5.やはりここは異世界のようです
「採集?」
掃除が終わった日の翌日、みんなで朝食を取っているとヴィクタルが今日は採集に行こうと言い出した。聞きなれない言葉に私は思わず聞き返す。ちなみに、今食べているのはトウモロコシの粉をお湯で溶かして、ドロドロにしたおかゆみたいなもの。はっきり言って超まずい。だが、孤児院にはこれしかないとのことで、仕方がなく私は味覚を殺して一気に喉に流し込んでいた。
「ああ、孤児院のうらには山がある。そこで果物や動物を採集して食べ物を手にいれるんだ。神殿からはこれしかあたえられないからな」
そう言って、ヴィクタルは顔をしかめながらドロドロの液体を喉に流し込んだ。やはり、これを不味いと思うのは私だけではないようだ。
「孤児院って神殿の管轄の下運営されているのよね?勝手に外に出て大丈夫なの?」
そう、どうやらこの孤児院は神殿によって運営されているらしい。詳しい事情は分からないが、この国の宗教で神殿は孤児を養う義務があるそうだ。それに基づいて作られたのがこの孤児院らしい。とは言っても本当に最低限の衣食住を与えるものに過ぎないが。そもそもこの状態を見る限り、孤児を守ろうとする気はなく、本当に体系的にやっているにすぎないというのが現状だと思う。
「ああ。むしろ、あいつらは必要なものは自分たちで調達しろとおれたちにいってるからな。ろくな予算も物資もあたえず、生きたければ自分でなんとかしろだなんて、本当に神につかえる人間なのか、うたがわしいもんだよな」
首をかしげながらそう聞いた私の質問に、肩をすくめながらそう答えるヴィクタル。どうやら、神殿は本当に碌でもない人間の集まりらしい。
「分かった。私もこんな食事、耐えられないし、頑張って食料集める」
よし。掃除の次は食事の改善だ。そう意気込んだ私はヴィクタルにそう宣言した。
「ああ。リフィールはまほうが使えるからな。今までもそれを使ってかなりこうけんしてくれていた。たよりにしている。ああ、採集に行けるのは七歳以上の子どもだけだ。山はきけんだからな」
「え、危険なの?」
途中で聞こえた物騒な単語に私は思わず聞き返した。
「まあな。ここら辺は少ないが、魔物が出ることもある。だから、ふつうの人間は山に近づかない。近づくのはゆうしゅうな護衛をやとった林業をいとなむ人間と、あとは魔物をとうばつする騎士団くらいだ」
「……そうなんだ」
マジか……。居るのか魔物。本当にここは異世界なんだな。魔法があれば、魔物もいるなんて。
「……そんな不安そうな顔するな。今のところ、あの山で魔物が出たことはない。多分大丈夫だろう」
「う、うん……」
なんとも言えない不安を抱えながらも私はヴィクタルとともに採集へと出かけるのであった。