42 エン美
42 エン美
ある日の食後。
ボクとエストグィーナスお姉ちゃんとサーベニアお姉ちゃんで、地下から遺跡に向かった。
いつもなら、エストグィーナスお姉ちゃんは大地に同化して一人で地下の遺跡に戻っていくのだけれど、今回は一緒に向かっている。
サーベニアお姉ちゃんがボクを構い倒しているから、独占欲と言うのか、対抗意識と言うのかが湧いたのだろうか?
エストグィーナスお姉ちゃんが、ボクがこの転送の仕掛けを一人で解いたことをサーベニアお姉ちゃんに自慢げに話すと、サーベニアお姉ちゃんは物凄く驚いていた。
あれは半分正解で半分は間違えた形になったから、ちょっと恥ずかしい。
今はサーベニアお姉ちゃんに抱っこしてもらいながら石造りの通路を運ばれている。
ひとりで歩けるんだけどなあ。
まっ、いっか。
暖かいし。
髪からは落ち着く香りがするし。
ちなみにネットスーパーの福引きで手に入れたトラベルグッズの中にあったシャンプーじゃないよ。
あれはまだ皆には内緒。
出すタイミングを考えないといけない。
それはさておき。
目の前にはあのエルフの「笹耳」と称される? 長い耳がある。
伝説のエルフ耳が、今、目の前に!
これは!
是非とも触ってみたい。
そして今は千載一遇のチャンスではないだろうか!?
サーベニアお姉ちゃんの耳、エルフの笹耳を触らせてもらえるかもしれない。
今のうちしかたぶん許されないだろうから。
前世では年の離れた妹双子姉妹を構うのに時々やっていたことはあるけど、同じく妹のいる友人に話したところ、かなりありえない物を見るような目で見てきながら、
「そんなことしたら、下手したらしばらく口きいてくれなくなるぞ!」
とのコメントが帰ってきた。
何の気なしにやっていたことが、之が意外と世の中では難易度が高いらしい。
頼むだけ頼んでみようか。
今は幼児だし。
「サーベニアお姉ちゃん、お耳さわらせて!」
「んっ、? お耳? ああ、エルフの長い耳が気になるのね。いいわよ。はい」
あっさりOKが出た。
もっと、エルフの誇りとか、象徴とかで、ダメ出しされるかとも思ったけど。
流石は幼児!
行ってみるもんだ。
それとも、サーベニアお姉ちゃんだからかな?
両方っぽいな。
「ありがとう、サーベニアお姉ちゃん!」
では早速。
フニョフニョ
適度な硬さと柔らかさでスベスベ。
フニョフニョ
人間の耳より長い分、ヘニョリと折り曲げられる感覚が手に心地良い。
フニョフニョ
当然だけど、耳を触られてるサーベニアお姉ちゃんが擽ったそうにしている表情も良いね。
思わずもっとみてたくなる。
『……(われ)も耳を長くしようかのう……』
隣りを歩きながらボクたちの様子を見ていたエストグィーナスお姉ちゃんが、ちょっと膨れたように言った。
えっ!?
「お耳、長くできるの?」
『簡単じゃ。具現化させているだけだからのう』
できるんだ!
そういえば、カンガーゴイルのガーゴンも最初に出会った時と今じゃ大きさも形態も違っているしな。
「ふっふっふっ、エストグィーナス、羨ましいんだ。あっ、でもセイルくん、大きくなってから、もし他のエルフ族に出会って、耳を触らせてなんて言っちゃダメだからね。意味がいろいろ変わっちゃうから」
「あい!」
そうそう会えるとも思えないけどね。
エルフの耳はやはり象徴のようなもので、幼児でもなければ、そういいと気安く触らせるようなものではないそうな。
おいそれと触れるのは家族とか恋人とか親しい友人とかだけで、不用意に触ろうとすると侮辱したと思われ、決闘になることもあるらしい。
冒険者の中にはそのことを知らず、酒の勢いでからかったり興味本位で絡んだりして、もめ事になることも少なくないそうだ。
逆に、そこそこ仲が良くなった異性の間では状況によって求婚の申し込みとも受け止められるので、注意しなければならないとのこと。
うん、他の種族の文化や風習って知らないといろいろ問題が起こるよね。
前世、意思疎通が可能なのが人間だけの世界でも、国や地域の文化や風習、宗教や主義、気候や風土でいろいろな違いがあったわけだし。
そこに異種族という要素が加われば、更に複雑化するのは目に見えて明らかだ。
◇
で、まあ、例によって例の如く、地下遺跡の噴水の縁の石の上にサーベニアお姉ちゃんとエストグィーナスお姉ちゃんが並んで座ってその太腿の上に寝かされていた。
お昼寝最高!
ちなみに、前回とは頭と足の位置は逆になっている。
どうやら毎回公平に順番で位置を変わっているらしい。
エストグィーナスお姉ちゃんに頭を撫でられながら微睡んでいると、二人の会話が子守歌のように聞こえる。
「ふふっ、可愛い」
『頭が暖かいのう』
二人の綺麗な声が頭の奥深くまで染みわたるようで、とても心地がいい。
しばらく髪の毛やらお腹やらを撫でられていると、身体がポカポカしてきて、なんだか眠たくなってくるよね。
『のう、サーベニアよ。探し物は手がかりくらいは見つかったのかのう?』
んっ、? サーベニアお姉ちゃんの太腿がいきなりピクッとなった。
「……」
『そろそろ区切りを付けても良いのではないかのう?』
なんの話だろう?
サーベニアお姉ちゃんは何か探しているんだろうか?
それよりも……。
心地よさに、だんだんと……意識が……遠くなって……おやすみなさい……。
「ふふっ」
『どうしたサーベニア?』
「何でかしら? この子を見ていると、何となく懐かしさを感じるわね」




