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39 所エン

39 所エン()


「まあ、簡単に言っちゃえば、ドーザリブの冒険者ギルドのギルド長から、いい加減、あなたたち二人をこっちの国のギルドに異動登録させてほしいと言われてね」

 うん、本当に簡単に言ったねサーベニアさん。

 Bランク冒険者二人の、国から国への移籍? って結構重要なことなんじゃないだろうか?

 ……あっ、そうか!

 前世の妹たちが病室に持ってきてくれてたラノベのギルドって、国をまたいでのわば多国籍企業とか、グローバル企業とか言った感じみたいなもんだから、移籍なんていう、そんなに大袈裟おおげさな話でもないのか。

 う~ん、どちらかと言うと、多国籍企業寄りといったイメージだろうか?

 移籍いせきというよりは部署異動って感じかな?

 まあ、その部署の営業成績とかには影響えいきょうがあるのかもしれないけれど。

 あれ? でも、冒険者って、どちらかと言うと個人事業主(フリーランス)って感じがしたんだけど、違うのかな?

 それでも何処どこかしらには所属してなくては仕事にありつけないってことなんだろうな。

 前にも思ったけど、やっぱりこの世界の社会もそれなりにしがらみはあるようで……。

 話に出ているドーザリブはドーザリブ王国の王都だそうで、ランスお父さんとクリアお母さんは他のパーティーの人たちと共に、その街を拠点きょてんに活動していたのだそうだ。

 ボクもエストグィーナスお姉ちゃんに見せてもらった大まかな大陸地図を見ただけだけど、このクィータ王国からはいくつか国をまたいでいるのでかなり離れている。

 ちなみにクィータ王国の王都はツーポス。

「家によるついでに頼まれたのよ。子育ても少しは落ち着くころだろうからってね」

「どうせ、正式に手続きして無期限休業しているんだから、別にいいじゃないですか」

 ランスお父さんがぼやくように言った。

「それはそうなんだけどね。緊急時の際、いつまでも活動拠点ではない場所に登録されてるとギルドとしても管理がややこしくなるからって」

 まあその言い分は一理あるよね。

 前世も、長い間動かない案件で、いきなり話が持ち上がって、いざ担当は誰だっけ? とか、書類はどこだっけ? とか、右往左往するケースなんて結構よく聞く話だったしな。

 組織体制の組み換えとか、名称変更にともなう担当部署替えとかが大きな原因の一つで、その際の引継ぎがうまくいっていないのが理由なんだけど。

 こういうのは管理者としては都度マメにやっておきたいのだろう。

 確か、Bランクになってからめるというと冒険者ギルドから管理職にならないかというお声がかかりやすいらしいけれど、それがいやでこっちでの登録をけていたのかな?

 ランスお父さんはそういうの苦手そうだし、

 ただ、人当たりは悪くないし、むしろ良い方だとおもう。

 クリアお母さんなんて、結構向いているほうだと思うし。

 多分、クリアお母さんの方は産後やその後の授乳期間なんかがあったからだとも思うけど、魔術師だからここでサーベニアさんにこの家の管理をまかされながら魔術の研究をしているのも性に合っているのかもしれない。

「サーベニアさん……」

 僕がサーベニアさんのひざの上から見上げ質問しようとした時。

「お姉ちゃん」

「へっ?」

 突然、言葉をさえぎられた。

「わたしもエストグィーナスみたいに、お姉ちゃんって呼んで欲しいな」

「えっと」

 ボクが言い迷っていると

「ほら、お・ね・え・ちゃ・ん」

 ほほをツンツンとされながらせまられる。

 別に呼ぶのはかまわないし、お姉ちゃんになってくれるのは願ったりかなったりだし、話が進まなさそうだし……。

「……サーベニアお姉ちゃん」

「よしっ!よく言えました。う~ん、可愛いなあ!」

 サーベニアさ……お姉ちゃんはボクの言葉に満面の笑みを浮かべてボクをサーベニアお姉ちゃん側に引き寄せ思いっきり頬擦ほおずりスリスリしてきた。

『コラッ、サーベニア! セイルのお姉ちゃんはこのわれぞ』

 急にボクをヒョイッと取られた形になったエストグィーナスお姉ちゃんが抗議の声を上げる。

「いいじゃないセイルくんのお姉ちゃんが何人いても」

『それは……まあ……良いのか……むう……』

 エストグィーナスお姉ちゃんが腕を組んでうなり始めてしまった。

 なにやら葛藤かっとうしているようである。

 さっきもサーベニアお姉ちゃんが言っていたけど、たぶん、上位精霊であるエストグィーナスお姉ちゃんのこういった反応が珍しいのだろう。

 サーベニアお姉ちゃんはいじる気満々で楽しそうにしているのが身体から伝わってくる。

 抱っこされてるからじゃないよ。

 精霊のエストグィーナスお姉ちゃんが気が付いているかは分からないけど。

 ボクにはわかる。

 前世、双子妹たちを、仕事だサークルだと、家を留守にしがちの親に代わって面倒を見ていた時の経験があるから。

 あっ、ことわっておくと、前世も家族仲は良かった方だよ。

 って、今前世の言い訳をしても仕方がないか。

「それで、なあに? セイルくん」

 おっと、大分話と思考がれてしまった。

 このままだと全然先に進まないし。

 いい加減、折角だからギルドの話も出たことだし。

 ランスお父さんやクリアお母さん、ケスバ村のボルファスのおじちゃんから少しは話は聞いていたけど、よい機会だし。

 情報収集を始めるとしますか。

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