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38 エン由

38 エン()


「ただいま」

 サーベニアさんとクリアお母さんとエストグィーナスお姉ちゃんとボクで、しばらく雑談をしているとランスお父さんが帰ってきた。

「えっ! サーベニア!? それにエストグィーナスが上に!?」

 ドアを開けて入ってきた瞬間、珍しい客人たちがいることに、ランスお父さんが一瞬目を丸くしてそのままその場に固まった。

 う~ん、客人たちという表現はおかしいか。

 サーベニアさんはこの家をクリアお母さんとランスお父さんに管理を任せた家主だし、エストグィーナスお姉ちゃんはこの家の地下室とつながる地下遺跡の住人で、このクラートの森一帯を住処すみかとしている上位精霊だ。

 ここにいたとしても、珍しいだけで何ら不思議なことはない。

 んっ? なんか変な言い方になっているけど、まあいいや。

「ふふっ、久しぶりランス君。驚いた?」

『この地は我のテリトリーぞ。たまたま数十年程出なかっただけじゃ。ここにいてもなんの不思議もあるまいて』

 サーベニアさんは驚いた表情のランスお父さんを見て満足げな笑顔を浮かべ、エストグィーナスお姉ちゃんは「なんか文句ある?」みたいな顔でランスお父さんを見て言う。

「サーベニアはいつ来たんだ? 俺、さっきまでケスバ村に行ってたのに、サーベニアが戻ってきたなんて噂、聞かなかったし、エストグィーナスはこっちにいるのを、初めて見ただけで、ちょっとびっくりしただけだ」

 正反対の二人の反応に、どう答えていいのか戸惑いながらも話しているランスお父さんがちょっと面白かった。

「ランス、そんなところでいつまでも固まってないで、席に着きなさいよ」

「ああ、そうだな」

 クリアお母さんに促されてランスお父さんがテーブルの席に着いた。

「驚かせようと思ったのは成功ね。わざわざケスバ村を飛ばしてきたのは正解だったわ」

『おぬしはそんなことのために……まったく変わらんのう』

「まあ、セイルくんを早く見たくてね。ケスバ村に寄るの久々だったし、挨拶あいさつ周りが長くなりそうだったから」

「そういえば、初めてよね。サーベニア師匠がセイルくんをみるのは」

「そうね。しばらく忙しくてドーザリブ王国から離れられなくってね。ナーザの所にはちょっとだけ行けたんだけど」

「ナーザさんとオズベルトさんの所はどうでしたか?」

「二人とも元気よ。わたしが行った時はアムルトくんが2才くらいでちょこちょこと歩き回っていて可愛かったわ。ナーザね」

 指を口元にあて、クスリと笑うサーベニアさん。

「それから、ナーザのところは二人目が生まれていたわよ。名前はハワルトくん」

「本当ですか!?」

「へえ」

「まだ赤ちゃんだったけど、かごの中で元気に手足を動かしてたわね。あれは大きくなったらやんちゃになりそうね」

 そういえば、ランスお父さんとクリアお母さんが冒険者をめてこの家の管理をするようになった理由はクリアお母さんがボクを身籠みごもってたからだったんだけど、その時、残りの二人もくっついてて同時期に妊娠にんしんしていたことが分かって、Bランクにも上がったし、円満解散だし、丁度良いからってことらしい。

 ちなみにパーティーメンバーだったオズベルトさんとナーザさんという人たちはランスお父さんとクリアお母さんより年上だそうだ。

「ナーザさんのところのアムルトくんと同い年ですから、向こうももう3才になっているころですね」

「そうね。ナーザとオズベルトたちも、あなたたちの事を心配していたから、ドーザリブのお店に戻ったら、暇をみてパスレク村に行ってみるわ」

 お店というのはサーベニアさんが開いている魔道具を取り扱ったお店らしい。

 なんでもいろいろな国にお店を出していて、あちこちを飛び回っているんだそうだ。

 しかも、現役で冒険者もやっている。

 う~ん、やり手で活動的なエルフ。

 ボクのエルフのイメージがどんどん変わっていきそうだ。

 まあ、クリアお母さんやランスお父さん、エストグィーナスおねえちゃんたちの話によると、サーベニアさんみたいなエルフは本当に珍しいということで、一応ボクの持つ、プライドが高く閉鎖的へいさてきなエルフのイメージで合っているらしいのだけれども。

「師匠、ありがとうございます。手紙でのやり取りは何度かしたのですが、やっぱり、知り合いからの話が聞けると安心します」

「気にしないで、むしろわたしがここの管理をお願いしたわけだし。それがなかったら二人ともナーザたちと一緒にパスレク村に住んでたと思うしね」

「それはどうだったかな。あの村の周囲は冒険者の間では魔物がいないことで有名だったから、安全なのは確かに子育てには良いけど、俺みたいなのが仕事になるかどうか。オズベルトは弓も剣も扱えたから狩人かりゅうどでもやっていけるだろうけど、俺は剣だけだし」

 へえ、同じようにみえても動物と魔物ではやっぱり違うのか。

 動物は狩人かりゅうどの領分で、魔物全般は冒険者の領分ということなのだろう。

 まあ、そうだよね。

 狩人は基本単独での行動、冒険者はグループでの行動というイメージがあるし。

 動物も範囲は広いけど、魔物って、動物の形態はもちろん、人に近い物から、昆虫形態、果ては植物形態から実体のないものまで、更に幅が広いしね。

 エストグィーナスお姉ちゃんに図鑑で見せてもらった知識だけだけども。

「それにしても、ほんと、あの時はあんたたち、いきなり二組とも子供ができたなんて言うから、驚いたわよ。それで冒険者稼業(かぎょう)退しりぞくなんて言うから、せっかく期待のBランクパーティーが誕生したばかりなのにとギルドマスターがしばらくなげいてたわよ」

 まあ、そうだろうね。

 企業でいえば、せっかくの有能な社員が昇格と同時に辞めていってしまうようなものだし、しかも、文字通りの即戦力だろうしな。

 ボクのイメージだと、ギルドマスターっていうと支店長みたいなポジションだろうから、そんな事態、頭を抱えたくなることに違いない。

「で、そのギルドマスターから頼まれて、帰るついでに伝言のお使いを頼まれたのよ」

 サーベニアさんが飲んでいたコップを机に置いて、軽く息を吐いた。

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