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52 エン笑小話 (えんしょうこばなし)

52 エン()笑小話 (えんしょうこばなし)


「セイル君、はい。暑いから気を付けてね。それと、迷子にならないように私たちから離れてはダメよ」

 クリアお母さんがボクの視線の高さに合わせてしゃがんで、デビルロブスターの身が5つさった串焼くしやきを一本、ボクに手渡してくれながら、そう注意した。

 ボクは一つ一つの身が結構大きい串焼くしやきを手に取る。

 最近では徐々(じょじょ)に大分普通の食事もとれるようになってきた。

 旅が人を成長させたといえる。

 成長(いちじる)しいね。

 どやー! (幼児的ドヤ顔)

「あいっ! クリアお母さん」

 本当、手に取ると良く分かるけど、サーベニアお姉ちゃんが狩ったからか、店のおじさんがオマケしてくれたのか、結構大きな身の串焼きを選んでくれたようで、食べ応えがありそうだ。

 というか、正直ボクには多すぎるぐらい。

 身の部分が適当な大きさに切られていて、それが5つほど串にささっているんだけど、今の僕だと、3つも食べればお腹いっぱいになりそうだ。

 多分、食べる客の基準が、冒険者や一般の労働者を基準にしているからだろうね。

 で、食べてみる。

 おおっ、エビの味だ!

 このプリプリとした食感と味がたまらない。

 調味料はかかってないけど、海産物は、このほんのりとした塩気と、いその香りで十分美味しい。

 焼いているおじちゃんの後ろにあるデビルロブスターの残骸ざんがい、というかいたからはゴツくて大きくて凶悪そうなのにね。

 まあ、エビとかカニとかはそんなもんだろうけど。

 あれもお客さんを引き付けるためのオブジェみたいなものなんだろうか?

 なんか逆効果で、子どもには近寄りがたい気がするんだけど。

 まず間違いなく泣き出すよね。

 まあ、この辺りにいるのは冒険者を中心にした大人達ばかりなので、その辺は気にしなくてもいいのかもしれない。

 そうだ。

 折角市場に来ているのだから、ボルファスおじちゃんの所だけじゃ見ることのできない物の値段でも見ながらというか、聞きながら行きますか。

 この世界での識字率は正確には分からないけど、あまり高くないと予想される。

 まあ、前世の日本の識字率が異様に高いわけで、その中で暮らしていたボクにとってみるとかなり低く感じるという事なんだけど。

 今まではBランクの冒険者のランスお父さんとクリアお母さん、長い時間を生きて、いろいろ知っている上位精霊のエストグィーナスお姉ちゃん、ケスバ村で、雑貨店のような店をいとなんでいるボルファスおじちゃん、Aランク冒険者で長寿のエルフ族のサーベニアお姉ちゃんという大人達に囲まれていたから気付きにくかったけど。

 だから、皆読み書きができるんだよね。

 そう考えると、ボクの周りの環境はとても恵まれている環境である。

 で、ここの場合、値付とかはほとんどされておらず、「一個いくらいくら」というようにあちこちで声を張り上げて値段を言っているんだよね。

 さてと、それじゃあ食べながら品物と値段を見てまわろうと思う。

 その前に、ボクのネットスーパーの能力の現状確認。

 現在はこんな感じ。


   *   *   *


   『現在の獲得ポイント』


     2214 ポイント


   《OK》


   *   *   *


 まあ、順調といえる。

 それで、この串焼くしやきが一本大銅貨1枚。

 あっ、この世界の通貨は、銅貨 < 大銅貨 < 銀貨 < 大銀貨 < 金貨 < 大金貨 < 白金貨 なのだそうだ。

 それぞれ10枚で上の通貨に変わる。

 これはボルファスおじちゃんの店の手伝いをしているときに教わった。

 その時は金貨までしか見ることはできなかったけど。

 ザックリだけど、さっきのオレカンとかアプンゴとかの果物や野菜系等も、大体1個大銅貨1枚前後といったところだろうか。

 物価は、その国々の物の需要じゅよう供給きょうきゅう具合で、かなり違いが出る。

 ましてや異世界であればなおさらだろう。

だから、一概いちがいに前世と比較するのは難しいけど、大体の感覚をつかむのには参考となる。

 品物の値段を見ていて思う。

 ボルファスのおじちゃんはとても良心的な商売をしている。

 普通町から遠くなれば遠くなるほど、輸送費もかかるし、この世界なら危険も付きまとうはずだ。

 確かに、多少の上乗せはしているけど、恐らく輸送にかかる手間賃+利益が少々といった感じだろう。

「んっ?」

 そんなことを考えながら、いろいろ見て回っていると、路地の奥へ消えようとしている不審な動きをする一段が目に入った。

「赤ずきんちゃん?」

 手にとうんだようなかごを下げた、赤い頭巾みたいな被り物をした見た目十代前半ぐらいの女の子が、その子とは似つかわしくない武装した感じの大人の男達にかこまれて大通りから路地の方へと消えていった。

 う~ん。

 なんか違和感があるんだよね。

 単なる普通の商売のやり取りには思えないんだけど……。

 そういえば、前世の本で、昔は花売りとか小物売りとかで生計を立てている若い女性の中にはそれだけでは生活が成り立たず、路上でお客を取って身体を売る商売もしているといたというのを読んだことがあるけど。

 この世界は世知辛せちがらい世の中だ。

 と、言いたいが、前世も現在進行形で存在しているわけだから、この世界をどうこうは言えないのだろう。

 でも、あの子……。

 チラッと見えただけだけど、お客を捕まえて喜んでいるようには見えなかったし、周りの男達も何となくだけど、金払いが良さそうという感じの印象を受けなかった。

 単なるかんだけど。

 ……これは。

 ボクはソッと女の子と男達の後を付けた。


   ◇


「へへっ、姉ちゃん、金に困ってるんだろ?」

「いえ、それは……あのお……わたしは」

「すぐにむからよ」

(はあ、予想通りだけど)

「何だお前すぐむのか、早いんだな」

「言葉のあやだバカ野郎。俺様が早いわけないだろうが」

(なんだ? 下ネタの掛け合い漫才でもやっているのか?)

「まあ、5人相手じゃ、どっちにしてもすぐは済まねえだろうがな」

「良かったな。今日は昼からいきなり5人も稼げてよ。俺たちに感謝してくれよ」

「いえ……わたしは違います」

「遠慮すんなって」

「きゃっ!」

(しょうがないなあ、もう)


 トントン


 肩を軽くたたく。

「何だ。うるせいな。今、良いところなんだから邪魔するんじゃねえよ」

 男は女の子の方を見たまま、振り向きもせずに行った。

(お約束か?)


 トントントン


「だ~か~ら~、今いいところだって、言って……わっ!」

 サイド肩を軽くたたくと、面倒くさそうに言いながらこちらを振り向いた。

「!!!」

 男は一瞬固まる。

 次に。

「まっ、魔物!!!」

 失礼だな。

 中位精霊のカンガーゴイルのルーだよ。

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