4 意外とエンjoy、赤ちゃんライフ
4 意外とエンjoy、赤ちゃんライフ
送料って何だよ! 送料って!
そりゃぁ、異世界が遠いのは分かるけど、
四足歩行動物でも使う気か!? それとも鳥類か!? まさか、有袋類とか!? 配送拒否されるんじゃないか? もしかすると異世界だから、ドラゴンとか、ペガサスとかいう線もあるか
再配送問題とか出たらどうするつもりだよ!?
まさか、こんな異世界で配送問題が出るとは思わなかったよ。(主に個人的に)
送料だけで後一年は待たなくちゃならないのか。
しかもそこからさらに数か月……よっぽど欲しいものか、なかなか手に入らないものでもない限り100円の品を送料500円かけて購入したら、前世日本なら何考えてるんだと言われそうだな。まして日用品なら出来るだけ送料は掛けたくないのが心情だ。
本当、気が遠くなりそうだよ。
途方に暮れつつ更に一か月時が流れ、ようやく発声器官がしっかりして来たみたいで何とか声に出して喋れるようになってきました!
見よ! 我が成果!
「らん……ス……ス……おとう……さん」
どやー! (赤ちゃん的ドヤ顔)
「おい、クリア! 今、俺のことお父さんって!」
抱きかかえていたランスお父さんが大慌てでクリアお母さんを呼んでいる。
「えっ、本当!」
奥からクリアお母さんが傍にやってくる。
「ああ、ほらセイル、もう一回行ってみてくれ、俺は?」
自分の顔を指さして必死の表情が何かおもしろい。仕方ないなあ、その熱い眼差しと期待を受けてリクエストにお応えするとしましょうか。
「ら……んスス……おと……うさん」
「なっ! なっ! 俺のこと、ランスお父さんって! 天才だよこの子!」
「ふふっ、もう親バカなんだから。でも、村で聞いた話だと他の子と比べてやっぱり早い方かしらね」
クリアお母さんも充分親バカだよって、親って大体こんな感じか。前世、ボクには年の離れた双子の妹がいたんだけど、ボクの両親も妹たちの何気ない動きを見ては騒いでいた。それを横から見てて自分の時もこんな感じだったのかなと思ったもんだ。歳が離れすぎてたから世間で言うところの兄姉が弟妹に親を取られたって感情も無かったから、冷静に親を見ていたし、素直に妹たちは可愛いと思っていたしね。
「セイルくん、私は?」
こっちは親と言ってもまだ20歳前後! 可愛い笑顔を向けてくる。
しょうがないなあ。さっきより気合入れていきますか。ちなみにランスお父さんも20代前半だ……何か?
「クリア……おかあさん」
「私の方がしっかり言えてるわね」
「そっ、そんなことないだろ!? なっ、セイルもう一回! 俺は?」
ああ、はいはい。やれやれ、分かったよ。これも家族サービスか。
「ランス……おとうさん」
「よしっ!」
はあ、これ、発音もそうだけど、結構疲れるなあ。
「これなら早いうちから魔法の事をを教えても良いんじゃないかしらね」
何っ! 魔法だと! あの薄紫髪ツインテール少女神が言ってはいたけど、やっぱりあるのか!
「待て待て! 剣を教えるのが先だろう」
おおっ、教育方針が剣と魔法のファンタジーっぽい!
この二人、夫婦揃って冒険者をしていたらしいという事はここ数か月の会話を聞いていて、何となく分かっていた。有るんだぞ、職業に冒険者が。いるんだぞ、そこらに魔物が。まあ、見たことないけど……だって、家からも、ろくに出たことないんだもん。
にしても魔法は兎も角、剣はいくら何でもだろう。まだ、ハイハイもできてないんだぞ。まあ、それを言ったら魔法だって、まだ話し始めたばかりだけどな。でも、楽しみではあるな。
そう言えば、妹たちが持って来てくれていたラノベ小説に魔力を鍛える方法があったよな。確か、魔力を使い切って気絶するのを繰り返すんだっけか? ……修業とは言え、冷静に考えるとなかなかハードな練習メニューだよな。できたとして、今やって大丈夫だろうか? 端から見て赤ちゃんがひきつけを起こして気を失った様にしか見えないと思う。それはかなり両親が慌てるのではないだろうか?
それにしても魔力ってどうやって使うんだろう? 流石に今は聞けないけど、何処かにヒントはないだろうか?
いろいろ思い出しつつ試行錯誤の日々を繰り返してみるか。
そんな事を考えつつ、両親が抱いている教育方針以外は和やかな日々が過ぎて行ったある日、
「おっ!」
日課のネットスーパーのコーナー 《教えて!パスティエルちゃん》巡りをしていると気になるしんコーナーが増えていた。
それにしても、慣れって怖い。
初めのころは不本意に感じていた《教えて!パスティエルちゃん》巡りが最近ではそうでもなくなってきている。
それで、今回見つけた新コーナーと言うのが、これだ!
* * *
《ゲームにチャレンジ!》
1日1回いろいろなゲームにチャレンジできるよ! ポイントゲットのチャンス!
* * *
これを見つけた時には喜んだもんさ。
喜び過ぎて傍にいた両親が何かの病気じゃないかと心配したくらいに。まぁ、ボタンを押して入った時、メッセージの右下隅に薄紫髪ツインテール少女神(?)がバニーガール姿でサイコロを振っているアニメーションがかなりイラッときたけど。
* * *
『主なルール』
一日一回、ランダムに出たゲームに来店ポイントを掛けて参加できます。
ゲームに勝てばポイント2倍!
さらに続けて『戦いはまだ始まったばかりだ!』ボタンを選択すると、再度ゲームにチャレンジできます!
負ければポイントを失い0ポイントとなります。
もちろん、『今日のところはここまでにしておいてやる!』ボタンにしてゲームを降りることもできます。その際はそれまでに獲得したポイントが本日のポイントとしてパスティエルポイントに加算されることとなります。
『戦いはまだ始まったばかりだ!』にするか『今日のところはここまでにしておいてやる!』にするかは君の腕と運次第!
注意:何もせず一定時間が過ぎると自動的にゲーム終了となります。
《ゲーム開始》 《戻る》
* * *
なるほど、ゲームセンターでいろんなメダルゲームについてた『ダブルアップ』のボタンの考え方で良いみたいだな。
倍かゼロか、か。
今は1ポイントだってかなり貴重だし、無駄遣いはできないけど、うまくすればかなり購入までの期間を短縮できるし……考えろ! 考えるんだ。
最低ラインは、送料無料の5000ポイント。
仮にこの世界の一年が360日だとして、地道に来店ポイント一日1ポイントを貯め続けて、13年と10ヵ月と20日。
これをどこまで短縮できれば良しとするかだな。
自分はあんまりギャンブル運とか良くなさそうだしなあ。
ゲームは違うけど、ある麻雀ゲームで100円入れてスタートボタンを押して牌が配られた瞬間に『天和♪』と可愛らしい声で告げられたことがある。本当に何もさせてもらえなかったよ。(いろんな意味で)
* * *
『本日の現在獲得ポイント』
1 ポイント
《戦いはまだ始まったばかりだ!》 《今日のところはここまでにしておいてやる!》
* * *
まあ、物は試しだ。やってみなけりゃ何も分からないし。
どんなゲームが待っているのか
ボクは《戦いはまだ始まったばかりだ!》のボタンを押した。
……続きます……何となく言っておかないと、そんな衝動にかられた。