6 機エン
6 機エン
* * *
『本日の獲得ポイント』
8 ポイント
《戦いはまだ始まったばかりだ!》 《今日のところはここまでにしておいてやる!》
* * *
ふう。ボクは《今日のところはここまでにしておいてやる!》のボタンを押して今日の成果を確定させた。
あれから、ボクは頭を冷やし、一回のチャレンジに際して、3連勝したら止めておくというルールを自分に課すことにした。
何を弱気なと他人が聞けば思うかもしれないけど、もともとボクにギャンブルの才能はないって自覚してるし、実際この数か月で思い知らされました。
前世でもメダルコーナーのダブルアップって3回くらいは意外といけるんだけど、それ以降は難しくなるんだよな。
大体、そのメダルゲームだって、たまに大勝ちしても、何やかんやで最終的には0になってるわけだし。
と言う訳で、そこそこ地道が一番!
これくらいならまあ、一日1ポイントだけよりは期間を短縮できるし、負けた時の精神的ダメージが少なくて済むし、その結果のめり込んで熱くなることも無くなるから……。
結果、今の状況はこんな感じ。
* * *
『現在の獲得ポイント』
242 ポイント
《OK》
* * *
あれから、更に一か月以上たっているのにこんなもんかと思うかもしれないけど、3連勝するのだって、6・7回に1回ってところだから、こんなもんなんだよ。
それでも、1日1ポイントずつ地道に貯めて行く方法よりは、同じ期間で1割から2割増しで貯まってはいるんだから、少しは目標としている5000ポイントを貯める期間を短縮する事が出来る様になったはず。
……10年位で貯まると良いなあ。
◇
それから数か月の月日が経った。
ボクに更なる進歩が有りました。
それは、
なんと!
這い這いが出来るようになりました!
どやー! (赤ちゃん的ドヤ顔)
……。
……。
……。
それだけか? って声が何処からか聞こえてきそうだけど、それだけだぞ。
赤ちゃんの大いなる進歩です。喜んで良いよね。
現にクリア母さんとランス父さんは物凄く喜んでくれたぞ。
「村の子たちよりも大分早いんじゃないかしら!」
「うちの子天才かもしれないぞ!」
的な喜び方をしてちょっとした御馳走を用意してお祝いしていたし……ボクはまだ食べられないけど。ようやっと柔らかい離乳食的な物だし。
とにかくだ。
二足歩行の夢も近い!
よし! そろそろ次の段階に進んでも良い頃合いだろう。
と、言う訳で、ボクは次の段階にレベルアップすることにしてみた。別に数値化して見える訳じゃあないけどね。
「ま……ほ……う!」
ボクは授乳が終わった後、意を決して、以前クリア母さんがランス父さんと話していた魔法について情報を手に入れようと、その言葉を口にしてみることにした。
いままでは前世妹たちがよく病室に持って来てくれていたラノベで出てきていた赤ちゃんの頃から流暢に会話しているシーンを避け、極力普通? の赤ちゃんを心掛けてきたんだけど。
けど、そろそろ少しずつレベルアップしても良い頃合いだと思う。
それでも、ゆっくり少しずつの上達を心掛けてだ。
急激に流暢に話し始めたらやっぱり気味悪いだろうしね。
気味悪がられて森に捨てられるとか本気でシャレにならない。できれば勘弁願いたい。
「んっ? セイルくん。どうしたの?」
「ク……リア……お母さん……ま……ほう!」
直接見た訳じゃないから、正確には クリア母さんが魔法が使えるかはまだ分からない。
只、これに関しては二人の会話の中で、クリア母さんの今までの口ぶりから、かなり確率は高いと思っている。両親揃って冒険者をしていたと言う話だし。
なので聞くだけ聞いてみようと思った。
「まほう? ああ、魔法の事ね。セイルくん魔法の意味分かるのかしら? それともただ覚えちゃっただけなのかしらね?」
いや、違います!
ただ適当に単語を覚えただけじゃありません!
まずい、このままではスルーされてしまう。ボクは必死に見せてくれとアピールした。見せてくれと言っても別のものと勘違いするなよ! 魔法だからな。そっちは毎日何度も見せてもらってるし。
「ま……ほう……まほう」
ボクは両手を前に突き出し、目一杯に魔法を見せてほしいとアピールする。
「そんなに見たいの? うん、いいわよ。セイルくん、ちょっと待っててね」
クリア母さんはそう言うとボクを毛布の上に置くと部屋から出て言った。
よし! 成功だ。……ちゃんと伝わったよね。
しばらくして、クリア母さんは上部に綺麗な宝石の付いた木の杖を手に持ち部屋へと戻ってきた。
おおっ、あれこそは本物の魔法少女が持つ魔法のバト……杖! 思わず魔法少女と言ってしまったが、クリア母さんは見た目二十歳前後くらいだから、まあ、ギリギリ問題ない事にしておこう。うん。
「セイルくん、お待たせ」
そう言って、ボクの傍の椅子に腰かけると杖を左手に持ち、右手の掌を胸元の前あたりに上に向けて掲げ、何やら少し集中してから詠唱らしきものを始めた。
「我が手に集いて光と成れ。ライトボール」
次の瞬間、クリア母さんの右の掌に何かが集まったような気がして、その直後にポワッと光の玉が現われた。
おおっ! すげえ! 本物だ!
ボクはキャッキャと喜び両手を光の玉へと一生懸命伸ばした。
「んっ? 触ってみたいの? 危なくは無いけど。セイルくんは好奇心旺盛だね。はい」
そう言ってクリア母さんはボクの手の届く位置まで右の掌を近づけてくれた。
それと同時に右の掌の上に浮かんでいる光の玉も一緒にボクの方へとフヨフヨと近付いてくる。
なんかおもしろい。
ボクは手を目一杯伸ばし、光の玉に触れてみる。
だが、素通りするばかりで掴むことはできない。
何かが有る様な気はするんだけどな。
この感覚がよくラノベで出て来るマナとか魔素とか言いわれる魔法的エネルギーなのだろうか?
ひとしきり光の玉に触れ……られなかったけど、その後、ボクはクリア母さんが左手に握っている杖に手を伸ばそうとした。
次に杖を持って見たいとアピール。
「んっ、今度は杖に触ってみたいの? 本当にセイルは好奇心旺盛ね。やっぱり私達の子ね」
「そうだな。将来は冒険者になりたいなんて言い出しそうだな」
うん、正直なってみたい! 男の子ですもの!
「ふふふ、そうね。早めに教えてみましょうか?」
そうそう。早いうちからの教育プランには学資保険をお勧めって、違うわ!
一人でボケてどうする?っていうか職業病か?
そんな心のセルフボケ突っ込みをしていると、微笑みながらクリアお母さんは左手の杖を近づけて触らせてくれた。
流石に一人でもつのは無理なので杖に触れるだけにしてみる。
シンプルなデザインの杖だ。
握りの部分に触れてみた。何の変哲もない木の様に見える。そこに幾つかの宝石? の様に綺麗な石の様な物がはめ込まれている。
んっ、?何だろう? 今のは?
何か微弱だけど感覚があった様な気がする。
もしかしてこれは、
静電気?
って、だから自分でボケてどうする!
これは多分、魔力の感覚ってやつだよな。
この感覚を身に付けられるよう今のうちから鍛えて行けば、普通の人間よりも魔法の扱いに長けることが出来る可能性が……確か前世、妹たちが病室に持って来てくれたラノベの本の中に魔力を赤ちゃんの時から鍛える方法があったような気がするんだけど……。
ボクが思考の海に沈もうとしたとき、
「セイル、お父さんの剣技も見たくないか? みたいよな! よしっ!」
そう言うとランスお父さんは何時の間にやら持って来ていた剣を鞘から抜いて軽く振り始めていた。
おおっ! こちらも本物の剣だ!
一気に意識が剣に向く。男の子ですもの。
やっぱ、振ってみたいよね。
ボクはまたもキャッキャと喜び両手を剣へと一生懸命伸ばした。
それに気をよくしてかランスお父さんは何か剣の型の様な事を始め出した。
スピードや力強さが徐々に増していき、ヒュンヒュンという音が室内にし始める。
すると、
「何やってるのランス、家の中で剣を振り回さないでよ!」
クリアお母さんに怒られた。
「だってさあ、クリア。俺だってセイルに良いとこ見せたいじゃないか」
「だからって、危ないでしょ! セイルくんに当たったらどうするのよ」
この後、ランスお父さんはクリアお母さんに思いっきり怒られていた。
こうやって世のお父さんの威厳は下がって行くんだろうなあとしみじみ思ったよ、うん。