。


「今はあいつに任せるしかない。あいつを信じよう。それよりもおれたちはここから離れるぞ。ここにいてはあいつのじゃまになる」


 悔しそうな表情を浮かべながらそう言うヴィクタルに、シモンも悔しそうに頷いた。そして二人は離れた位置で隠れながら、リフィールの対戦を見守った。




 一方のリフィールは、火の魔法を大量に魔物に打ち込んでいたが、全く効いていないことに疑問をもっていた。


 ――不思議ね。火を浴びたら火傷くらいしそうなものだけど。


 生き物には火が効くだろうという勝手な思い込みで、炎魔法を駆使していたがどうやら違うようだ。原因を考えているうちにリフィールはあることに気が付いた。


 あ、そっか!この魔物、毛皮に火に耐性があるのかもしれない。だとしたら、他の属性がいいわね。うーん、なにがいいかしら。


 そう考えている間にも魔物はリフィールを襲ってくる。魔法で身体強化をしているリフィールには全く当たることのない攻撃だが、正直、そろそろよけるのが面倒になってきた。


 なんか面倒になってきたな。いつまでもこうしているわけにもいかないし、一気に片付けてしまいたいわね。そうだなぁ。やっぱ首をちょん切るのが一番早いわよね。よく、アニメとかでそういうシーン見かける気がするし。


 考えがまとまると、リフィールは一旦魔物から距離を取った。そして、手の平を天に向かってかざし、手に魔力を込める。すると、そこに渦巻くような風が生まれた。ある程度、風が大きくなったところで、リフィールは魔物にむかって腕を大きく振り上げる。すると、風は薄い円盤状になり回転しながら、魔物の首に一瞬で到達した。そして、そのまま魔物の首を切り裂いた。


風切り(エアカッター)


 グギャアァァァ!


 魔物の首は一瞬にして吹き飛び、あたりに血の雨が降り注ぐ。その光景にリフィールは、流石に自分の行いに引いた。


 そっか。首切ったらこうなるのか。こりゃあ、やりすぎたな。なんも考えてなかった。次はもっと穏便に済ませよう。いや、もう次があってほしくないけどね。


 首を吹き飛ばされた魔物は動かなくなり、その場で大きな音を立てながら体が崩れ落ちる。吹き飛ばされた首も重力に従って身体から少し離れたところに落ちた。


 ようやく終わった戦いにほっと一息つきながら、自分の血に染まった服をみてリフィールは固まる。いたいけな少女が返り血にまみれた姿などいただけない。なんとかならないかと思ったリフィールは、前世でみたアニメの洗浄魔法を思い出した。さっそく、それをイメージしながらやってみる。


『洗浄』


 おー!上手くいった!返り血はすっかり綺麗になり、服ももとの状態になっている。魔法って便利だなぁ!前世でアニメ見ててよかったぁ。


 実は就職してからは忙しすぎて機会は減ったが、それでもアニメや漫画を好んでいた麗羅。休日の日はとにかく家に引きこもってアニメ鑑賞や漫画鑑賞をするのがセオリーだ。まさかそれがこんな形で活かされる日が来ようとは夢にも思わなかったが。あらためて、前世の自分の行いに感謝をしたリフィールであった。


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