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転生コンサルタントの受難 ~転生したら○○をコンサルすることになりました~  作者: 九条聖羅
第一章 転生したら孤児院をコンサルすることになりました
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4.汚すぎるのでお掃除します

「とりあえず、掃除をしましょう!」


 しばらく子どもたちと話をした後、ヴィクタルに色々と話を聞いていた私はそう宣言した。突然そんなことを言い出した私にヴィクタルは怪訝な視線を送ってくる。


「……なんだいきなり」


「だって!こんな環境じゃ病気になるわ!清潔さを保つのは健康維持で重要なことよ」


 そう。とりあえず、この今にも黒い虫が湧きそうなこの汚さをなんとかしたいのだ。今のままでは、私は確実に発狂する自信がある。前世の家がとてもきれいなわけではなかったが、それでもこれと比べたらはるかにましだ。潔癖症ではない私も流石にこれは耐えられない。


 もはや命にかかわると言っても過言ではないので、私は身を乗り出しながら掃除の大切さを目の前のヴィクタルに力説した。ヴィクタルは若干引き気味に私の話を聞きながらも、渋々了承し、掃除に協力してくれることになった。


「ところで、ほうきとか雑巾とか、掃除道具ってどこにあるの?」


 私の言葉にヴィクタルは顎に手をあて考える仕草をする。


「……ほうき?ぞうきん?……道具のことはしらないが、使い方のわからないものがおいてある場所がある。もしかして、それじゃないか?」


 彼はそう言うと私をその場所まで案内してくれた。そこには確かに掃除用具が置いてあった。しかし、掃除用具と言ってもボロボロのほうきと塵取り、そしてはたきが置いていあるだけ。それ以外には何もなかった。


「……これだけか。うーん、とりあえず、あと雑巾さえあればなんとかなりそうだけど……。ねぇ、ヴィクタル。いらない布とかってない?床をふくのに使いたいんだけど…」


 私の言葉を聞いたヴィクタルは怪訝そうな顔をしながらそれに答えてくれる。


「いらない布?…そんなもんここにはないが……ああ、古くなってすてる予定の下着ならある。チビたちが成長してきられなくなったやつな」


 おお!それはいい!私も小さいころ着られなくなった下着を雑巾にして母親と一緒に掃除した記憶がある。流石に大人の下着を雑巾にするのは抵抗あるけど、子どもの下着なら真っ白なタンクトップとかだし抵抗ないからね。子どもは成長早いし、すぐに小さくなっちゃってただ捨てるのはもったいないから、掃除に利用してから捨ててたな。


「うん!それでいい!どこにあるの?」


 嬉々としてそう答える私に、ヴィクタルは苦笑いをしながら答えてくれた。


「それならとってきてやるよ。お前は先にそれをホールにもっていっておいてくれ」


「わかった。ありがとう!」


 私がホールに道具を持って戻ると子供たちは不思議そうな顔をしながら、そばに近寄ってきた。


「リフィール、それなに?」


 真っ先に私の下にやってきたセレスに対し、私は誇らしげに道具を見せた。


「じゃじゃーん!これはね、お掃除のための道具よ!今からみんなで手分けをして、お掃除をします!」


 やけにテンション高くそういう私をみんなはポカンとしながら見ている。セレスはきょとんと首をかしげながら、私に説明を促した。


「その、おそうじってなんのこと?ぼくたちはなにをすればいいの?」


 私はここでお掃除の重要性をみんなに教えるために、一生懸命説明することにした。


「お掃除はねこうやって床に落ちたごみを集めたり、床の汚れをふいたりして綺麗にすることよ。こういう汚れは病気の原因になるの。みんなが元気に過ごすために大切なことなのよ」


 私の説明をきいて、納得したのかテレスはうんうんと頷きながら言った。


「じゃあ、ぼくたちがおそうじすればみんなはびょうきにならない?」


「他の原因もあるので全く病気にならないというわけではないけれど、少なくとも今よりは少なくなると思うわ。それに、ナタリアの咳も落ち着くと思う」


 そう言って私は、今も咳き込んでいる茶髪の女の子を見た。彼女の名前はナタリア。私の一つ下の7歳の女の子。どうやらアレルギー持ちのこのようで激しい咳を頻発している。おそらくこの埃だらけの環境がいけないのだろう。かなり苦しいのか美しい琥珀色の瞳も今は閉じられている。


私はセレスにお願いして持ってきてもらったタオルを使って、ナタリアの鼻と口を軽く覆いマスクのようにした。手拭いのように薄い素材(おそらく粗末な布であるだけ)なので、そこまで息苦しくはないはずだ。


「これでしばらくは防げると思うわ。ナタリアは自分のお部屋で少し休んでいて」


 私の言葉にナタリアは静かに頷くと、咳をしながら自分の部屋へと戻っていった。


「リフィール。もってきたぞ」


 いらなくなった下着を持ってきたヴィクタルがやってきた。私はお礼を言いいながらそれを受け取ると、それをナイフでいい感じに切り裂き、雑巾として使える形にした。やはり、この孤児院は物資がかなり不足しているらしい。この下着も大分使い古されたようだった。


「じゃあ、私とヴィクタルはこれで床をはきましょう!他の子たちにはこの布を水に濡らして床を拭いてもらいます!」


 ああ!ようやくこの汚さとおさらばできる!


 私は焦る気持ちを抑えながら、子どもたちに掃除の仕方を教え、掃除を始めた。本当は拭き掃除の方が力が必要なので、私とヴィクタルでやった方がいいのだが、いかんせんここのほうきは大きいうえに、重すぎた。日本のプラスチック製の軽い箒が恋しい。個人的には竹製の箒が好きだがそんなことはどうでもいい。とにかく、この大きさでは一番年上の私たちがやるしかなかった。


 しばらくして、夢中で掃除しているうちになんとかホールは綺麗にすることができた。あのごみ屋敷のような光景が、一変して見違えるように綺麗になっている。これには彼らも驚いたようでみんな目の前の光景をぽかーんとした表情で見つめていた。


「……すごいな。ここ本当にさっきまでいたところとおなじなのか?全然ちがうぞ。床だってこんなもようが入ってるの知らなかった」


 泥だらけの床が綺麗になったことで、石の床材本来の模様がしっかりと見えるようになった。ヴィクタルはそれを驚いたように見つめながらそう言う。


「うわぁ!まるでまほうみたいだ!ここがこじいんだとはおもえないよ!すごいね!リフィール」


 はしゃぎながらそう言うテレスに、私は微笑みながら頷く。


「みんなが頑張ってくれたおかげよ。今日はここら辺にして、明日はまた別の場所を掃除しましょう!」


 こうして私たちは三日連続で掃除を行い、孤児院を徹底的に綺麗にした。三日後、孤児院は見違えるように綺麗になり、ナタリアも咳が落ち着いたようだ。みんなはそれを大いに喜んでいた。


 一方、私もようやくごみ屋敷から解放され、まともな生活に一歩近づいたことに歓喜するのであった。


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