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君と会えない一ヶ月  作者: ケイト
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9月25日 沖縄旅行

「お疲れ様です。

本日から自分のほうは友人と沖縄旅行へ行ってきます。

楽しみにしていた沖縄旅行の前に、最悪な気分になりたくないので、先日のLINEの内容には触れないでおきます」


そう彼にLINE送った数十分後、私は地上はるか数千メートル上空を飛んでいた。


飛行機は青空を真っ直ぐに進んでいく。

中部国際空港を離陸した私たちの飛行機は、2時間程度で那覇空港へ到着するだろう。

友人は飛行機窓側の席から、地上と空の融合ショーを楽しんでいた。

世界はこんなにも美しかったとはと、子供のようにはしゃいでいた。


友人も私も沖縄旅行は初めてだ。

9月末の沖縄は、台風の心配もあったが、私たちの日頃の行いが善かったのだろう、二泊三日の旅行の間、幸いにも天気にも恵まれるとの予報であった。


「飛行機はもうすぐ種子島上空です」


機内に響く客室乗務員の機内放送は地上の名所を次々とアナウンスしてくれた。

私たちはその度、首を曲げて飛行機の丸い小さな窓から一生懸命、島々を探した。


友人、永井紗弥香ながいさやかは私の大学時代からの友人だ。

同じ法学部の刑法ゼミに所属し、ともに勉学に励んだものだ。

大学を卒業後、私が地元の市役所、彼女が新聞社に入社以降も、引き続き我々の親交は深かった。



今回の沖縄旅行は彼女からの立っての願いであった。

彼女は歓声を上げて機内の天体ショーにはしゃいでいた。

自分も彼女と一緒にはしゃいではいたものの、心の奥底では例のLINEの一件が暗い影を落としていた。


飛行機は順調に沖縄への空路を進んでいく。

鹿児島の先端を越え、しばらく海が続いた後、目下にはエメラルドグリーンのオーラをまとったような島々が現れた。

サンゴ礁の砂浜を持つ沖縄の島々である。

サンゴ礁の化石から形成される沖縄の砂浜は、美しい純白色で、島をぐるりと取り囲んでいる。

それを沖縄の澄んだ青の海が被さると、島はエメラルドグリーンのオーラをまとったように、上空から眺められるのだ。

こんなに美しい島が日本の海に浮かんでいるとは。

私たちは驚嘆するばかりだった。


「まもなく当機は那覇空港に着陸します。

シートベルトの着用をお願いいたします」

機内アナウンスが流れ、私たちはその瞬間に胸躍らせた。

海上を直進する飛行機は徐々に高度を下げ、那覇空港に狙いをすませる。

窓からは、沖縄本島にミニチュアのように細かく羅列された那覇市内の街並みが広がっている。

速度を上げ、海上から那覇空港へ、進行方向左にとり、飛行機はさらに高度を下げ、街へ向かって行く。

ミニチュアのように見えた街並みの中に、広大な滑走路を持つ那覇空港が現れた。

狙いをすませた飛行機は滑走路を滑らかに滑るように、着陸した。

ドンと一回鈍い着陸の衝撃を機内に走らせた私たちの飛行機は、無事那覇空港に到着した。


沖縄に上陸したのだ。


那覇空港から、私たちは早速沖縄の暑い空気の洗礼を浴びた。

本州とは違う異国の熱気を感じる。

人々の容貌や服装、そして文化が、この島に独特の雰囲気を形成しているのだろう。


まず私たちの旅の行程は、那覇空港からレンタカーを借り、国際通りへ向かう計画だ。

慣れない道は少々渋滞していたものの、私たちなんとか無事に国際通りにたどり着いた。


雑多な店々が軒を連ね、これまた雑多な人種の観光客が通りを闊歩していた。

この1.6km程の通りの中には様々な品々があふれかえっていた。

アイスクリーム、ソーキそば、タピオカ、そして海と同じ青色の美しい魚イラブチャー、私たちは国際通りに満ちている熱気を咀嚼していった。

歩き疲れた頃、日も傾きだしていた。


私たちは予約をしていた沖縄料理の有名店へ向かうことにした。

そこで夕食を取りながら、二人の近況を報告しあおう、そして私の悩みも聞いてもらおうと思うのだ。

紗弥香なら、私と彼のことについて、的確なアドバイスをもらえることだろう。

私は異国の珍しい品々よりも、今はその助言を欲していた。


そして何より彼からの説明も…


今日私がありったけの勇気を出して彼に送ったLINEは、いまだ既読スルーされたままだった。

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