表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/76

61  エン着

61 エン()


 ボクとサーベニアお姉ちゃんとティニアさんが、路地のおく破落戸ごろつきの集団にからまれている。

 相手はどいつもこいつも、女子供に20人くらいでかかれば、何とでもなるというような表情で、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)な表情をしているヤツらばかりだ。

 予想通りの展開と状況だけど、物凄ものすご~く、感じが悪い!

 で、そんなヤツらがボクたちにおそい掛かろうとしている矢先に、そのさらに後ろ、入ってきた路地の方から、あらかじめ簡単に打ち合わせをしておいたクリアお母さんとランスお父さんとボルファスおじちゃんがあらわれた。

 ちなみに何でこんな地元の連中しか分からないような入り組んだ路地裏にクリアお母さんたちが後から時間差で合流できたかというと、からくりは単純で、クリアお母さんがっこしているミニサイズのルーのおかげである。

 ルーはボクと繋がっているためボクの位置が分かるらしい。

 「らしい」というのは直接聞いたわけではなく、土の上位精霊であるエストグィーナスお姉ちゃんが教えてくれたからだ。

 ボク自身は近くにいれば感じることは出来るんだけど、離れてしまうと分からなくなるので、まあ、そうなんだとくらいに思っている。

「怯むな! 増えても男は二人だけだ。しかも女はどれも上玉と来てる。数で押せば問題ない!」

「小僧を人質ひとじちに取ってしまえば、身動きも取れないだろうよ」

 その言葉を聞いて赤ずきんちゃん、ティニアさんがボクをティニアさんの後ろへとかばうようにかまえて立つ。

 本当、良い子だなあ。

 こんな幼児に、そんな風に思われているとは思わないだろうけど。

 それにしても。

 ほうほう。

 ボクがこの場の弱点ウイークポイントだと。

 その判断は間違ってはいないけどね。

 でもね。

 (ルー、おいで)

 ボクは心の中で語り掛ける。

 すると、ルーはそっとクリアお母さんのっこしていた腕の中から抜け出して地面へと溶け込んでいった。

 そして、ティニアさんの横にいつもの大きさで現れると、僕をいつものように袋の中に乗せてくれた。

 これには破落戸ごろつき達も驚いたようだ。

「なんだあれは!」

「おい、ジック、こんなの聞いてねえぞ」

「ばかな! エルフの女は何もした様子はなかったぞ!」

 そりゃあそうだよ。

 ルーと繋がっているのはボクだからね。

ひるむんじゃあねえ! 数でめて、あのエルフの姉ちゃんをおさえ込んじまえば、あの変なのも消えちまうに違いない!」

 だ~か~ら、変なの言うな!

 それから、その考えはハズレ。

 それにしても、さっきからサーベニアお姉ちゃんが静かだな。

 ここにおびき寄せて、破落戸ごろつきに出てくるように声をかけてからは全くもって動きがない。

 Aランク冒険者ぼうけんしゃであるサーベニアお姉ちゃんが、わざわざ相手をするまでもないヤツらってことなんだろうか?

 う~ん。

 それじゃあ、サーベニアお姉ちゃんのわりに、ボクが動くとしますかね。

「行くよルー!」

 ボクとルーはね上がり、ちょうど破落戸ごろつき達の中央辺りに着地しようとする。

「おわっ!」

「ひっ!」

 そのあたりにいた男達が慌ててその場からヘッドスライディングよろしく飛び退く。

 おうおう、なかなか良い反応だ。

「ルー、ローリングテイル!」

 着地と同時に、すかさずルーがグルリと一回転する。

 それに合わせて、ルーのしっぽも一回転することになる。

 ちなみに技の名前はボクが付けた。

「どわっ!」

「うぎゃああ!」

「ぐげっ!」

 ちょっとした広場とはいえ、この狭い路地でルーが一回転すれば、そこそこ長い範囲はんい射程内しゃていないおさまることになる。

 まあ、足払いするように低い位置で回転させるように伝えたから

 ベキッ!


「足が!」

 後で青たんになるくらいだと思うけど、


 ボキッ!


「いてえ!」


 まっ、まあ、多少は打ち身とか、打撲とかとかになるかもだけど。


 バキッ!


「ぐあああ! 足が、足の骨が折れた!」

 ……やりすぎたかな?

 考えれば、ルーは石造りだもんね。

 ははっ。

 んで、

 ボクが破落戸ごろつき達の真ん中に入って、文字通り? 5・6人蹴散けちらしたことで、破落戸ならずもの達も二手ふたてに分断される形になった。

 こうなると、数の優位が機能しなくなり、元々の冒険者ぼうけんしゃとしてのランクの高いうちの家族の敵じゃなかった

 クリアお母さん側は何も心配がないようだ。

 ランスお父さんとボルファスおじちゃんが問題なく気絶させていっている。

 何気に、クリアお母さんも魔法のつえなぐっている気がするんだけど。

 魔法を使おうよ魔術師さん。

 とりあえず、見なかったことにしておこう。

 ボクの今後の精神衛生上のために。

 ティニアお姉さんも、Cランクというだけあってかなり強いみたいだ。

 どうやら、ゲームでいうところの職業は格闘家かくとうかのようで、素手すでで相手をなぐるわ、スカートなのにハイキックをかますわで、物凄ものすごあばれようだった。

 そして、サーベニアお姉ちゃんは……。

「セイルくんを人買いに売るぅ……人質にとるですって!!!」

 ……大人しいかと思っていれば、静かに怒りをめていたみたいだ。

「なんだ? あの女エルフ」

 おもむろに腰に下がっているレイピアをいて、ゆっくりと男達に近づいていく。

「ちょっ、ちょっと、ヤバくねえか、あの目付き」

 ゲージMAXマックスって感じで、背後にいかりオーラが見えるようだし。

「まっ、待て! 話し合おう」

 格闘ゲームならここで超必殺技が出せるようになるところだな。

「うぎゃあああっ!」

 ……ご愁傷様しゅうしょうさま

 あっ、きっちり殺してはいないからね。

 とりあえず、流石さすがはAランク冒険者ぼうけんしゃとだけ言っておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ