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53 エン技

53 エン()


 花売りらしき女の子と、5人ほどの男達が、連れ立って路地の細い道へと入っていくのが見えた。

 一瞬見えた、一緒にいた女の子の表情が、どうにも浮かない感じがして、その事が気になり、ボクはこっそりと後をつけてみることにしたんだけど、案の定、おどされたか何かで無理やり連れてこられたみたいだった。

 その途中、僕は普段はボクの傍にいるけど、姿を現わさないで地面の中にいる土の中位精霊のルーに呼びかけて、男達に気付かれないようにカンガーゴイルの形を取ってもらった。

 そうして、ボクも袋の中に入り、覗き穴くらいの隙間すきまを作ってもらい男達からは見えないように隠れるような形で観察していたんだけど、直感が当ったようで、助けるべく男達の背後に姿を現わしたんだ。

 流石さすがは土の中位精霊のルーだけあって、女の子しか見ていなかった男達の背後を取るのなんて簡単だったみたいなんだけど、思いのほか、男がおどろいてしまった。

 その声に、残りの女の子しか見ていなかった男達もこちらを見たようだ。

 僕はルーのお腹の袋型の乗り場にかくれて良くは見えないけれど、ルーが少しだけのぞき穴を作ってくれていたので多少の状況は把握はあくできた。

 でもまずいな。

 あんまりさわがれると、他の人が来ちゃうし。

「何だこれは?」

「ストーンゴーレムか!」

「なんでこんなところに」

「ダンジョンスタンピードが起きたなんて話は聞いてねえぞ!」

「そんなもんが起きてたら町中が大騒ぎだろうがよ!」

「それより先に門が騒ぎになるだろうが!」

「そんなことはどうでもいい。何でこんな所に奇妙な形のストーンゴーレムがいるってことだろうがよ!」

奇妙きみょうな言うな。カンガルーを知らんのか? カンガルーを。この世界にもいるんだろうが)

 この辺じゃ、見たことはないんだろうけど。

 それにしても、大分男達はパニクっているみたいだな。

 じゃあ、このすきに。

(やっちゃえルー!)

 あっ、一応、殺さない程度にね。

 ルーのこぶしかたさでなぐったら、当たり所が悪ければ人なんて簡単に死ぬから。

 お腹とか腕とか足をねらってね。

 ベストは気絶。

 ベターは行動不能で、その場に放置。


 ドカッ! バキ! ドゴッ!


「うぎゃああっ!」

「うげっ!」

「ごほっ!」

「うがっ!」

「げふっ!」


 よし! 全員気絶……させたと思う。

 そういうことにしておこう。

 ボクの情操教育と精神衛生上。

 流石さすがは日々、ドラゴイルのガーゴンとスパーリング? でトレーニング? を積んできただけのことはあるね。

 あっという間に5人の男達をしてしまったよ。

 精霊魔法はどうした? 精霊魔法は? とは聞かないで。

 終わってから思い出したんだから。

 って、いうより、エストグィーナスお姉ちゃんから、精霊魔法は契約者の力をもらって行使するから、ボクには負担がまだ大きすぎるだろうということで、あまり使ってはいけないと、詳しくは教えてもらっていないんだ。

 ルーと一緒に育ちなさいということらしい。

 でも、このままだとルーは格闘精霊一直線なルートしか見えてこないんだよね。

 はは。

 おっと、脱線。

 そうしてから、呆気あっけに取られている赤ずきんちゃん、じゃなかった、女の子の方を向く。

「ひっ!」

 ルーが振り向いた瞬間、女の子は小さな悲鳴を上げて、一歩後ろに下がろうとして、再び壁に背中がぶつかり、その拍子で手に持っていたかごを地面に落としてしまった。

 あちゃー、驚かしてしまったか。

 こわくないよと、顔の前で右手をる仕草をルーにさせる。

 今更手遅れだけど。

 変わらず、女の子は両腕で両肩をかかふるえているようだ。

 やっぱダメか。

 しょうがないなあ。

「ばあっ!」

 ボクは隠れられるように変形させていたルーのお腹の袋を開いてもらって、その中からいないいないばーよろしく飛び出した。

「きゃっ!! ……えっ!? 幼児(子ども)?」

「お姉ちゃん、大丈夫? あっ、これ、コワくないからね」

「えっ!? えっ!? 中から? キミが助けてくれたの?」

「う~ん、助けようと思ったのはボクだけど、実際に助けたのはこのカンガーゴイルのルーだよ」

「カンガーゴイル?? なっ、なんでそんな危険な真似をして」

 うんうん、思った通りいい子だね。

 自分もこわかった状況だろうに、ボクの心配をしてくれるなんて。

 こういう時の台詞(セリフ)はこれか!

「ボクにもキミくらいの妹が二人いてね」

 ボクはハードボイルドに、自分の顔に右手を当てて影を作る。

 って、それは前世の話か。

「は?」

 アチャー、ポカンとされてしまった。

 なんともやりきれないがその場を支配する。

 そこに。


「セイル~!」

「セイルく~ん!」


 遠くで、というか大通りの方でボクのことを呼ぶ声がする。

 あれはボルファスおじちゃんとクリアお母さんの声だな。

 どうやら、ボクがいなくなったことに気が付いて探し始めたようだ。

(あっ、ヤッベッ)

 早く戻らないと。

「あのお」

 ようやく落ち着きを取り戻してきたらしい女の子が声をかけようとしてくる。

「あ、ボク急いでいるから行くね。そうだ! これ、食べかけだけど、ボク、食べきれないからあげるね」

 そういって手に持っていたデビルロブスターの身の刺さった串焼きを女の子に渡しす。

 まだ、3個ほど残っている。

 女の子は呆気に取られていたようで、何が何だか分からないといった感じで、その場の空気で受け取ってくれ。

 と、言うか、どさくさに紛れて押し付けてきた。

 ボクはその場をルーに乗って素早く離脱りだつすると、人気のないところでルーには地面に戻ってもらい、自分は路地から人ごみにまぎれ、昔の巨大変身ヒーローの終盤よろしくランスお父さんたちの方に走っていった。

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