表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/76

73  エンの切れ目は子で繋ぐ

73 エン()の切れ目は子で繋ぐ


「それにしてもサーベニア」

 ボクがサーベニアお姉ちゃんとティニアお姉ちゃんに、膝枕クッションをされていたのを、うらやましそうに指をくわえて見ていた、このスラクロの町の冒険者ぼうけんしゃギルドのギルドマスターのアトフィスさんが、急に真顔になった。

 いや、本当に。

 少し前までは指をくわえて目の前を右へ左へウロウロ行ったり来たりしていたからね。

「なにかしら?」

「その精霊せいれい、サーベニアの契約精霊けいやくせいれいに見せかけているけど、実はセイルの契約精霊けいやくせいれいでしょ?」

 ギクリ!

 するど

 サーベニアお姉ちゃんの後ろにひかえるように立って、ボクを見ているカンガーゴイルのルーを見る。

「よくわかったわね。流石さすがと言っておくべきかしら」

 サーベニアお姉ちゃんもかくす気がないようで、誤魔化ごまかしもせず、あっさりと肯定こうていしてみせた。

「おめにあずかり恐悦至極きょうえつしごく

 右手を左胸あたりにあて一礼をするアトフィスさん。

 はだの色は変わっているけど、なまじ優男風やさおとこふう容姿ようしをしているので、みょうに様になってる。

 相変わらず、とぼけたしぐさをして見せるアトフィスさん。

 えないタイプの人だな。

 イメージの魔人族まひとぞくというべきだろうか?

 ティニアさんを見れば、目を丸くしておどろいた表情を浮かべてボクを見ている。

「えっ! セイルくんの……精霊せいれい

 多分、こっちが普通ふつうの反応なのだろう。

「まあ、幼児が中位級の精霊せいれい契約けいやくしているなんて知れたら、かなり大事になるもんね」

 ねえ、冒険者ぼうけんしゃギルドのギルドマスターにばれた時点で、十分マズいんじゃないの?

 僕が不安な感じでサーベニアお姉ちゃんを見つめると、サーベニアお姉ちゃんはボクに向かってやさしく微笑ほほえんだ。

「大丈夫よ。こんなだけど、信用はできるから」

 ボクの心配事はお見通しといわんばかりに、サーベニアお姉ちゃんはボクの頭をでながら言う。

「こんなだけどは心外だなあ。セイル、心配しなくていいよ。秘密ひみつにしておくから」

 こっちはいい笑顔で言ってくる。

「それからサーベニア」

「何かしら?」

「何気にこっそりレイピアこうとしないでくれるかな。これでもこの町のギルドマスターなんだから。何かあったら大変なことになるんだよ」

 サーベニアお姉ちゃん。

 レイピアいて何しようとしてたの!?

 ボクは見なかったことにしようかなと、視線をはずす。

 ボクたちのいる町のかべの下、ちょっとした広場になっている所を見下ろせば、もどってきていた冒険者達ぼうけんしゃが、思い思いに休んでいる。

 ねぎらいのき出しがおこなわれているようで、冒険者ぼうけんしゃギルドの受付嬢うけつけじょうたちが、スープらしきものを配っていた。

 その中に、ボクの知っているシャロンさんの姿もある。

「んっ?」

 あれはアンザスさんとダニエルさん。

 はじっこの方で、居辛いづらそうにおわんを手に、小さく丸まるようにしている二人の姿すがたを見つけた。

 ……。

「ねえ、アトフィスさん」

「んっ、何だいセイル」

「ちょっと、おねがいがあるんですけど」

「今回の功労者こうろうしゃのお願いか。これは聞いてあげないとだめだね」

 まだ何も言ってないんだけど、子どもの言うことだと思って、高をくくっているのかな?

 まあ、無理難題むりなんだいを言うつもりもないけど。

 でも、ちょっとはこまるかな?

「あのね。あそこにいるアンザスさんとダニエルさんを、冒険者ぼうけんしゃもどしてあげてほしいの」

「セイルくん!?」

 直接聞いたアトフィスさんより、近くで聞いていたティニアお姉ちゃんの方がおどろいている。

 まあ、そりゃあそうだよね。

 でも、アンザスさんとダニエルさん。

 選択肢せんたくし、あるいは出会いを間違えていなければ、きっと良い冒険者ぼうけんしゃになれていたと思うんだ。

 そして、それはまだ間に合うと思う。

「あの二人を……確かに冒険者資格ぼうけんしゃしかくを失っていたにもかかわらず、スラクロの町のために知らせにきて、危険きけんかえりみず、モンスタースタンピードに向かっていったことは称賛しょうさんされるべきことだけど、一度剥奪はくだつした冒険者資格ぼうけんしゃしかくを短期間でそう簡単かんたん回復かいふくさせるのは……うーん」

 冒険者ぼうけんしゃギルドのギルドマスターであるアトフィスさんが両腕りょううでを組んで考え込んでしまった。

 やっぱり、無理かな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ