表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/76

35 エン木求魚(えんぼくきゅうぎょ)

35 エン()木求魚えんぼくきゅうぎょ


 ボクはボクのスキル『ネットスーパー』のイベント? の『福引』で手に入れたトラベルグッズセット+ポケットティッシュ×2がまったビニールポーチを木箱きばこに入れて持ち、地下室の転移陣からエストグィーナスお姉ちゃんのいる遺跡へと向かった。

 まずは実際にエストグィーナスお姉ちゃんにははこを見せて了解を貰うつもりだ。

 無駄にうそいても仕方ないしね。

 ただ、中身は内緒にしておこうと思う。

 流石さすがにこれを見せていいものか、まだ判断が付かないからだ。

 クリアお母さんにも内緒にしたし、ランスお父さんも含めて、ボクのスキルについて話すべきかはタイミングを考えなければならないといけない時期に来ているのかもしれない。

 いつものようにセキュリティーシステムのロックの魔方陣パズルを解いて、魔法陣を起動させ遺跡へ転移し、通路を抜けてエストグィーナスお姉ちゃんのいる所へと向かう。

 通路に出る際、とびらを開けた時地震のような振動が散発的に伝わってきたから、たぶん大広間でドラゴイルのガーゴンとカンガーゴイルのルーが格闘修行のスパーリングをやっているのだろう。

 うん。これも大分慣れたな。

 さてと。

 この様子だと、エストグィーナスお姉ちゃんもそこの大広間にいるはずだ。

 ボクはまっすぐ大広間へと向かった。

 長い石造りの通路を走り抜ける。

 ボクは意外とこの感覚が好きだったりする。

 神殿遺跡風の通路はなんとなくロールプレイングゲームでダンジョンを走り抜けているシーンを思い起こさせて、自分が画面越しに見ていた主人公になった気分にさせてくれるからだ。

 一番最初にこの通路を通った時、遺跡のセキュリティーシステムが発動して、天井から石柱や壁がせまってきてヒヤリとしたせいかもしれない。

 まあ、あれは結局、エストグィーナスお姉ちゃんが遊び心? で、やっていたことらしいんだけど。

 ……。

 おいといて。

 今、ボクの頭の中ではゲームミュージックが鳴っている。

 そう考えると、このルーたちのスパーリングが引き起こしている地面のれも、なんか走り抜けた先にイベントがある前兆のシーンみたいに思えてくる。

 大広間の入り口をくぐると案の定ガーゴンとルーが「神殿の大広間ステージ」を背景に対戦格闘ゲームよろしくスパーリングを行なっていた。

 この風景にも大分慣れたなあ。

『おお、セイルよ来たか』

 ボクを見つけたエストグィーナスお姉ちゃんが、祭壇さいだんの台座のような所の上に足を組みながら座ったまま片手を上げて手を振る。

「おはようエストグィーナスおねえちゃん!」

『おはようセイル』

 ボクははこを持ったままり、いつものように挨拶あいさつをしてからガーゴンとルーの方を見てエストグィーナスお姉ちゃんに問う。

「武闘派精霊って、ルーが明後日の方向に成長しているけど、コレ、精霊としてはどうなの?」

 慣れてきたとはいえ、やっぱり、問わずにはいられない。

『それもまた、自然の摂理せつりじゃろ』

「究極の放任主義だね」

『難しい言葉を知っておるのう。それよりも、それはなんじゃ、またサーベニアからの変な荷物かのう?』

「ううん、ボクのだよ」

『そうか。何が入っているのじゃ?』

「な~いしょ」

『見せてはくれぬのか?』

「ごめんなさい。内緒なの」

 悲し気な瞳で見つめてくるエストグィーナスお姉ちゃんに、ちょっと罪悪感を覚えつつも、今は見せるわけにはいかないので謝るしかない。

『う~ん、そうか』

 そんなボクの心中を察してくれたのか、それ以上は尋ねないでいてくれるようだ。

「これ、倉庫に入れておいても良い?」

「もちろんじゃ。ついていこうか?』

「ひとりで平気!」

『そうか』

「置いたらすぐに戻ってくるよ」

『分かったのじゃ。気を付けるのじゃぞ。物を持ったまま走ると転びやすくなるからのう』

「あい!」

 まだしばらくガーゴンとルーのトレーニング? は続くみたいで、ボクは一人で倉庫に使っている部屋へと向かうことにした。


   ◇


 大広間を出て通路を進み倉庫へと向かう。

 この遺跡()の管理者で、今は遠くの国にいるエルフのサーベニアさんが送ってくる変わった品物を保管しておくための部屋だ。

 倉庫として使っている部屋の中に入る。

 いつ来ても木の箱が積みあがっていてゴチャゴチャとしているよな。

 この倉庫として使っている部屋、かなり広い広間なはずなんだけれど、物が多過ぎてどれくらい広いのかはわかりにくい。

 クリアお母さんがこの遺跡を含めた森の家の管理を任された際に、一応の師匠にあたる人の家だからと思って片付けようとしたんだそうだけど、あまりにも物が多くて、そのうちお腹が大きくなってきて、ボクの事だけど、断念したんだって。

 いずれは整頓せいとんしないといけないと思う。

 収集癖が数百年単位だと年季の入り方が違うね。

 大小様々な木箱きばこが積み上げられていて雑然としている。

 この木箱の中一つ一つに変わった魔法の品が入っているらしい。

 でも、こういうの何となくわくわくするよね。

 前世でいうところの、雑誌の付録のオマケに何が入っているのかなって思う感じ。

 理科実験セットとか、工作セットとか、普通とはちょっと違うような変わったものが入っていて楽しかった思い出がある。

 今考えると、あの大人から見れば一見ちょっと変わった作りの変な物は子どもたちの発想力をやしなうためにわざとそうしてたんだろうなとも思う。

 まあ、それはそれとして、もう少し大きくなったら、中身の仕分けとか整頓とか手伝わせてもらうのも良いかもしれないな。

 新しい発見がたくさんできそうだ。

 強い武器とか、格好いい鎧とか。

 前に思った、運を上げるアイテムもあるかもしれない。

 ちょっと夢が広がるね。

 おっと、いけないいけない。

 さて、何処どこかくそうかな?

 同じような期のはこだから、後で探そうとしてわからなくなると大変だし。

 一つ一つ箱(箱)を開けて確認することになったら一苦労だ。

 ボクが辺りをキョロキョロと見回しながら歩いていると。

「おっと!」

 明かりはあるとはいえ、薄暗い倉庫の中、はこを持って歩いていたせいで、足元がおろそかになり、石の床に何かあったらしく、それをんでバランスをくずしてよろめいてしまった。

 転びはしなかったものの、少しよろけてぶつかってしまい、その振動で積んでいた箱が崩れてしまう。


 ガラガラガラガラッ!


 すると、将棋倒しのように周りも崩れてしまった。

「あちゃー、やっちゃった」

 ほこりが室内に舞う。

「ケホッ、ケホッ。中、大丈夫かな? こわしてないよね」

 ボクは気になって、落としてしまった箱を元に戻しながら、一つ一つ箱を開けて中身が壊れていないか確認していく。

 一つの箱を開けてみると、手紙と一緒にブレスレットが入っていた。

 箱の中の手紙を広げて読んでみる。

 クリアお母さんとエストグィーナスお姉ちゃんから文字を教わってきたので、3才にして手紙を読めるようになっているのだ。

 どやー! (幼児的ドヤ顔)

 と、赤ちゃんから幼児へと進歩したドヤ顔を、誰もいない空間で披露ひろうしてみる。

 さて、内容はっと。

 あっ、これは。


   -   -   -


 クリアちゃん、ランス君、元気で過ごしていますか?

 セイルくんはもう歩けるようになったかな?

 直接会ってだっこしてあげられないのが、とても残念です。

 私は相変わらず珍しい魔道具を探して過ごしています。

 それでつい最近ある貴族のお屋敷の倉庫で見つけた珍しいブレスレットを手に入れたのでまた、クリアちゃんの所で保管しておいてね。

 ブレスレットの効果は以下の通りね。

アンラッキーチャンスメーカー

 装備した人の幸運度が有る程度上がる代わりに周囲でトラブルを呼び込みやすくなるという呪われたアイテム。平凡な森の生活の日々に飽き飽きしている方是非どうぞ!

 クリアちゃん、ランス君、使ってもいいよ♪

 ではまた、手紙するね。


     サーベニア


   -   -   -


 やっぱりそうだ。

 これは以前に見たことのあるブレスレットだ。

 前にも思ったけど、確かに、運の上がるアイテムらしいけど、それで周りにトラブルを呼び寄せたんじゃ意味がないだろうに。

 これ作った人の意図が分からない。

 運が上がるという欲望に負けてつけるとか?

 ……。

 ……。

 ……。

 いやいやいや。そんなことしないからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ