65 エンgage
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ボクはルーに乗ったまま、勢い良く冒険者ギルドを飛び出して、遺跡があるという方の門を目指して走り出した。
……飛び跳ねていると言った方が正解だろうか?
まあ、細かいことは今はどっちでもいいや。
一応、ボク自身は目立たないように、以前のようにルーの袋部分を視界が効く程度に開けるようにしてもらっている。
西洋甲冑の目の部分みたいな感じかな?
一応、ルーには安全第一で急いでもらってはいる。
それでも、町中でガーゴイル、まあ、一般的にはストーンゴーレムが、大通りを飛び跳ねていたら目立って仕方ないだろうな。
その証拠に、聞き取れてはいないけど、周りからザワザワと騒ぐ声が何となく聞こえてくる。
恐らく目立っているであろう理由はもう一つある。
「セイルくーん、止まりなさーい!」
「セイルくーん、まってー!」
後ろから追いかけてくる二人の美女・美少女だ。
ルーは結構なスピードが出せるのに、流石と言うべきか、凄いというべきか、Aランク冒険者でエルフのサーベニアお姉ちゃんとCランクではあるけれど狼人族のティニアお姉ちゃんは、前世のゲームでいうところの敏捷力が高いのか、ルーのスピードに追い付けている。
ランスお父さんも結構速いけど、二人ほどじゃない。
ボルファスおじちゃんは、足を負傷して冒険者をメインにすることが出来なくなったみたいなので仕方ないし。
クリアお母さんはBランク冒険者だけど、まあ魔術師なので、その、あれだ……。
まあ、追々来るだろうからいいや。
考えているうちに門が見えてきた。
あの元冒険者のリーダーとダニエルが急いで知らせたおかげか、ちょうど門を閉めようとしているところだった。
たぶん、その時検査なしに入った来訪者たちが門の前に犇めいている。
そういえば、まだあのスケベリーダーの名前知らなかったっけ。
「何だあれは!?」
「もうすでに魔物が入り込んでいるのか!!」
魔物じゃないよ。
ルーを見て叫んでいるけど、勘違いするなというのが難しいのかもしれない。
だけれども、ルーは中位の精霊だからね。
「確認! 魔物襲来!」
「急いで門を閉めよ! これ以上魔物を中に入れるな!」
「領主様に連絡! 応援を要請しろ!」
……。
もういいや。
都合がいいし、勘違いさせたままにしておこう。
でも、反応が早いということはどうやらあの元冒険者のおじさんのいう事をちゃんと聞いてくれていて、門の警備の人が様子を見に行ってくれたみたいだね。
ちなみに、遺跡のある門はボクたちが入ってきた門とは反対側に位置している。
この数日間であちこち行っていたので、大体の場所の位置関係は脳内マッピング(ネットスーパーの能力じゃないよ)で把握しているつもりだ。
ちなみに、ネットスーパーのウインドウには店舗情報の項目があった。
絶対、消し忘れだよな。
中のマップやアクセス方法は消してあったのに。
あれだな。
フォルダ整理する時みたいに、中を一つ一つ確認して消していて、だんだん面倒になってきたってところだな。
リンク外しただけとか。
それにしても、おかしいな?
普通に考えると、遺跡が発見されて、中に魔物もいるのが分かっているのであれば、騎士なり冒険者なりが見張り兼警備をしていてしかるべきだとおもうんだけど。
あのおじちゃん達が来て、そういった人たちの伝令役が来てないという事は……あまり考えたくはないけど、遺跡付近にいた人は皆、犠牲になったと考えるのが自然だろうな。
とりあえず、外の様子を確認できるように、石塀の上に飛び上がる。
上も弓兵が配置できるくらいの幅の広さがあるので、ルーでも十分に着地することが出来た。
もし、塀の上に弓兵が配置されていたら、狙われていたかもしれない。
幸い、石塀の上にはまだ弓兵は配置されていなかったみたいで、問題なく着地することが出来た。
まあ、昔は戦場だったみたいだけど、今は平和な場所だし、普段は戦争状態でもなければいないんだろうな。
遠くまで良く見える
少し遅れて、サーベニアお姉ちゃんとティニアお姉ちゃんが両側に飛び上がってきた。
本当、二人ともすごい運動神経をしている。
ラドンツの町の周りを囲む壁は昔、この辺りで大きな戦争があったらしくかなり頑丈で高い。
5マトルぐらいだろうか?
ああ、「マトル」っていうのはここの世界での長さの単位の一つね
1マトルが感覚だけど前の世界の1メートルくらいと考えて良いみたい。
ただ、縮尺が前の世界と同じかは分からないけどね。
ガリバーのお話みたいに大きかったり小さかったりする世界が標準だと、比べようもないし。
そんな高さの所を、サーベニアお姉ちゃんは風の精霊の力を借りて、ティニアお姉ちゃんはその運動神経で、駆けあがるように昇ってきた。
「もう、セイルくん、ダメでしょ。危ないことしたらクリアが心配するでしょ」
「ふう、やっと追い付いた」
「それよりも、あれ見てよ」
ボクが、ルーの袋を少し開いてもらい、そこから少し身を乗り出して指さした方向にはたくさんの魔物が群れを成していた。




