表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/76

60  エン望 (えんぼう)

60 怨望 (えんぼう)


 ざっと見渡してみても20人は軽く越えているだろうか?

 路地裏を知りくしているらしく、そこそこ広い空間になっている広場に、あちこちからぞろぞろと男達があらわれてきた。

 この辺を縄張なわばりにしている破落戸ごろつき連中といったところだろう。

 路地裏生活のせいか、身なりはあまりよくない。

 薄汚うすよごれた感じがした。

 手には思い思いの武器らしきものを持っている。

 よく見れば、先ほどの冒険者ぼうけんしゃギルドで見た男達がじっていた。

 まあ、ボクもある程度予想はしていたので、心構こころがまえは出来ていたけどさ。

 みずからの素行の悪さから冒険者資格ぼうけんしゃしかくをはくはくだつされたことによる逆恨さかうらみからの仕返し。

 ボクたちがバラバラに行動するのを待って、女子供の方をねらう。

 お約束も良いところだね。

「ちっ、バレていやがったのか。と、言いたいところだが、あんたら、それなりにやるようだからな。バレてて当然だろうよ」

 元冒険者もとぼうけんしゃだった男の一人がてるように言い放つ。

「それはどうも。わざわざ時間を作ってあげたんだから、これで全部かしら? めんどくさいのよね、ちまちまと突っかかってこられるのをいちいち対応するのは。この後ゆっくり買い物もしたいしね」

 うわあ、サーベニアお姉ちゃん、大雑把おおざっぱな性格だとは思っていたけど、こういうところも大雑把おおざっぱなのか。

 しかもあおりまくってるし。

 あと、今までのは買い物じゃなかったのか?

 まだこれから回るってことだよね。

 むしろ、この後が本番!?

 はっ!

 しまった!

 前世の妹双子姉妹に買い物で振り回されていた教訓を忘れてた!

「あたしもその意見には賛成よ。意外と気が合いそうねって、あれ? あたしのお尻を触ったヤツはいないみたいね」

 こっちもかい! ……そういわれてみれば、いないね。

 もう一人というのは存在感がうすかったのか、記憶に残っていないけど。

「ああ、もう冒険者ぼうけんしゃでのパーティーじゃなくなったからな。元リーダーともう一人は分かれたぜ」

「方向性の違いってヤツだ」

 バンドの解散かいさん理由か!

「ふ~ん。どうでもいいわ」

 サーベニアお姉ちゃんは心の底から興味きょうみなさそうな態度の反応をしてみせた。

 わあ、サーベニアお姉ちゃん、あおってるあおってる。

 この世界でも、エルフってクールなイメージがある分、相手は馬鹿にされたような印象を受けることになるんだよな。

 よし! ちょっとだけボクも参加してみよう。

「つまりはさっきの連中の3人とその仲間たちと言う訳だね」

「わあ、セイルちゃん、その年で計算が出来るなんて! かしこい!」

 こっちはこっちでボクにキラキラとした目を向けてるし。

 二人ともマイペース過ぎやしませんか?

 まあ、ボクも人の事は言えないかもしれないけれど。

「俺たちをオマケあつかいしてんじゃねえぞ小僧!」

 元冒険者もとぼうけんしゃだった連中の仲間らしき男達の中の一人が威嚇いかくしてくる。

「なに、幼児にいきがってんのよ。あんた、バッカじゃないの? ねえ、セイルちゃん」

 ティニアさんはボクに賛同さんどうを求めるように可愛らしく首を大きくかたむけて聞いてくる。

 本当、表情の豊かなだなあ。

 でも、それも十分(あお)っているからね。

「このアマ!」

めてんのか!」

める訳ないでしょ。きたならしいそんな顔」

「このアマ、本当に俺様のモノめさせてやる!」

「幼児がいる所で何てこと口走ってんのよこの馬鹿!」

 別にいいけど。

 前世20歳半ばまで生きてた記憶はあるし。

 それなりだから。

 あと、先にあおったのティニアさんだよね。

「お子ちゃまが分かるワケないだろうが」

 分かってるんだなあ、これが。

「そういう問題と意味じゃないわよ!」

「それともあんたが教えたのか? 俺達にも教えてもらいたいもんだねえ」

 ニヤニヤした顔で一人の男がたずねる。

「コイツッ!」

 赤頭巾ちゃんが赤く、いや、ティニアさんが怒気をあらわにした。

「無駄話をしていても意味がねえだろう。それにエルフの姉ちゃんにあのへんてこなゴーレムを出される前におさえねえと」

 へんてこ言うな!

「そうだな。さっさと大人しくさせて、お楽しみと行こうぜ」

「どっちも上玉だしな」

「幼児はどうするよ」

「後で人買いにでも売り飛ばせばいいだろうよ。そこそこととのった顔立ちだし、きっと高く売れるぜ」

 男達が空き地をかこむように位置を取りつつ、逃げ場をふさぐように間合いをめてくる。

「安心して、あんな奴ら、セイルちゃんにはあたしが指一本だってれさせないからね」

 そういってティニアさんはボクを後ろにかくす。

 サーベニアお姉ちゃんはさっきからその場から動いていない。

 ジリジリと男達との間合いがまっていく。

「はい、そこまで!」

 路地のボクたちが来た方の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 曲がりくねった路地のせいで日の当たらない暗がりからあらわれたのはクリアお母さんとランスお父さんとボルファスさんだった。

 と言うか、予定通りだね。

 あっ、あとミニチュアのルーもね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ