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49 エン引

49 エン()


 スロクラの町の検問待ちをしてからしばらくして、ようやっともうあと数組でボクたちの番となっていた。

 途中、しょうもない言い争いの現場にも遭遇そうぐうしたけどまあ、なんとか事もなく収めることが出来たし。

 幼児が介入して、大人の喧嘩けんかを治めるのってどうなんだろうとは思うけど。

 あのままだと長引きそうだし、騒ぎが大きくなれば、町の門番の衛兵さんたちも出てきて余計に時間がかかりそうだったので、つい日本人的お節介をやいてしまった。

 かなり話は変わるけど、前世、外国の映画業界の間の話で、どんな名俳優もかなわないものがあると聞いたことがある。

 それは『3B』と呼ばれている物で、

 『Baby(ベイビー) (赤ちゃん・子ども)』

 『Beauty(ビューティー) (美人・美少女)』

 『Beast(ビースト) (動物(ここでは小動物))』

の頭文字を取って『3B』なのだそうだ。

 これが出てくると、いかな名俳優であってもその場を食われて持っていかれてしまうという。

 『Baby』はボク、『Beauty』はクリアお母さん。

 残念ながら『Beast』がいなかったので『3B』は揃わなかったけれど、『2B』が揃ったからいいでしょう。

 つまりは大の男達が言い争いをしていても、それを食うだけの役者が出てくれば、形無しという事で。

 簡単に言うと、幼児が大人をけむに巻いただけとも言える。

 どやー! (赤ちゃん的ドヤ顔改め、幼児的ドヤ顔)

「武器を持った大人の間に入っていって、こわくなかったの?」

 荷馬車に戻ってから、クリアお母さんから話を聞いたサーベニアお姉ちゃんに、いつものように太腿の上に乗せられてそう聞かれて考える。

 そういえば、あの二人、槍と大きな剣を持っていたんだよな。

 それなのに、意外と自然に二人の間に割って入っていったなあ。

 ボクって、そんなに度胸良かったっけか?

 まあ、前世、年の離れた双子妹姉妹に何かあれば、それなりにふるい立っただろうとは思うけど。

 それでも、あんなゴツそうな武器を持ったいかついおじさん達の間に入っていけたかというと、情けないと思われるかもしれないけど多分、無理だったと思う。

 それが普通だと思うし。

 これって、ひょっとして……。

「う~ん、そういえば……そんなに怖いと思わなかったなあ。もしかしたら、毎日、ガーゴンとルーの組み手を見ていたからかな?」

 だってねえ。目の前の至近距離でガーゴイルの固い石の腕やしっぽ同士が、激しく連続で、ドガーンッ! ドゴーンッ! って、衝突する様を毎日見ていれば、それなりになれるでしょ?

 さっきのおじちゃん達は言い争っていただけで、かまえていたわけでもないし、武器を抜いていたわけでもないから、いつものアレに比べれば、全然大したことないでしょ。

 ……。

 大したことないよね。

 ……。

 よねっ。

 ……。

 いやあ、れってスゴいね。

 あははっ。

「もう! エストグィーナスは何を小さい子供に見せてるのよ!」

「はっはっはっ、大した度胸だ。こりゃあ、将来、本当に大物になるかもな」

「ボルファスさんも、笑い事じゃないでしょ!」

 ボルファスさんの豪快な笑いに、クリアお母さんが文句を言う。

 なんかお約束ななごやかさだね。

 どうでもいいことなんだけどさ。

 話はさっきの3Bに戻るけど、最後のBのBeastって野獣の意味の方が強いんだよね。この場合、小動物にしたかったんだろうけど、それだとSmall animalになってしまうし。

 一応Beastieっていうのが小さい生き物にあたるんだって聞いたことがあるんだけど、一部の地域の言い回しらしい。

 なんて、こっちでは覚えていても何の役にも立たないことを思い出していたら、ようやっと順番が回ってきたようだ。

 門の前へと進む。

 町の門にはしっかりした守衛の人がいて出入りをチェックしているみたいだ。

 流石は大きな町の門を守護する衛兵。

 軽装の部類なんだろうけど、ケスバ村の自警団とは違って、皆統一された立派な鎧を着ていて、いかにも強そうである。

「身分を証明するものは持っているか?」

「はい」

 一人ひとりチェックされていく。

「見てたぞ坊主。小さいのに勇気があるな。おかげで無駄に仕事が増えずにすんだよ。」

 門番のおじちゃんの一人がしゃがんでボクの視線に合わせてから、頭を撫でてくれた。

 この人は子ども好きなのか、それとも子供がいるのか、慣れている。

「本来なら俺たちが出て行かなければならないことだ。済まなかった」

 もう一人の門番のおじちゃんにも声をかけられた。

 こっちの人はお堅い真面目そうな人で、門番のおじさんから褒められたり、誤られたりした。

 なんか少しくすぐったい。

「変なめ方しないでください。調子に乗って、また変なことに首を突っ込むようになってはこまりますから」

「すっ、済まない」

 クリアお母さんの抗議に、門番の男の人たちがタジタジになってしまった。

 やっぱ、クリアお母さん最強だな。

 う~ん、可愛い系でも、「母は強し」なんだね。

 そんなやり取りをしながら、手続きは続く。

 ボルファスおじちゃんは冒険者ギルドだけではなく、商人ギルドにも所属しているらしく、今回は商売で来ているので、そちらを見せていた。

 ランスお父さんとクリアお母さん、そしてサーベニアお姉ちゃんは冒険者の登録証を見せている。

 比較的若いにも関わらずBランク冒険者のランスお父さんとクリアお母さんの登録証を見た時も少し驚いていたけど、サーベニアお姉ちゃんの登録証を見た時の守衛達の驚き方は面白かった。

「エッ、Aランク!」

 まじまじとサーベニアお姉ちゃんを上から下まで見ていたもんな。

 美人だからというわけだけじゃないよね?

 さっき、3Bの話で役者を食うという意味で、『Beauty(ビューティー) (美人・美少女)』って話を思い出していたけど、役人も型無し(食う)のか。

 ……それだけAランクの冒険者は珍しいという事だよね?

 よねっ?

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