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46 エン満取引

46 エン()満取引


 スロクラの町に行く途中の大体中間地点にあたるスニテの村に着いた。

 その道中、スニテの村にもうすぐ着くという所でシープルフという外見は一見大人しいヒツジのように見えるが、その実、その外見で油断を誘って襲い掛かってくるという肉食の魔物があらわれる。

 数はそこまで多くなく、10匹前後ぐらい。

 基本群れで行動しており、その群れにおそわれた? う~ん、ほとんおそわれる前に退治した。

 あれも『search(サーチ) and destroy(デストロイ)』? と言うのだろうか?

 警戒けいかいはしていたけれど、探してはいないから違うか。

 警戒してて見つけたんだから合っているのかな?

 まあ、どっちでも良いや。

 ちなみに『シープルフ』はこの世界の古い言葉で「羊の皮を被った狼」という意味があるのだそうだ。

 エストグィーナスお姉ちゃんが見せてくれた魔物図鑑のような本に載っていて、見た目そのまんまだなという感想だったのをさっき思い出した。

 多いと数十匹単位の群れで行動しているらしい。

 いやあ、すっかりヒツジだと思い込んでいて、思わずおいでおいでと手を伸ばしていたよ。

 危なかった。失敗、失敗。

 とにかく、流石さすがは臨時とはいえ冒険者パーティー。

 群れでもシープルフ程度では相手にならないようで、そこまで苦労した様子もなく全滅させていた。

 相変わらず、ここにいる幼児の情操教育は置いてきぼりのような気がするけれど……。

 確かに前世で見た学資保険のパンフレットに、今ぐらいの歳に草や木や動物などの自然に触れ合って、情緒を育てると良いみたいなことが書いてあった覚えがあるけれど、牙と剣の触れ合いでは良い情緒は育たないと思う。

 この世界の教育のきびしさを、あらためて実感しました。

 いろいろ前世と違う意味で。


   ◇


 スニテの村の中に入ってすぐに、ボルファスおじちゃんは村長さんの家に向かった。

 予想外の狩ったシープルフという荷物が出来たため、早くどうにかしたいのが本音だそうだ。

 もちろん、そんな態度は微塵みじんも見せていなかったけれども。

 そこでボルファスおじちゃん達がシープルフの群れを退治したことを告げ、倒したシープルフを証拠ついでに食料として買わないかと持ち掛けたら、スニテの村の村長さんをはじめとする村の人達にとても喜ばれた。

 ボルファスさん、流石商売人。

 牙だけはランスお父さんたちと一緒に回収させてもらっていたけど。

 ちなみに牙は討伐証明としての部位になっているそうで冒険者ギルドに持っていくと、それに応じた賞金がもらえると同時に実績が付くそうだ。

 この手の魔物は依頼を受けていなくても常時討伐依頼が出ているらしく、また討伐依頼が出ていない魔物だったとしても突発的な遭遇戦になって倒したとしても考慮はされるらしい。

 その後、荷馬車に乗せられなかった分はスニテの村の人たちが台車を引っ張って回収に行っていた。

 羊毛よろしく、シープルフの毛も、必の良い毛織物の素材になるらしい。

 もちろん、肉も。

 それからボルファスさんはしっかりスニテの村の村長さんから証明の書付をもらっていたようだ。

 証明部位だけでも確認はできるけど、町や村などの代表や有力者から一筆(もら)っておけると、冒険者ギルドでの手続きが楽に早く進むんだそうだ。

 なるほど。

 これはボクも前世の仕事上で納得がいく。

 再確認とか、判断の参考とか、添付てんぷの資料があると早く確認出来てみる側も助かるんだよね。

 まあ、その添付された書類が偽造されたりしてあやしくないかを見極めるのも、なかなか厄介やっかいな仕事の一つなんだけどね。

 ボクは前世、早いうちに倒れちゃったけど、先輩がよくぼやいていたっけ。

 しばらくするとスニテの村から森に続いている道から荷車を引いて村の人たちが戻ってくる姿が見えた。

 やっぱり、この世界の人達はたくましいね。

 荷車には狩ったシープルフが山積みになっていてかなり重そうなのに、その表情は明るい。

 それもそうだろう。

 思わぬ収穫と村の周りの脅威が減ったのだから。

 サーベニアお姉ちゃんがそこまで強い魔物ではないと言っていたけど、それは冒険者の中の話であって、一般の村人からすれば十分驚異の魔物である。

 ゆえに、村人たちだけで退治するというのはかなり危険なことになる。

 まして、サーベニアお姉ちゃんはAランクなんだし。

 実際に後でボルファスおじちゃんに聞いてみた所、単体ならEランクでもなんとかなるらしい程度の魔物なのだそうだ。

 ただやはりサーベニアお姉ちゃんが言っていた通り、群れを成すと連携して襲ってくるのがかなり厄介やっかいでその時は最低でもEランクのパーティーで、できれば余裕を持ってDランクのパーティーで対処するのが望ましいとのこと。

 つまり、今回の場合、パーティーではないにしろ、冒険者ランクはA、B、B、Cと、なんだかゲームのコマンド入力みたいだけど、明らかに上位の冒険者が揃っていたというわけで楽に倒していたように見えたわけだ。

「いやあ、ボルファスさんが仕入れの時期で本当に助かりましたよ。ここ数年、弱いとはいえ、魔物が増えてますからね」

「冒険者から見て弱いとはいえども、ただの村人には恐ろしいですからな」

「なに、たまたま出くわしただけだ。それに今回は腕のいい同行者がいたからな」

 で、ちょっと予想通りだったというか、その夜は村を上げて野外でシープルフの焼肉パーティーとなりました。

 3歳になり大分普通に食べられるようになってきたので、もちろん肉を食べたよ。

 どやー! (赤ちゃん的ドヤ顔改め、幼児的ドヤ顔)

 ちょっとくせがあったけど、 前世で食べたことのある、ヒツジ肉を思い起こさせ美味しい肉だった。

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