68 救エンに出動!
68 救エンに出動!
今まさに、スラクロの町の外では人間と魔物との戦いが、あちらこちらで繰り広げられている。
ボクって、こんな光景を見ても平気でいられるほど、肝が座っていたっけ?
ふと疑問に感じた。
思い返してみれば、そんな光景を見ていても、それほど恐怖感が湧かないのは過去に、2度魔物がスニテの村に襲来した現場に居合わせたことがあるからかもしれない。
1度目は見ていることしかできなかった。
後で気持ち悪くもなったし。
2度目はルーのお腹の袋の中で守られていたことと、比較的弱い魔物のおかげで、皆を逃すために戦うことが出来た。
ただ、実際の所は自分で戦ったわけじゃないけど。
そりゃあ、今よりもっとちいさかったわけだから。
今も、十分小っちゃいけどね。
それはこっちに置いておいて。
それで、今回が3度目になるわけで、割と冷静に眼下の光景を見ることが出来ていた。
エストグィーナスお姉ちゃんの地下遺跡で、ドラゴイルのガーゴンとカンガーゴイルのルーの格闘戦? を間近で見ていたおかげかもしれない。
後考えられるのはここに転生する前に会った薄紫髪ツインテール少女神のパスティエルが、この世界の人よりは能力値を上げておいてくれると言っていた気がするので、そのおかげか?
そんな中で。
見れば、律儀にこの状況を知らせにきたスケベリーダー、まだ名前を知らないや、とダニエルさんだっけ? が冒険者達に混ざって魔物に向かっていっている。
どうでもいいけど、スケベリーダーって、何かの組織のコードネームみたい。
……恰好悪いけど。
それにしても。
あの二人。
もう冒険者じゃないだろうに
それに、冒険者だったとしてもEランクじゃなかったっけか?
無謀すぎるだろ
~ ~ ~
「コイツ、ダニエルが冒険者(冒険者)ギルドにも早く知らせておいた方がよいって提案してきたんだよ。ここには来辛かったけど、今まで世話にもなっていたし」
~ ~ ~
本当、まともに成長していれば、良い冒険者にもなれただろうに。
リーダーはスケベそうだけど。
それは置いておいて。
当人達の話からすると、田舎から出てきて、冒険者を目指そうとしたみたいだけど、地方から町にきて、初めてつるんだ連中に運がなかった口だな。
冒険者は「運も実力のうち」とは言うけれども、本当にもったいないことだ
それにしても。
だんだんあの二人、追い込まれているというか、追い込まれていないか?
何をやっているんだか?
見事に、他の冒険者達と分断されているじゃないか。
圧倒的に戦闘の経験が足りていない感じだ。
……まったく。
世話の焼ける連中だな
「行くよルー!」
そうして、ボクたちは石壁の上から飛び跳ねた。
「「セイル君!」ちゃん!」
背中側で石壁の上のクリアお母さんたちが叫んでいる。
(ごめん、ちょっと無茶するね)
心の中で謝っておく。
自分でも何やっているんだろうとは思うけど。
日本人気質よろしく、もったいないと思ってしまったのが運の尽きって奴だろうな。
それに、多分ルーとなら、あの二人よりは戦えるんじゃないかと思う。
とりあえずの方針は、あの二人を助けて、スラクロの町の中に連れ戻すことか、できなければ、冒険者の人の方に合流させるのが正しいだろうな。
ゴブリンの集団に取り囲まれつつある二人の間近まで来た。
ゴブリンは単体であれば、冒険者なら、そう手こずる相手ではないとされている。
ただ、集団になると、小賢しい知恵を持っている分、通常の魔物より厄介になるともいわれている。
「畜生! ゴブリンの分際で!」
「全然歯が立たないぞ、アンザス!」
「勢いで一緒に飛び出してきちまったが」
「やっぱり、元Eランクの俺達じゃ無理だ、」
アホか!?
いや。
アホだ!
近付くにつれ、叫ぶように話す声で聞こえてきた会話に、思わず心の中で突っ込みを入れてしまった。
勢いでモンスタースタンピードに飛び込んでいくなよ!
いくら何でも、危機管理がなってないだろ!
……カンガーゴイルのルーに乗っているとはいえ、3歳児で人を助けるためにモンスタースタンピードに飛び込んできたボクが人の事は言えないか。
それはさておき。
やっと分かった事がある。
あのコードネーム? スケベリーダー。
アンザスっていうんだ。




