70 エンgel smile
70 エンgel smile
「おじちゃん達」
「うわっ!」
「うおっ!」
ルーの中から、ボクがひょっこり顔を出すと、二人のおじちゃんも流石に驚いた後、少しだけ呆けた表情になった。
でも、すぐに元に戻る。
この辺はやはりアンザスさんとダニエルさんとは違い、経験の差というやつだろうな。
「お前、入場門の時の坊主じゃないか!?」
「なんでこんなところにいるんだ! 早く町に逃げ込め!」
怒ってはいるけど、ボクのことを思ってのことだとよく伝わってくる。
予想通り、根はやさしい人達のようだである。
そういえば、二人のおじちゃんの名前知らないや。
ボクも名前教えてないので坊主呼びだし。
でも、何で、二人が一緒にいるんだろうか?
スラクロの町への入場門の時はボクが間に入るまでは言い争っていて、一触即発なほど険悪な雰囲気の状態だったのに。
「おじちゃん達、仲直りして、仲良しさん?」
「ん、ああ、あの後、坊主に二人ともすっかり毒気を抜かれてな。少し、話をしたんだ」
「そしたら何となく気が合ってな」
半分くらいはクリアお母さんの笑顔のおかげのような気もするけど。
まっ、いっか。
仲良きことは、美しき哉。
ちなみに、武者小路 実篤の言葉ね。
「ふーん、ならよかった。それで、お願いなんだけど、あっちの二人の面倒を見てあげてくれないかな?」
ボクは後から追いついてきたアンザスさんとダニエルさんの方を指さす。
「いきなりだな。俺たちがか?」
「あいつらを? なんでだよ」
まあ、当然そういう反応をするわな。
「おじちゃん達、前にも言ったけど、強いでしょ? 強い人は弱い人を助けてあげないと」
ここで幼児スマイル!
「……」
「……」
「駄目かな?」
もう一押しの不安顔!
「えーい、分かったよ」
「なんか、子どもというか、ボウズには叶わないな」
勝った!
どやー! (幼児的ドヤ顔)
「へへっ、有難う。やっぱりボクが見込んだ通りだ」
「……はあ」
「あのなあ」
「じゃあ、ボクはちょっと行ってくるね。後はお願い」
「おいっ、! ちょっと待て!」
「何処へ行く気だ! 逃げるならあっちだぞ!」
逃げるんじゃないよ。
少しだけ、お手伝いするんだよ。
そうして魔物が固まっているところを見つけて、その中心に降り立つ。
「ルー、着地と同時にローリングテイル!」
着地と同時に、すかさずルーがグルリと一回転する。
それに合わせて、ルーのしっぽも一回転することになる。
ただ今回は、以前は破落戸とはいえ人間相手にしていた時のように、手加減して足元を狙っていたのとは違い、容赦無く、胴体辺りを手加減なしのスピードで狙い撃ち、振り抜く。
ドガッ!
バキッ!
ベシャッ!
「ギィィィッ!」
「グギャアァアァ!」
「ガアアアァアア!」
まさに、文字通り鎧袖一触だね。
どやー! (幼児的ドヤ顔)
ここいら辺にいるのは、比較的弱い魔物らしく次々とルーのしっぽに跳ね飛ばされていく。
それから、何度か同じように飛び跳ねては魔物の中心に飛び降り同じことを繰り返す。
「ルー、ローリングテイル!」
だんだん、楽しくなってきた。
「ローリングテイル!」
「ローリングテイル!」
「ローリングテイル!♪」
それにしても、前にも思ったけど、ボクって、こんなに好戦的だったかな?
跳んで、回って。
跳んで、回って。
跳んで、回って。
跳んで。
跳んで。
跳んで。
回って。
回って。
回って。
……。
つい調子に乗って何度もやっていたら……。
「酔った」




